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怒りと嘆きの獣道  作者: 龍崎 明
序章 イジュラの森
5/32

第五話 はじめての

 進化から数日。猪や鹿を中心に狩りをして、生活した。俺たちのレベルは5になり、俺の能力平均は170となり、きょうだいたちは60となった。


『お兄ちゃん、今日は何、狩るの?』


 ワイルドウルフとなり、明確な意思を伝えられるようになったきょうだいに問われる。ちなみに、こいつは雌だ。きょうだいの男女比は俺含めて、3対2となっている。


『今日は、猪にするか』


『えぇ〜、私、鹿肉が良い!』


『いいや、ゴブリンを狩ろうぜ!』


『……ゴブリンは不味いだろ、兄貴』


 俺が二番目の可愛い妹にそう答えれば、一番目の美人な妹が鹿肉を所望し、一番目の馬鹿な弟が馬鹿なことを言い、それにツッコミを入れる二番目の冷静な弟。賑やかだなぁ。


 ん?なんだこの匂い?


『兄さん、これ血の匂いじゃない?』


 と言ってきたのは、冷静な弟。


『うおぉ!弱った獲物だ!今日は、楽ができるぜ!!』


 と馬鹿な弟が言うので、前脚で抑えつける。


『待て、少し、匂いが違う。確かめには、行くが、狩るかどうかは後で決める、わかったな』


『わかったぜ、アニキ』


『『はーい』』『はい、兄さん』


 【隠密】を発動させて、皆で匂いの元に駆ける。


 茂みに身を隠し、匂いの元の様子を恐る恐る伺った。

 

 !?


『なんだ、あれ?でっかいゴブリンか?』

『違うと思う。だって、臭くないもん』

『なんでしょう、変わった毛皮です』

『お兄ちゃん、あれ狩るのー?』


 きょうだいたちが、それぞれに反応を示す。俺は慌てて、指示を出した。


『離れるぞ、あれは狩らない。旨味がない』


『?不味いの?』

『やっぱり、でっかいゴブリンなんだろ』


『急げ』


 きょうだいたちの危機感のない会話に、少しイラつく俺の指示に従い、この場を静かに離れるきょうだいたち。俺はもう一度だけ、()()()()の元に振り返り、その場を走り去った。


 ……


 巣穴まで戻り、一息つく。


『お前ら、この先、ああいった奴がいた場合は、逃げるか、隠れるかしろ』


『えー、あれそんなに強いの?』

『アニキらしくないぜ、アニキならどんな奴にも負けないだろ』

『兄さん、どういうことですか?』


『あいつらは、群れる。それも、俺たちよりもたくさんだ』


『たくさん?でも、さっき見たのは、1匹だったよ』


『別れて行動してるだけだ。群れの規模はあの大きさで、蟻んこと同じだと思え。しかも、奴らはチカラの強弱にばらつきがあって、仲間思いだ。弱い奴を倒したら、強い奴が襲いに来る』


『蟻んこみたいに、一杯!!』

『嘘だぁー』

『アニキ、おかしいぜ』


 冷静な弟以外は、冗談半分に聞いているところがある。仕方ない。


「ガァアア!!」


 【咆哮】によって威圧し、念を押す。


『奴らに近づくな!』


『わ、わかったー』

『そ、そんなに怒らなくても』

『うっ、わかったぜ』

『わかりました』


『奴らに出会わないよう、しばらく、狩場を森の奥にする』


『そこまで……』


 そうだ。冷静な弟の呟きに、心の中で返答する。あれはどれだけ警戒しても足りない。一つの世界の支配者に成り上がった生命体。俺はあいつらを前世で嫌というほど知っている。何せ、俺もその一人だった。最弱にして、最凶とでも言えば、良いのか。


 関わらないのが、賢明なんだ。()()には。

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