夏の再開
かなり短いです。暇潰しにどうぞ。
8月。アホほど暑い日射しの中、遠くから響くセミの合唱が、体感温度を倍増させる。
「あークソあちぃ…」
翔太は仕事の合間の短い夏休みに故郷に帰ってきていた。そんな翔太に声をかける少女。
「しょーたー!久しぶりー!」
その少女が待つ場所へ、彼は歩を進める。
「…久しぶりだな。亜美。」
「もー全然来ないから寂しかったぞ!」
向日葵のような笑顔の少女は少ししかめっ面で翔太に文句を垂れる。
「すまんな。なかなか会いに来れなくて。仕事が忙しいんよ。それにしてもこっちはあっついなぁ。」
そう言って翔太はバケツに汲んだ水をぶっかけた。
「わはははははは!冷たい!」
「ほれ、お菓子買ってきたぞ。お前が好きだった奴だ。」
「わぁ!翔太ぁ…あんた最高や…どれから食べよう…」
翔太はお菓子を置くと昔を思い出すような、遠い目になって彼女に語りかける。
「いやあ、こっちくると思い出すわ。虫取っつって二人で山入ったの覚えてるか?」
「あー、んなこともあったなぁ」
無邪気に笑う少女。
「奥まで行きすぎて帰れなくなって、二人で泣きながら山ん中さまよって…あんときはどうなるかと思ったわ、マジで。めちゃめちゃ親にどやされたなぁ。それでも懲りずに探検とかして…またあんなふうに遊びてぇな…でも…」
「せやねぇ…」
少女は、少し寂しそうに笑う。
「そんなしんみりせんといてや!翔太らしくない!」
はぁ…
ため息をもらす翔太。涙が溢れそうになるが、必死に堪える。
(亜美に俺のこんな顔見せらんねぇな!)
「お前は育ったらかなり上物になると思ってたんだがぁー、それを拝めなくて残念だ!そしたら俺が嫁に貰ってやろうと思ってたんだがな!」
「やかましいわ!わはははは!」
少女は再び明るい顔を取り戻して高らかに笑う。
しゃがんで手を合わせ、幾秒か拝んだ翔太は、ッシ!と太ももを叩いて立ち上がる。
「じゃ、またそのうち来るわ。」
「おう!すぐ来いよ!今度はジュースも持ってこい!」
挨拶を終えた翔太は墓地を後にした。