表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/31

16 閑話

†これは、ミカがボーツラクス王国を旅立ってから、三日後の出来事である。

 結婚後、初めての旅行へと旅立っていたミカの両親は、足早に、いや、光速で亜空間を突っ切っていた。



「あなた! 急ぎましょう!」


「うむうむうむうむ……! ミカが心配であるなるなるなるな……!」



†なんとこの両親、1年間は帰ってこないと宣言したはずなのに、わずか1ヶ月ほどで息子の元へと戻っていたのだ……!


 なぜならばこの2人、いや、魔神と女神であるから、2柱と呼ぶべきか……!

 いずれにせよ、尋常ならざる『過保護』であったのだ……!


 まさに、人智を超えるほどの……!


 しかしふたりは、我が家のある丘の上にたどり着いて、愕然とする。

 こぢんまりとした『魔法屋』はそこにはなく……。


 かわりに、でかでかとした『ボーツラクス王国立 高級魔法団』なる建物が……!



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



†時を同じくして、ボーツラクス王国城は、建国始まって以来の未曾有の危機に包まれていた。

 なんとグリーンドラゴンが王城を襲来していたのだ……!


 この国の王族たちは、謁見場の中で右往左往していた。

 少年を追い出した張本人である、プーパリンまでも……!



「だーっ!? なんでなのだ、なんでなのだーっ!?

 いままでこの国は、一度たりともドラゴンの襲来など、受けたことはなかったのだーっ!?」



†彼女のお抱えである、高級言語を操る魔術師たちで構成された『高級魔法団』たちは、結界を張りながら必死に叫んでいた……!



「ひ、姫! 落ち着いてください! ドラゴンの襲来は天災のようなもの……!

 今まではたまたま運が良かっただけなのです!」



†否……! そうではない……!

 ドラゴンがこの国を襲わなかったのは、ひとえに魔神の父と女神の母、そして少年の魔法による守護があったからに他ならない……!



「そっ、それでもミカであれば、世の命令であればグリーンドラゴンくらい討伐していたのだ!

 外にいるグリーンドラゴンを、さっさと殺すのだーっ!

 ミカにでてきて、なんでそなたらにできないのだーっ!?」


「む、ムチャです!

 グリーンドラゴンを討伐するとなると、我々クラスの腕前の術者があと200人は必要です!

 そのミカという者が討伐したのは、きっとトカゲか何かに違いありません!」



†これも、否……!

 少年であれば、グリーンドラゴンより格上のドラゴンであったとしても、撃退していたであろう……!



「でもご安心ください、プーパリン様! 我らが『高級魔法団』が、この城を守ってみせましょうぞ!

 いくらグリーンドラゴンとはいえ、総勢100名の術者が作り出した結界を破れるはずがありません!」



†不意に、風が()いた……!

 そこは、室内であったはずなのに……!



 ……ゴッ!!



 瞬転、謁見場の壁は消え去り、周囲からは丸見えの状態になっていた。

 真っ二つにへし折られた城の上部分が、まるでウエハースのごとく天高く舞い上がっている。


 100名もの術者が作りだしていた結界など、始めから無かったかの如く……!


 そしてそこには、翼をはためかせて見下ろす、入道雲のようなグリーンドラゴンが……!

 しかしそれすらも些末なこと思えるほどのものが、浮いていたのだ……!


 それは……。

 少年の、両親っ……!


 かたや太陽のような輝きを、かたや暗黒太陽のようなダークオーラを放つ、ふたつの存在。

 空を粉々にするよほどの激声が迸った。



「……ミカちゃんを、どこへやったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!?!?!?!?」



†この怒声は国じゅうに鳴りわたり、この国にいたすべての者が耳にしたという。


 眼前に落雷が落ちたかのような迫力に、姫のドレスの中と、魔導師たちのローブの中は……。

 無力な赤子のように、すでに、びっちゃびちゃ……!


 この国を絶体絶命に追い込んでいたグリーンドラゴンを気にする者など、もはや誰もいなかった……!



「あっ……あわわわっ、ああっ、はわわわっ!」



†プーパリンはとうとう腰が抜け、へたり込んでしまう……!

 声にならない声と、涙と鼻水が止まらない……!


 神々たちは、ふたたび声を荒げた。



「答えろぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーっ!!!!

 ミカちゃんを、どこへやったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!!!!」



†いつも恐ろしい怒り顔をたたえている魔神の顔は、もはや限界突破。

 目をそらしたいのにできず、息がまともにできない。


 ありとあらゆる臓器が危機を訴え、体液が漏れ出すのが止まらない。

 まるで心臓をわし掴みにされ、生命を絞られているかのようだった。


 そしてさらに恐ろしかったのは、女神……!


 いつも微笑みを絶やさぬ女神の顔には、もはや慈悲も憐憫も、およそこの世の情けと呼べる感情は欠片もなかった。


 『ミカちゃんを危ない目に遭わせたヤツは絶対殺すウーマン』どころか……。

 『ミカちゃんが危ない目に遭ったらこの惑星(ほし)ごと滅ぼすウーマン』と呼ぶに相応しい、この世の終わりのような形相であった……!



「……ギャオォォォォォォォーーーーーーーーーーーンッ!!」



†ここでついに、グリーンドラゴンが動き出した。


 「モンスターの頂点に立つ、この俺を無視するな!」と言わんばかりに怒り狂う。

 宙に浮いている人間らしき者たちに、一撃必殺の炎を吐きかけようとしていた。


 しかし、魔神と女神が視界の端で捉えただけで、



「……ゴエッ!? グエッ!? ギエェェッ!?」



 全身の骨を砕かれているような嫌な音とともに、苦しみ悶えはじめた。

 最後は、赤い水で満たされた風船が爆発するかのように大爆発。



「ギエェェェェェェェェェェェェェーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!?!?」



†嵐のような血風(けっぷう)となって、城下町を真っ赤に染め上げていた。



 謁見場は血のプール状態、アップアップと溺れるプーパリンに向かって、最後の声が降り注いだ。



「答えよ、愚かなるものよのよのよ……!」


「ありとあらゆる苦しみを与えられて地獄へと堕ちて、なおも責苦を味わっている、あのトカゲのようになりたくなければ、答えるのです……!」



「「ミカちゃんを、どこへやったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!!!!」」



 生死の境を彷徨うプーパリン。

 尽きかけた生命を振り絞り、ある方角を指さす。


 すると、世界滅亡の予兆のように空を蹂躙していたふたつの彗星は、その方角へと飛び去っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★クリックして、この小説を応援していただけると助かります!
小説家になろう 勝手にランキング script?guid=on
― 新着の感想 ―
[気になる点]  タイトルに『魔神と女神に拾われた』とありますが、実の息子ではなかったのですか?  一話で『肉親』とあるので、実の子ではないでしょうか。  それから同じ一話に、『新婚旅行に出かけてか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ