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氷球部!  作者: ねこまた
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受け継がれるもの

「よしっ!こんなもんだろう!」


全道大会から帰ってきてすぐ、部屋の片付けを行うことにした。


片付けと言うよりもは、モノをなくす作業。


アイスホッケー関連のものはもちろん、漫画やゲーム、その他勉強以外の全てを部屋から排除した。


無論、受験に向けての準備というわけだ。


「さて、受験に向けてやりますか!」


そこからは寝ても覚めても勉強をした。


どうしても大上高校へ行きたかったから・・・


ホッケー部の全員が受験勉強をしているわけではない。


蓮と駿、敏樹は推薦だ。


樹は俺と同じ大上高校を受験するとはいっていたものの、気になることがあった。


全道帰りのバスでのこと。


「樹、今日はごめん。もっと俺に力があれば・・・」


俺はもっとできることがあったのではないかという思いで頭がいっぱいとなり、樹に話しかけた。


「終わったもんはしょうがないよ。ミヤは頑張ってたと思うよ。最後まで。」


「そうかな?けど樹にそう言われるとなんか色々と吹っ切れる!」


樹に言われた言葉で、本当に心が軽くなった。


「そういえば樹は高校どこ受けんの?」


俺は軽い気持ちで樹に聞いた。


「俺は大上受けるよ。ミヤと一緒だな」


「おぉ!マジで?じゃあまた一緒にホッケーできるじゃん!」


また樹が守るゴールを背に試合ができると思い、嬉しくなった。


しかし、樹の表情は暗かった。


「いや・・・まだホッケーを続けるかはわからないんだ。バスケもあるからさ・・・」


バスケット・・・


樹はホッケー部だけではなくバスケ部も兼部していた。


アイスホッケーにオフシーズンのある厚条市では当たり前のことだった。


そしてアイスホッケー部は全道大会に行き初戦敗退だが、男子バスケ部は全道ベスト8には入る強豪であり、さらに樹はキャプテンだった。


「そっか・・・けどどっちにしても絶対大上行こうぜ!」


俺はグーを作って樹の胸に当てた。


「当たり前だ!ミヤこそ、今度は全道みたく『こんなはずじゃなかった』みたいなのやめろよな!」


樹のブラックジョークはいつも落ち込むことが多い・・・


そんなやりとりがあったので、大上に合格できたとしてもアイスホッケー部には青雲中から俺しか行かないかもしれない。


なんだか、中学3年間が懐かしいような気持ちになった。


しかし、そんなことを一瞬考えただけで、再び勉強へと切り替えた。


ある日曜日、家のインターホンが鳴り俺が呼ばれた。


「ミヤ〜?ちょっと降りといで」


階段下から母が呼ぶ声が聞こえた。


自分の部屋で勉強していた俺だったが、勉強を中断させることはあまりなかったので急いで玄関へ向かった。


玄関には、蒼にぃちゃんのお母さんが立っていた。


「ミヤちゃん、全道大会お疲れ様。蒼から聞いたわ。頑張ってたって!」


力不足を感じていた俺にはその言葉を素直には受け入れられなかった。


「いやぁ、おばさん、そんなことないよ・・・」


謙遜ではなく本気で微妙な顔をしていた俺に気づき、その場はちょっと気まずい雰囲気になった。


「けどほら!行くんでしょ?大上!はい、これ!蒼から!」


俺を元気付けるように肩を叩きながら、おばさんは手に持っていた少し大きめの紙袋を手渡してきた。


「いや、けど俺これから受験だから行くって決まったわけじゃ・・・」


紙袋の中身を確認しないで受け取った俺に対しておばさんは


「大丈夫!それ御守りにして頑張って!」


「御守り・・・?」


受け取った瞬間、合格祈願の御守りのような軽いものではないことはわかっていた。


中身がなんなのか確かめるべく、袋の中を見て言葉を失った。


「それ、蒼から。これで絶対受かるからって!大上ホッケー部で頑張れって言ってそれ渡しておいてって今日連絡があってね」


「これ・・・」


俺は声にならない声を出しながらそのプレゼントを広げた。


プレゼントは、蒼にぃちゃんが大上高校で3年間着ていたチームジャンバーだった。


それもウォームアップ用ジャンバーではなく、スタジャン。


大上高校の試合を見に行くと毎回蒼にぃちゃんが着ていたスタジャンだった。


「これ・・・本当にいいの・・・?」


声にならない声を出しながら、おばさんに尋ねた。


「蒼も大切にしたいって言ってたんだけどね。ミヤちゃんが『大上を受ける』って言ってたから、もう高校の後輩出しそれはあげていいって」


これをもらい、絶対に受かる、受からなければならないと深く心に刻んだ。


「あ、ちなみに高校ホッケーの試合で選手の彼女が彼氏のスタジャン着てるってよく見たでしょ?」


そう言われてみれば、制服を着た女子が試合をしているチームのスタジャンを着て観戦していたのを見たことがある。


「蒼はね、それ絶対にしなかったの。当然誰かに貸すってこともしなかったのよ?だから蒼以外で初めてミヤちゃんがそのスタジャンを着ることになるのね!」


その言葉にさらにスタジャンをもらった重みが増した。


腕には『A.SHIRAMINE』の文字と、背番号である『2』が刻まれていた。


「おばさん!大切にする!そして絶対に受かる!ありがとう!」


「いいのいいの。それだけ蒼もミヤちゃんには高校の後輩になってほしいのかもね?じゃ、受験頑張ってね!」


そう言っておばさんは帰っていった。


袖を通してみると、背中に蒼にぃちゃんを感じた。


すぐ後ろにいるようで、常に力をくれている気がする。


「絶対に合格する・・・・!」


そうつぶやいた俺は、蒼にぃちゃんに『ありがとう!絶対に合格するから!』と短くメールをうち、勉強に取り組んだ。

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