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血のない家族  作者: 夜桜紅葉
第三章 一月、最初の一週間
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図書館

 一月十一日水曜日、放課後。


天艶ほたるという名前の人間である私は、学校の図書館にいた。


今日は天文部の活動はない。

佐々木君にもそのことは伝えてある。


私は今日パン屋さんのバイトがあるのだ。


しかしまだ時間に余裕があるので、図書館で本を借りてから向かおうと思った次第である。


ということで私は本棚を眺めていた。

お目当ては忍者に関する本だ。


なぜそれを探しているのかについては、もはや言うまでもないことだろう。


クラスメイトに忍者がいるからだ。


多分この辺の本棚にあるはず……。

私はキョロキョロと辺りを見渡した。


あった!


『サカバンバスピスでも分かる忍者』

というタイトルを目の端で捉えた。


しかし結構高い位置にあるな。

取れるだろうか。


「ぬー」


精一杯手を伸ばしてみる。

もう少しで届きそうなのだが、ギリギリ届かない。


諦めて踏み台を持ってこよう。

そう思って手を引っ込めようとした時。


「これでゴザル?」


後ろから私の手を追い越すように手が伸びてきた。

小野寺君だ。


「あ、そうです。ありがとうございます」


「ちょ、あれ。……あ、拙者も届かんかったでゴザル。踏み台持ってくるでゴザル~」


小野寺君はとことこ歩いて踏み台を取りに行った。

私はその後ろ姿を見て、ふっと頬を緩めた。


面白い人だなぁ。


小野寺君はニコニコしながら踏み台を抱えるように持ってきた。


そして床にそっと置くと、その上に立って『サカバンバスピスでも分かる忍者』を取ってくれた。


私は本を受け取ると、ペコリと頭を下げた。


「面白そうな本でゴザルな」

「はい」


「そういえば、昨日恭介殿から聞いたんでゴザルが、ほたる殿は拙者たちの正体について知ってるんでゴザルよね?」

「はい。忍者、なんですよね?」


「その通りでゴザル。いや~まさかこんなに早くバレるとは思っていなかったでゴザルよ。ほたる殿は優秀でゴザルな~」


小野寺君の口調には若干皮肉が混じっているように感じられた。

多分警戒されているのだろう。


「そんなことないですよ」

「またまた~謙遜しなくていいでゴザルよ~。ところで、その本は拙者たちについての理解を深めようとしてくれているってことでゴザル?」


「まぁ、はい。そんな感じです」

「そうなんでゴザルね~」


小野寺君は柔らかい話し方をしているが、その目は

「自分たちのことは詮索するな」

と忠告するように鋭く光っていた。


私はそれには気づかないふりをして話題を変えた。


「小野寺君も何か借りたい本があって来たんですか?」


「ん? いや、別にそういうわけではないゴザルよ。今、改めて学校にある施設を全部回っているんでゴザル。一応先生に来客用の校内地図を見せてもらって覚えたからどこに何があるのかは把握しているんでゴザルが、実際に自分の目で確認することも大事でゴザルからな」

「来客用の校内地図ですか」


「うむ。受験生とか文化祭で遊びに来た人とか用のやつを見せてもらったんでゴザルよ」

「なるほど」


「では、拙者はそろそろ失礼するでゴザルよ」

「ドロンですか」

「ドロンでゴザル。まだ途中でゴザルからな」


小野寺君は踏み台を抱えてニンニンと口ずさみながらどこかへ行ってしまった。


私は『サカバンバスピスでも分かる忍者』を借りるべく受付に向かった。

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