第三話 母よ、さらば
あの後、巣穴に戻り、眠りについた。ちなみに、ゴブリンの肉は食べた。不味かった。
翌日。
またまた、母に連れられて、見つけたのは猪だった。
『種族:ワイルドボア 闘級:F』
ちなみに、コイツのレベルは2と俺より弱い。能力も俺がレベル2の頃より、低い。俺一人で勝てる。だが、群れてる。他の連中もレベル2が多いが、一匹だけ3だ。もちろん、能力は俺より低い。何がもちろんなんだ?
まぁ、草食動物だし、俺が1匹、きょうだいが1匹担当すれば、良いか。後は逃げるだろ。
「アォーーン!!」
開幕、【遠吠え】。怯んだ哀れな草食動物。レベル3の奴に襲い掛かる。なるべく、きょうだいの危険を排除だ。きょうだいたちも、近場の1匹に狙いを定め、飛び掛かる。
レベル3の奴の首筋に噛みつく。めっちゃ暴れるので、爪で押さえ込み、噛みちぎった。沈黙。生き絶えたようだ。きょうだいたちも、なんとかなってる。他の猪は?
残り3匹。好戦的な目でこちらを見ています。なんでじゃ?!
しかたあるまい。戦争じゃあ!
「アォーーン!!」
【遠吠え】で、もう一度、竦ませる。手近な1匹に襲い掛かり、首筋を噛みちぎる。残り2匹は、仕留め終わったきょうだいたちが牽制してるので、隙をついて倒してやった。
何故、逃げなかったし?
〈レベルアップしました〉
これで4か。
……
〈レベルアップしました〉
5だ。ちなみに、闘級がGのきょうだいたちはこれでカンストである。だが、進化する様子はない。【共鳴】の弊害だろう。俺と同時に進化するのだ。猪肉は美味かった。うん、だが、質量関係がおかしい。何故、あの量食べれた?まぁ、良いか。
『名称: 性別:雄
種族:ワイルドドッグ・リーダー 闘級:F
レベル:5/10 状態:健常
パラメータ
筋力:60 体力:60 魔力:60 技巧:60 敏捷:60
スキル
特性:【異界の魂】【理の声】【自動翻訳】【能力閲覧権:lv.1】【共鳴】
戦術:【爪牙術:lv.2】【遠吠え:lv.2】【指揮:lv.2】
魔術:
耐性:【獣の毛皮:lv.1】
称号:【異界人】【転生者】【群れの長】 』
うんうん、相変わらず、上昇値10だ。軒並み、スキルのレベルも上がっているが、攻撃を受けないので、【獣の毛皮】が上がらない。
きょうだいたちは、能力平均25だ。レベル1の俺より少し、強いくらいか?スキルの上昇はなかった。
巣穴に戻り、俺たちは眠りについた。
……
深夜、俺は物音を聞いて、目を覚ました。
「ワウ?」
キョロキョロと周囲を見れば、ホントに野生なのか不安になるきょうだいたちの寝顔。それに寄り添うように眠るはずの母の姿がなかった。
?!マム!どこ行った!!
俺は、野犬の嗅覚を頼りに外に出る。しかして、マムは巣穴のすぐそばにいた。
マム?
マムは、月を見上げていた。今夜は、満月だ。犬系の魔物には、思うところがあるのかもしれない。俺はよく分からないが。
「ワウ?」
俺の鳴き声にこちらを向くマム。目を細め、彼女は、また、月を見上げる。そして、影がマムを覆った。影が晴れたとき、マムは別の魔物になっていた。さっきまで、俺たちと同じ、ワイルドドッグだった。でも、もうマムの種族を見ることは叶わなかった。茶色かった毛並みは、漆黒に。狼系ではあったが、どこか愛嬌のあった顔は精悍に。
『我が子よ、強く生きろ』
今まで、聞くことのなかった明確な言葉。進化により、マムの知能が上がったのだ。【自動翻訳】で聞き取ったそれに、俺は別れを感じ取った。そして、マムはどこかへ走り去っていった。
さようなら、マム
【自動翻訳】がなければ、イメージが伝達されていました。
ちなみに、母犬の心境は
(鳴いてくれないのか、冷たい我が子だ……)
「クゥーン……」
とかだったり、しなかったり