妖精と人間
ツイッターでさらっとつぶやいた突発小話。出来はお察しの通り。軽く読み流していただければ……;
「人間というものは、不便なものだね」
妖精の彼は、そう言って微笑う。羽根のない僕は黙ってはにかんでうなずくだけだ。でも僕は本当は知っている。僕は「私以外の誰にも目を向けないように」と、彼が羽根をむしり取った妖精なのだと。
そうして生まれたばかりの僕から羽根と自由を奪っておいて、成長した僕を手飼いの「人間」にしておいて、彼が好き勝手していることも。夜な夜なその美しい羽根で飛び回っては、見目麗しい男たちを次々漁っていることも。
ああ、存分に遊ぶが良いさ。昨日やっと手に入れた薬をベットの中でお前に仕込んだ。月の光が褪せる頃には、お前の羽根も落ちるのだから。
そう思いながら微笑む僕に、彼は「全く馬鹿で可愛いやつだ」と言いたげに、甘くとろけるキスをくれた。
「馬鹿で可愛いやつ」だって? 誰のことだよ、お馬鹿さん。
――そんな、ある夜の蝶の悪夢。(了)