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氷球部!  作者: ねこまた
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8年後の全道

アイスホッケーを始めてから8年の月日が経った。


俺、滝澤都タキザワミヤコは中学3年になった。


小学校6年では蒼にぃちゃんと同じ市選抜に選ばれてその試合を見に来てもらったが、その翌年から蒼にぃちゃんとは会っていない。


「ミヤはまだまだでっかくなるよ!だからがんばれ!」


そう言って、蒼にぃちゃんが使っていたスティックを俺に渡し、アメリカへ飛び立った。


蒼にぃちゃんは高校卒業時、大学の全国大会で優勝する学校からも推薦の話があったようだが、それを断ってアメリカの大学へ進学した。


今でもメールのやり取りはしているが簡単に帰ってこれるわけでもないらしく、帰ってきても色々な手続きをしてすぐにアメリカへ行ってしまう。


『明日から全道行ってくるよ!』


蒼にぃちゃんへの短いメールを打った。


そう、俺たちは市の予選を勝ち抜いて、県大会にあたる全道大会の出場を決めた。


全道大会には全国優勝候補が集まるハイレベルな戦い。


俺が住む厚条市からは3校の出場枠があり、2位になって全道大会の出場を決めた。


「絶対全国に行ってやる!」


蒼にぃちゃんが全国大会へ行ったように、その背中に追いつくように・・・


ー翌日


「おう、ミヤ!いつになく早くね?気合い入れすぎたっての・・・キャプテンは違うねぇ」


同じ3年の富条樹トミジョウタツキが大きな防具袋とキーパーのレガースを持ってこっちにやってきた。


「タツキだって早いじゃん。まだ集合時間1時間前だぞ?」


「そりゃだって守護神たるもの、いつも余裕を持って準備しないとな」


得意気になってガッツポーズをしながら応えてきた。


厚条市の予選は優勝候補が6校も名を連ね、全道大会を決めるまではそのうち2校を倒さなければいけないほどキツい戦いだった。


その中で、タツキが神業のような好セーブを連発してくれたおかげで、全道大会出場を決めたようなものだ。


タツキと話していると、後ろから声がした。


「このクソ寒いのにお前らよくこんな時間から来れるよな」


こいつも3年で得点王のFWフォワード烏丸敏樹カラスマトシキ


「まさにホッケーシーズンって感じでいいじゃん!」


タツキがはしゃぎながら言った瞬間、自分のアイスホッケーとの出会いを思い出した。


「そうだよな!わかる!アウトリンク練習思い出すよな!」


そう言いながら、俺の心はあの日の高い青空を思い出し、震えていた。


もちろん簡単にアイスホッケーができるようになったわけではなく、スケートも滑れなかった自分がアイスホッケー部キャプテンになるまではたくさんの練習が必要だった。


練習と聞くと辛そうな気もするが、蒼にぃちゃんに少しでも近づきたくて、その練習こそ楽しかった。


すると


「はいはい、とっととバス乗れよ。1月だぞ?-12度だぞ?風邪引くぞ?凍るぞ?」


歩きながら煽ってきたのは、明石蓮アカシレン


頼れるCFセンターフォワードだ。


「かぁちゃんかよ・・・」


小言を言うタツキに周りは笑いながら、「はいはい」と言わんばかりに荷物を積み、バスに乗り込んだ。


席に着いた瞬間、携帯が鳴る。


『おぉ!全道の猛者に揉まれてこい!』


蒼にぃちゃんからのメールだった。


嬉しい反面、『勝てよ』や『頑張れよ』ではなく、揉まれてこいだったことに疑問を感じた。


「ん〜」


俺が難しい顔をしていると、後から乗ってきた菅原駿スガワラシュンが話しかけてきた。


「どした?彼女か?俺らの最後の全道直前に彼女とのいざこざとは・・・」


こいつとは小学校の時から同じDFディフェンスとして組んでいる。


小学校の時、選抜でうまいDFとも組んだが、なんだかんだで一番しっくり来る相手だ。


「ちげぇよ。ってか俺に彼女いないの知ってんだろ!嫌味か!」


俺がそう答えると、恥ずかしそうに黙り込む駿。


小学校から一緒だった佐藤遥サトウハルカと付き合い始めてはや2年半。


いい加減に慣れて欲しいものなのだが・・・


この5人で中学3年間を戦ってきた。


この厚条市では強豪の1校として名を連ねている。


そして後輩達と、このチームで戦うのももうすぐ終わる。


ただし、最後は全国で終わる!という気持ちを胸に抱いて、バスは出発した。



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