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ひき肉です

「私の能力は何物にも破壊できないバリアを展開することです。透過する物は空気くらいで、空気もバリアの展開が止まれば透過は遮断されます。床も私の足から真横にバリアは展開されるので削り取ってしまいます」

「ええそのおかげで若干傾いている我がマンションの床は多少削られてしまったのです」

「すみません」

 こいつの親から修繕費ふんだくってやる。


 バリアのおかげ様でさっき飲んでたコーラは机事ひっくり返っているし床はちょっと削られているしで踏んだり蹴ったりだ。

 悲しいかなヒステリック起こした肝っ玉母ちゃんが五十分格闘したかのような有様にマイホームは変化している。


「それよりだ。なんで俺はバリアをすり抜けられたんだ?対象を決められたりするのか?」

「いえ、そんなことはできません。なのであなたが線路に来たときは、バリアであなたを後ろに、列車を前にはじこうと思っていたのですが…」

 バリアの中にいて冷夏ちゃんを抱えていた俺は弾き飛ばされたのが現実だ。


「どうしてやろねぇ」

「さぁ…」

 荒野と化した部屋の真ん中で俺たちは頭を悩ませる。が、当然結論が浮かぶことはなかった。何しろ彼女もこんな事態は初めてのことらしい。


「ま、考えても仕方ないことは考えても仕方ねぇか!んじゃ次の話題~」

「は、はぁ」

 良いか少女。この速度についてこい。これが真冬クオリティだ言い回しきしょいな以後気を付けます。


 二人で散らかった部屋をもとの状態に戻しながら会話を行う。

「これおもい…。そういえばお兄さんのお名前はなんて言うんですか?」


「俺?真冬!」

「え?」

 虚空を見つめ…いや、天井だな。天井を仰ぎ深く息を吸う。

「柊……真冬」

「柊…真冬さん…」

 この言い方してみたかったのだ。漫画の主人公っぽくね。


「真冬でいいよ。冷夏ちゃんはその、なんで自殺しようとしたの?」

「ストレートに聞きますね。えっと、私のお家がちょっと多分変なんですけど、お父様が厳格な方でして…。お家からも出られませんし、外を見たこともほとんどなく、何と言うか嫌になったんです」

 ほーん。

「そんで自殺?」

「はい」

 早漏め。いや居候かがっはっは。



「んじゃ俺といろんなことしようぜ。そうすりゃ死なないんでしょ?」

 イケメン過ぎるわー女ってチョロいなー。とか思っていませんよとか思いながら決め顔をしていると、

冷夏ちゃんが運んでいた荷物を足元に置き動きを止めてこちらを見る。


「どうしてそんな優しくするんですか?」

 ふっ。これは俺に惚れちゃうな。


「こんな幼子の肢体をむさぼろうって魂胆ですか!?やってやりますよかかってきなさい!さぁいつでもゴングは今なりました!」

「あれ!?違うが!!」

 冷夏ちゃんはこちらを睨みつけながらゆっくりと後退する。クマに出会ったときの対処法かクソったれ!


「がおー!」

「きゃあああ!」

 少し懲らしめるために脅かすつもりでくまの威嚇のマネをして近づいてみたところ、彼女の足元に置いてあるさっきの荷物を抱えぶん投げてきた!


「ぐぇっ!!」

「やっぱり男は信用なりませんね!」

 まさか俺の秘蔵コレクション収納用段ボールで攻撃してくるとは!顔面に当たり段ボールの中身は当然ぶちまけられ床に散らばる。


「こんな家出て行きます!その節はお世話になりました!」

「待ってくれ!ちょっといたずらのつもりだったんだ!ロリコンじゃない証明もある」

 吹き出る鼻血を親指の腹で拭い、落ちている秘蔵コレクションから一冊を見せる。


「これは…!」

「そうこれは…」




「三十代妊婦黒乳首大全」

「変態の解像度が上がっただけでした!!」

 なんとかロリコン疑惑は晴れたのでした。



 誤解をはらしてからしばらくたち俺たちは食事をすることにした。

「真冬さんお料理するんですね」

「そんな大したものは作れないよ」

「頼むぜコック」

「急に喋り方度したん」

 冷夏ちゃんは俺が突っ込むたびにケタケタと笑ってくれる。球を転がすように笑うとはこのことだろう。普段からアウトローにふざけまくってる俺からすればたまらなく嬉しいのだ球だけにね。


「今日はハンバーグ作ります!材料は簡単ひき肉です!あと玉ねぎとスパイス!」

「おーです」

「感嘆にですはいらないかな。無理にしゃべり方戻さなくてもいいのよ」

 またケタケタ笑ってくれる。嬉しい。

 あと立っている距離が近い。ドキドキする。嬉しい。



「手をな?手を氷でキンキンに冷やしてから肉をこねるんだ。そんで、さっき炒めておいたみじん切りの玉ねぎを少しこねたら混ぜて、ナツメグなどのスパイスも混ぜて十分こねたら成形して焼く。ソースはグレイビーソースでもいいしオーロラソースでもいい」

「何語です?」

「ハングルチョムニダ」

 適量の油をしいたフライパンに火をつけて少し温めてから成形した肉をぶち込む。


「強火で二分。たったらこれをひっくり返す。ほい」

 冷夏ちゃんに足元の棚から取り出したフライ返しを手渡す。


「えっえっ」

「これでひっくり返してください」

「できるわけないです!」

「目標をセンターに入れてひっくり返すだけさ。落ち着いてやってごらん」

「わかりましたあっつ!」

 そういえば君袖なし純白ワンピースだったね。でも丁寧な話ことばが崩れるの見てて面白いからこのままやらせよかな。


 とも思ったが乙女の柔肌を傷つけるのはよくないので一旦火を切ってからやってもらうことにした。


「い、行きますよ」

「行ってどうぞ」

「ええい!」

 それはもう見事な四回転ジャンプでした。


「ひっくり返りました…?」

「ええ三度ほど余計に」

 焼き目はいずこへ。



 ひっくり返したら六分弱火で放置。真ん中少し押して透明な肉汁が出てこれば完成だ。


 皿にサラダと人参の甘いやつものせてソースをかけて本当の完成!朝の残りの白米もよそってちゃぶ台にもっていく。

 きっちりとした正座で待機する冷夏ちゃんを見て少し面白くなる。


「これは…ステーキではないですね?」

「ええ。ハンバーグと申します」

「ハンバーグ」

 どうやらこの子は知識量の偏った箱入り娘らしい。ハンバーグ知らないってどんな人生歩んできたんだ?


「ま、いいか!食おうぜ」

 箸を持ちハンバーグを切り口に運ぼうとする。が。

「いただきます」

 一つ一つの所作が美しい、勝手に目を引かれるような食への感謝。しばらく見惚れていた。


「…なんですか?」

「いや、いただきますって言える女の子っていいよねって」

「変態的目線で…?」

「紳士的目線で」


「どっちか分かりません」

「確かに」

 このころになると俺も自然に笑みが浮かんでいた。

 久しぶりの一人じゃない夕食は、女の子といる緊張を安心感と楽しさでかき消していったのだった。

イソギンチャク推しです。

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