軋轢
「退屈だ……」
いつも通りの放課後。にはならず、この所ちょくちょく出現する沙更ちゃんから脱兎のごとく逃げ出した愛美のおかげで、僕はいささか時間を持て余してしまった。(その際に沙更ちゃんが「ちっ、最近逃げ足が速くなりやがりましたわね」とかお嬢様らしからぬ台詞を呟いた気がするが)
ま、暇だし選択肢も出ないしで、一年生コンビでもからかいに行ってみますか。
「あれ?」
何だか一年生の、しかも二人の居る教室辺りが騒がしい。ケンカでもあったか?
と、向こうからいかにも不機嫌だと言わんばかりの顔で男子生徒が肩を怒らせて歩いて来る。
「ったく、あのデカ女が……お?」
「おう?」
捨て台詞のようによそ見をしていたので僕と肩がぶつかり、一瞬睨まれたが、辛うじて相手が上級生だと分かったのか顔を背けて去って行った。
「何だありゃ?━━うおっと」
僕の前には怖い顔で睨む鷹子が。あ、いや。睨んでるのはさっきの男子か。良く見るとその後ろに隠れるように優季ちゃんが鷹子の袖を掴んでいた。
鷹子は手を震えるほどギュッと握り締め、まだ向こうを睨んでる。
「あれま、どうしたの優季ちゃん?━━鷹子が何かされたかい?」
「え?あ、いえ。されたのはあたし……かな?ちょっとしつこく話し掛けられた所に鷹子ちゃんが来て、そしたら男子と言い争いになって」
「あー、さっきの下級生か」
「優ちゃん、大丈夫?」
「全く、男子ってやっぱガキねぇ。」
そこへクラスメートと思われる女子がわらわら集まってくる。むむむ、これは多勢に無勢。女三人寄らばやかましい、だっけ?
「うん、平気平気。ね、鷹子ちゃんも少し落ち着こう?」
「あ……うん。ごめんなさい」
「先輩が何か奢ってくれるって。さ、行こうよ」
「はい?いつの間にそんな流れになったんだ?━━っておいおい!?」
「中庭に出発━━♪」
優季ちゃんを真ん中に、右は鷹子、左は僕と腕を組んでずんずん歩く。意外とこの娘も力が強いんだな。━━ってこの状況何???
「優ちゃーん、そう言えばその先輩は誰━━?」
「ただの変な先輩━━っ」
「あ、噂の変輩か」
「何ですと━━っ!?」
いつの間にか定着してる!ヤバい!藤間真一の明日はどっちだ!!