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血のない家族  作者: 夜桜紅葉
第四章
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入試

 桜の受験の日。

在校生は休みだ。


僕たち兄弟は桜をあの温泉旅館まで迎えに行くことになっている。


っていうかあの旅館の名前ってなんだっけ。

ずっとあの旅館とか例の旅館とか言ってるな。

あとで桜に訊いてみよう、とか考えながら旅館を目指した。


「そういえば天姉。月酔生徒会長でどんな人なの?」

ふと気になったことを訊いてみた。


「ん? 燈花ちゃん? 文武両道の才女みたいだよ」

「ふーん」


「なんで気になるの? 一目惚れでもしちゃった? 桜というものがありながら、この浮気者め!」

天姉が笑いながら背中をバシバシ叩いてきた。


「違うよ。昨日天姉の話の中に出てきたじゃん」

昨日の夜は、持久走の時にクラスメイト全員で大合唱した話を武勇伝のように聞かされたのだ。


その話の中で出てきた月酔生徒会長が僕の中のイメージと異なっていたから少し気になった。


「昨日の話じゃ意外とノリがいい人って感じだったけど、始業式とかの感じからしたらお堅い人なのかと思ってたからさ」


「確かにそうでゴザルな。拙者もまだ話したことないからどんな人なのか興味あるでゴザル」


「そっかー。まぁ真面目な子ではあると思うけど、私もお友達になったばっかりだから知ったようなことは言えないな~。うちの弟たちが燈花ちゃんに興味津々だったからお話ししてあげてってお願いしといてあげようか?」


「その紹介の仕方はなんか悪意あるだろ。別にそんな気遣いは無用だよ」


「そう? 自分に興味津々な人がいるって……いや、なんか怖いな。嬉しくない? って言おうと思ったけどやっぱ怖かったわ」

とかなんとか話しているうちに旅館に着いた。


裏手側に回ると、家の玄関には桜と弟の紅葉と水野さんがいた。


「おはようございます。冷えますね~」

桜が手をこすり合わせながら挨拶してきた。


「制服だ。珍しい」

桜が制服を着ている姿は地味に初めて見るかもしれない。


「そういえばお披露目するのは初ですか。どうです?」

「新鮮」


「ですか。あなた方は、やっぱり和服なんですね。マジで洋服買いに行きましょう。今週末か来週末辺りに行きましょう」


「それはいいでゴザルが、まずはお主が無事に今日を終えることでゴザル」


桜は神妙な面持ちで頷いた。

「ですね。頑張ります。というわけで、お母さん、紅葉。行って参ります」

「頑張れ姉ちゃん」

「頑張ってね桜」

「うん! じゃあ行きましょうか。いざ出陣です!」

僕たちはラッコーを目指して歩き始めた。



 雪が降っているわけではないが、結構寒い。

桜がしきりに手をこすり合わせて息を吐きかけているのでカイロを渡した。


「おぉ! ありがとうございます。手袋忘れてきて困ってたんですよ」


天姉が意外そうに言った。

「へぇー。なんか珍しいね。桜って結構しっかり者ってイメージなのに。うっかり?」

「うっかりです。こんな日に限って」


「こんな日だからこそ緊張してうっかりするんでゴザろう。いつもより表情も硬いでゴザルよ」

「マジですか?」

桜は確かめるように手で顔をマッサージした。


「んー。確かに少し緊張してるかもですね」

「そりゃ緊張するよね~。でも桜なら大丈夫だよ。自信持って!」

天姉が桜を励ました。


桜が次はあなたですよみたいな感じで僕の方を見たので、僕も声をかけた。

「僕は特に心配してない」

「その心は?」

「僕は桜のことを結構信用してる」

「……そうですか」

桜は薄く微笑んだ。

そんなこんなでラッコーに到着した。


いつもよりも学校が近寄りがたい雰囲気に包まれているように感じる。


独特の緊張感が満ちているラッコーで桜はこれから試験を受けるのだ。


「では。勝ってきます」

桜は学校を一度見て、振り返るとニコッと笑った。


「うん。頑張ってね」

「応援してるでゴザル」

「自分を信じて戦ってこい!」

桜は頷いて、僕たちに背を向けて学校に入っていった。


まぁ多分大丈夫だろう。

そんな気がする。


「じゃ、帰ろっか」

「そうでゴザルな」

僕たちは桜の健闘を祈りながらラッコーを後にした。


あ、旅館の名前訊くの忘れてた。

また今度でいいか。

2か月弱ぶりです

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