第二話 はじめての戦闘
野犬に転生して、一ヶ月。幼体が外れ、本来の能力が発揮されるようになった。てことで、きょうだいたちを率いて、はじめての戦闘である。
母犬先導のもと、訪れたのは、スライムのいるところ。ちなみに、ここは森である。山ではないっぽい。
『種族:スライム 闘級:G』
うん、雑魚だ。てい。
俺のお手攻撃に、沈黙することとなったスライムくん。弱い。母犬を見る。特に、褒めるでもなく、次々とばかりに歩み始める。
きょうだいたちよ、行くぞ。スライムの死骸で遊ぶんじゃない。
……
しばらく、スライムばかりを倒し続けた。すると
〈レベルアップしました〉
【理の声】が最初の仕事をしました。なんか、女性っぽい声だな。
『名称: 性別:雄
種族:ワイルドドッグ・リーダー 闘級:F
レベル:2/10 状態:健常
パラメータ
筋力:30 体力:30 魔力:30 技巧:30 敏捷:30
スキル
特性:【異界の魂】【理の声】【自動翻訳】【能力閲覧権:lv.1】【共鳴】
戦術:【爪牙術:lv.1】【遠吠え:lv.1】【指揮:lv.1】
魔術:
耐性:【獣の毛皮:lv.1】
称号:【異界人】【転生者】【群れの長】 』
おぉ、上昇値10か。ええっと、きょうだいたちは、どうかな?
おっ、こいつらもレベルアップしてらぁ。なんもしてねぇよな、オマエら。オマエら、今の状態じゃ、ただのヒモだぞ。
ええっと、上昇値5、現在の能力平均10か。
よし、マム、次だ。
……
『種族:ゴブリン 闘級:G』
うん、雑魚だ。しかしな、マム。なんだ、この数は?!えっと、俺たちが5匹で、(マムは数に入れない。)向こうが、8匹?
茂みに隠れてる俺たちだが、いつ見つかっちまうか。うーん、不意打ちで、俺が1匹で、きょうだいたちに囮をやってもらうか?えっと、うーん、いや、うーん。まぁ、このゴブリンども、【指揮】も【連携】も持ってないから、どうにかなるか。
「ワウワウ」
と手短に指示を伝える。子犬なら、意味もなく、大声で鳴きそうなものだが、こいつらは静かにしてる。指示を理解してる感じもする。【指揮】の効果なのか。この厳しそうな世界で生きるための本能か。
よし、じゃあ、行くか!
隠れていた茂みとは、別の茂みに移動し、一気に飛び出す。ちょうど、背後を突かれたゴブリンの首元に噛みつき、まずは1匹、しっかりと骨を折る。突然のことに硬直した様子なので、2匹目に飛び掛かり、こいつもまた、首の骨を折る。そこでようやく、立ち直った様子の6匹のゴブリンたち。
俺を取り囲む程度の知能はあるか。
取り囲まれた俺は、息を吸い、【遠吠え】を発動する。ゴブリンはおそらく、雑食、威圧の効果は期待できないが、この合図にきょうだいたちが一斉に飛び出し、近場の1匹に全員で飛び掛かる。
その様子に、二度目の硬直を見せるゴブリンたち。俺はきょうだいたちから遠い、ゴブリンの1匹に狙いを定め、また、首を折る。きょうだいたちに飛び掛かられた奴も、生き絶えた様子で、また、茂みに戻るよう、きょうだいたちに指示を出す。もちろん、【遠吠え】によって指示を出し、ついでにゴブリンたちの注意をこちらに向ける。これで、ゴブリンは4匹。彼らは、俺を取り囲むものの、きょうだいたちを気にして、浮き足だった様子である。
「アォーーン!!」
最後の指示、きょうだいそれぞれが1匹ずつ担当し、翻弄する。そこを隙をついて一匹ずつ、俺がとどめを刺し、危なげなく勝利した。
〈レベルアップしました〉
うん、苦労に見合う結果です。