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氷球部!  作者: ねこまた
8/36

一矢(いっし)

1P(1ピリオド)5-0

2P(2ピリオド)4-0

3P(3ピリオド)3-0


残り時間は2分


どう足掻いても勝ちはない。


「諦めたらそこで試合終了」なんて言葉があるが、今回は当てはまらないようだ。


けどなんとか爪痕を残したい。


このままだとただの弱いチームという印象しか残らない。


チャンスさえあれば俺が前に出る。


なんとか自陣でパックを奪い、顔を上げると45度でパスを待っている昇がフリーだ。


パスを出した瞬間、俺は走り出した。


「なんとか・・・1点だけでも・・・」


「昇!!!スルー!!!」


昇にパックを触らせないことによって、フェンスに跳ね返ったパックはさらに前へと流れていく。


相手ディフェンスも昇のマークに気を取られ、一歩俺が前に出た。


さらに逆のディフェンスは戻り遅れている。


この試合初のノーマークとなった。


センターラインを超え、ブルーラインを超え、いよいよ相手エリアに入る。


あとはシュートを決めるだけ・・・


一本・・・この一本だけ決まればいい・・・


深くまで入り、一気に中央まで切れ込む。


ゴール前で一気にハンドリングで逆に振り、キーパーを抜きにかかった。


キーパーの動きを読み、空いているはずのコースに目をやった。


空いているはずだった・・・


目の前にはキーパーしか見えず、空いているコースなどなかった・・・


まさに壁のごとくキーバーが前にいたのであった。


転がりながらシュートを打ったが、笛の音が聞こえない。


しばらくして短い笛が鳴る。


あぁ、止められたのか・・・


「くそっ・・・」


そうつぶやいた瞬間


「お前、全然成長してないな・・・」


倒れ込んでいる俺に向けて飛んできた言葉。


相手チームの18番、高橋だった。


いつもならカッとなっていたが、今はそんな気力さえなかった。


・・・


終わってみると0-13


手も足も出ないとは正にこのことだった。


あの倒れ込んだシュートから今まで、何をどうプレーしたのかはっきり覚えていない。


覚えているのは控室に戻り、防具も脱がずにひたすら泣いていたことだ。


負けたことが悔しくて泣いたことは今まで何度もあった。


しかし、今回の涙は違った。


全国に行こうとしていた恥じらい。


自分達がどれくらいのレベルか知らなかった愚かさ。


相手を知らなさすぎた無知。


そして何より、何もできなかった自分への不甲斐なさ。


これらの感情が一気に押し寄せ、涙が止まらなかった。


チームメイトも泣いていたが、どんな感情で泣いていたのかはわからない。


そして、中学でのアイスホッケー人生にこの瞬間で幕を下ろすこととなった。




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