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桃香先輩誘拐事件

吹奏楽部の部室で騒ぎが起きました、突然1stクラリネットの二年生部員の祥子が部長の所にかけてきて叫んだのです


「大変です! 桃香先輩が誘拐されました!」


いったい何が起きたのかわからない部長は目を真ん丸にして聞き返しました


「今全員パート練習であちこちの教室に分散していたわよね、1stクラのパートで一体何が起きたの?  桃香は誰に誘拐されたの?」


この日吹部は、新曲を覚える為、起こしたばかりのスコアを抱え全部のパートがバラバラに空いている教室や屋上、校庭などに散って練習をしていたのです


祥子があたふたしながら説明します


「わかりません、制服のスカーフを覆面にした三人が教室に入って来て、桃香先輩を楽器ごとさらっていきました」


部長の横でスコアをチェックしていた副部長でオーボエの美緒先輩が顎に手を当てて言いました


「これは大事件だわ、すぐに捜査しなくちゃ」


うちの学校の吹部では、オーボエとピッコロはソロです。部長がピッコロなので、美緒先輩と部長は部室でそれぞれ個人で練習していたのでした


「ちょっと美緒、探偵ごっこしてる場合じゃないでしょ、顧問の先生呼びに行きましょう」


部長が言いましたが、美緒先輩は片手を上げて部長を止めたのです


「部長大丈夫、あたしの灰色の頭脳はもう犯人の目星をつけたわ」


「あなたいつからそんな特技身に付けたのよ、探偵アニメの見過ぎじゃないの」


部長に言われても美緒先輩はにっこり笑い首を振りました


「本当に犯人の見当ついているのよ、一緒に探しに行きましょ」


そう言うと美緒先輩は、部長と祥子を連れて部室を出ました


そのころ、誘拐された桃香先輩は、ぐるっとまわりを犯人たちに囲まれていました


犯人の一人が言いました


「さあ、吹いて、あなたの演奏が必要なのよ」


桃香先輩は、目を真ん丸にして犯人たちを見回しました


「なんで?」


すると、そこにガラっと教室の扉を開き、美緒先輩が飛び込んできました


「犯人と被害者を発見! 神妙にお縄につけ~」


「しまった、もう見つかっちゃった!」


犯人の一人が両手で口を押えて言いました


そこに遅れて部長と祥子が入ってきました


「ちょっと、これどういう事? 3rdクラリネットのリーダーは杏子よね、説明して頂戴」


そう、桃香先輩を誘拐したのは吹部の3rdクラリネットのメンバーだったのでした


ここで時間を巻き戻して事件の起こる前の3rdクラリネットのメンバーの行動を振り返ってみます


昨日、新曲のスコアは各パートごとに裁断され、ピラピラの細長い楽譜を束ねた状態でパートリーダに渡されたのですが、3rdクラリネットでは、このピラピラの束を一枚の楽譜に起こすのは二年の千明の担当でした


この日職員室でコピーした楽譜を抱え部活に来た千明は、パート練習のために空いていた3Cの教室に行くと全員に新しい楽譜を配りました


ところが、それを見た全員が絶句したのです


しばらくたって、リーダーの杏子先輩が言いました


「何この全休符の嵐、2小節吹いて8小節休んで4小節休んで1小節…、これいったいどうやってタイミングとるのよ」


二年生の静香が言いました


「これ、他のパートの音が無いと曲そのものがどんなものかも掴めません、あたしこの曲知らないです」


すると、他のメンバーも口をそろえて言いました


「あたしも知らないです」


杏子先輩が困った顔で言いました


「実はあたしの初見なのよ、この楽譜」


一同は、またも沈黙してしまいましたが、おもむろに杏子先輩が言いました


「よし、決めた。あなたたち、顔隠して1stクラの練習してる部屋に行って、主旋律を吹けそうな部員を一人誘拐してきなさい、主旋律があったら練習できるでしょ」


「ナイスアイデアです先輩!」


こうして犯行は行われたのでした


話を聞いた部長は大きなため息を吐いて言いました


「確かにあなたたちの事情は分かったわ、誰も知らない曲で、全休符ばっかりだったらパート練習なんて出来っこないわね」


杏子先輩が身を乗り出して部長に言った


「でしょ、でしょ!」


部長は桃香先輩に向き直って言いました


「まあ、そう言った事情だからさ、悪いけど3rdのみんなを助けてやって」


すると桃香先輩は言いました


「別にそれは構わないんですけど、この曲の楽譜、あたしも今日が初見で、リズムとる自信ありません」


杏子先輩が頭を抱えて叫んだ


「なんですって! 誘拐する相手を間違えたかあ! もっとましな人間をさらい直さなくちゃダメじゃん!」


部長が杏子先輩の頭をこつんと叩いて言いました


「何で誘拐にこだわってるのよ、バンマスの1stのリーダーの喜代子呼んでくるわよ、それでいいんでしょ」


すると、桃香先輩が言いました


「あ、でもリーダーもこの曲知らないって言って困ってました」


部長が硬直しました


「な、なんですって! いったいこの曲選んだの誰よ!」


この時、こそっという感じで副部長の美緒先輩が教室を抜け出そうとしていました


そして、扉から抜け出す瞬間に美緒先輩は言いました


「では諸君健闘を祈る、あははは」


「お前かー!」


杏子先輩が叫びました


その後、教室にいた全員が美緒先輩を追いかける為飛び出したのはせつめいするまでもないでしょう


そして、結局この新曲は、お蔵入りになったのでした


楽譜を書き起こしたメンバーたちはため息を吐きましたが、改めて問題の曲を音源で聞いた部長が呟きました


「あー、知ってたわこの曲、深夜アニメのエンディングだわ」


この誘拐事件はその後わが校吹奏楽部の暗黒史として長く語り継がれることになるのでしたw

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