かぜひきに注意
「あれ?」
いつもの放課後、と思いきや。何やら怪しい珍客が来ているような……?
つんつん。
「ね、真一?あれって鷹子ちゃんじゃないの?」
愛美に言われるまでもなく、鷹子みたいなんだが。
「そうだな。上級生の教室に来るとは……まさか、再び僕を闇討ちか!」
「堂々と学園で闇討ちも無いでしょ━━と、言いたいけど……めっさ行動が怪しすぎるよねぇ」
「だな……」
その鷹子と言えば。
キョロキョロそわそわおどおどウロウロ。
いくらでも頭の上に書き文字が浮かびそうな、と~~~~っても挙動不審な行動をしている。具体的には廊下の角から(たぶん)こっちを窺っている。……と思う。
「えーと、鷹子ちゃんって美人だし背も高いしスタイル良いし」
「うむ。あれで逆に目立ちまくっていると本人が気付いているかどうか……」
何か色々ヤバい気がするからこっちから行くか。
「鷹子ちゃ~~ん!」
「って、あの愛美もう行ってるよ!」
空気読まない奴ってとことん怖いもの知らずだな!
「!━━こ、こここここれは愛美センパイ、きき奇遇ですね!」
「うんうん奇遇だね!」
お前から声かけに行ったろが。しゃーないなぁ。
「よ。こんちはタカりゃん」
「ど、どうもこんにちわです、センパイ」
呼び名をスルーするほど何かいっぱいいっぱいになってるよ。これは重症だな。
「上級生━━と言うか僕か愛美に用かい?」
「は、ハイ。センパイに少々お願いがあって参りました」
「おー、そかそか僕に━━って僕!?」
てっきり愛美だと思ったんだが。僕はオマケ程度か門前払いなるとの予想は外れた。━━どうなっているんだ?
「それで……あれ?優季ちゃんはどうしたんだ?」
とにかく目立ちすぎるので場所を外に移して気付いたのだが、優季ちゃんが居ない。外で待っているのかと思ってたのに。
「優季はカゼで休んでいます」
鷹子はしょぼんとして元気なく言った。
「あらら。それなら皆でお見舞いに行こうか━━」
「それなんです愛美センパイ!」
「━━な???」
突然鷹子が愛美に襲い掛かった!━━ように見えた。がしっと愛美の両手をつかみ、えらい勢いで迫る。
「た、鷹子ちゃん!?近い近い近い!」
「おお、愛美を慌てさせるとは凄いな」
「こらぁ!そこで日和見すんな!」
さすがに引き気味の愛美にも構わず鷹子はなおも迫る。
「お願いします愛美センパイ!ボクがお見舞いに行くのに付き合ってください!後生です!」
「何でお見舞いにそんな決死の覚悟が必要なの!?と、とにかく落ち着いて?鷹子ちゃん」
ぱっ。
「あ、でも本命はこっちのセンパイでした」
「あれ?」
不意に鷹子は手を離し、僕の方へクルリと向き直った。
「この際センパイでいいです!お見舞いに付き合ってください!」
「ごっつ失礼な上に愛美が置き去りにされとるぞ」
「あわわ失礼しました!つい本音が」
「失礼の上乗せって鷹子も大概だな……で?とにかく優季ちゃんのお見舞いに一緒に行けばいいのか?」
「ハイ……」
何だかよく分からんがこうでも言わないとまとまりそうにない。
「あの~~わたしはどうしたらいいのかな……」
行き場を無くした両手を空しくわきわきさせる愛美だった。