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怒りと嘆きの獣道  作者: 龍崎 明
第一章 従魔の街
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第十四話 買い物

「こちらが、ブランカ様のギルドカードになります」


 受付カウンターに戻り、アリカからギルドカードを受け取った。

 内容は、名称、性別、種族、天職、ランクだ。天職は、ちゃんと修道士になっていた。


「ありがとうございます」

「いえ、仕事ですので。何かお困りの際は、私に言っていただければ、できる限り対応させてもらいます」


 淡々としたアリカに、ブランカは若干、気圧されている。


『それじゃ、早速、いくつか相談』

「はい、何でしょうか?」

『宿屋の紹介、ブランカの杖を売っている店の紹介、後は手頃な依頼の紹介をお願いしたい』

「わかりました、少々お待ちください」


 俺の相談に対応すべく、アリカが資料を取り出し、必要な情報を探す。ブランカは、不安と手持ち無沙汰なのもあってか、俺の背中を撫でている。


「ブランカ様」

「はい」

「まず、宿の方ですが、ギルドと提携している『梟の止まり木亭』をお勧めします。場所は……」


 地図を示され、宿の位置を案内される。さらに、続けて、杖を売っている魔道具店を案内され、ローブなども売っていることが説明された。ブランカが初心者(ビギナー)であることも知っているので、次いでとばかりに、雑貨店や服飾店も紹介された。まぁ、今着ているものが少しボロいからな。


「最後に、手頃な依頼ですが、こちらなどいかがでしょうか」


 提示された依頼は、ランクFの採取依頼だった。ちなみに、ランクGの依頼は街中での雑用依頼である。そのため、依頼の受理条件は、冒険者当人のランクの一つ上までとなっている。


「はい、大丈夫です。これを受けます」


 どうやら、村で見たことのある薬草らしかった。この辺りの分布を説明してもらい、まずは、宿の確保に向かった。


 ……


 梟の止まり木亭を恙無く、発見して、部屋を確保した。なお、金銭はあの男どもが割と持っていたので余裕がある。まぁ、奴隷が買える程度には稼いでいたわけだしな。それなりの実力はあったのだろう。


 続けて、服飾店でブランカの下着などを購入。雑貨店で、女性用の諸々と、冒険者には必要だと気の良い店主の勧めで回復薬(ポーション)やロープ、ナイフなどを購入。


 最後に、魔道具店を訪れた。


 外観は特に変わったところはない。内装にしても、明るめの照明で不気味な様子はなかった。まぁ、魔術触媒のところに骨とか、蜥蜴の尻尾っぽいのがチラッと見えるが。


「いらっしゃい」


 俺たちの他に客はいなく、店主の老婆が声を掛けてくる。


「なにを買いに来たんだい?」

「えっと、杖とローブを」

「ふむ、天職は?」

「せ、と違った。修道士です」

「ん?……修道士ね。そいじゃ、えっと、どこへやったかな?」


 ブランカが天職を問われて言い淀んだが、老婆はさして気にした様子もなく、店中からブランカにあった商品を探そうと動き出した。


 俺は、その様子を横目に、商品に【能力閲覧権】を発動してみた。


 ふむふむ。まぁ、特に目を引くものはないか。


「これなんかどうだい?」


 老婆が戻ってきた。その手に握られた商品を調べる。


『聖者の錫杖:聖職者に多大な恩恵を齎す錫杖。高位聖職者が神に祈ることで作成される。

 祈りのローブ:聖職者が身に纏う一般的なローブ。精神集中に補正が掛かる。            』


 この婆さん、何でこんな杖持ってきたんだ。ブランカはどう見たって、初心者だろ!?


 思わず、キッと睨みつければ、老婆もまた、こちらを見ていた。


「お嬢さん、あんた、聖女だろ。それでそっちの魔獣がお嬢さんの保護者じゃないかい?」

「えっと……」


 老婆の言葉に困惑を見せるブランカ。バレてるみたいだから、俺が前に出て、口を開く。


『俺が保護者だとなぜ思った?』

「あんた、随分とお嬢さんのことを気にかけていたからね。どれだけ懐いていても、獣程度の知能じゃ、そんな様子は見せないよ。好奇心でこの店をウロウロしようとするだろうね。それで、聖女の方も聞くかい?」


 むっ、保護者の話で流そうとしたが無理だったか。


『あぁ、聞こう』

「……一応、そこはまず、否定しておくもんだよ。まぁ、お嬢さんの反応からバレてるけどね。私は別に、信仰なんてもっちゃいないからその辺りは信用してくれていいよ。ギルドとも話はつけてるんだろ。それで、何でわかったかだけど、私が【鑑定】スキルを持ってるからさ」


 なっ!?マジか。俺のことは観察で推測したみたいだし、俺を見るには、レベルが足りないのか。これは早急に、ブランカの隠蔽やレベル上げに取り組むべきだな。


「そんで、これは買うのかい。買うなら、このくらいになるよ。高いと思うんだったら、口止め料と思いな」


 婆さん、流石だ。確か、今持ってる分でギリギリ足りるか。買っとくか。


『あぁ、買おう』

「毎度あり。さて、まぁ、面倒事があったら相談しな。それなりに顔がきくからね」

『あぁ、ありがとよ』

「ありがとうございました」


 思わぬ身バレに冷やっとしながら、俺たちは店を去るのだった。てか、アリカは知ってて、ここを紹介しただろ。

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