インスタント・インシデント(1/2)
プロローグから半年後のこと。初の大仕事を抱え、納期の問題もあり火曜は残業をすることに。
「別にこの作業なら明日に回しても問題なくないか?」
「ダメ。今日中に終わらせとかないと私の気が済まない。明日になって前日の仕事をやるなんて気が滅入るもの」
「そういうなら良いんだが」
血眼になってモニターと睨めっこをする火曜。今日の分の作業を終えた黒金はその様子を何かをするのでもなく見ていた。
当の本人に落ち度はないのだが、彼女だけ仕事をしていることによる"申し訳なさ"が限界に達したのか、黒金は言った。
「ああと、晩飯的なの用意しようか?」
「気が効くじゃん」
暫くしたのち、段ボールの擦れる音がした後で、
「シーフードか醤油、どっちが良い?」
「はい?」
「いやシーフードとしょ───」
「ちょっと待って」
火曜は一度モニターから目を離し、黒金の方を見る。そこには二つの段ボールとその中のカップ麺たちを見る黒金がいた。
「何その段ボールは」
「カ○プヌードルだけど」
「まさか毎日の晩ご飯がそれとか言わないよね………?」
火曜は目を細め、睨んで言った。
「何か問題でも……?」
「大有りも良いとこ。お米とか無いの?」
「炊飯器はあるけど、米は買って無いんだよな。炊くの面倒くさいからさ」
黒金はさも当然の事のような顔をした。
「呆れた………」
そう言うや否や、彼女は自分のパソコンの電源を落とした。
「作業は今日中に済ますんじゃ───」
「今からスーパーに行く」
彼の言葉を遮った、彼女の言葉はやけに
「ああ行ってらっしゃい……?」
「アンタも来るの」
「何しに行くんだ?」
黒金はいまだに状況が掴めていない。
「お米と晩ご飯の材料を買いに行く」
「はあ」
* * * *
黒金は半ば強制的に助手的に乗せられ。その車は最寄りのスーパーを目的地として発進するのだった。
(2/2に続く)
挿絵:Glaceさん(Twitter:@Glace_forDroom)