どさくさだろうが告白である。
「め、目の前で生告白……。ボク、初めて見ました……」
そう言う鷹子はまるで自分が告白されたかのように真っ赤になって頬に手を当てていた。この娘も根はずいぶんと純情なものだ。━━いや、どちらかと言えばこっちが本来の彼女なのか。
「って、冷静に分析している場合か!」
思わず一人ツッコミ。
優季ちゃんと鷹子が大事な話をしている時に新たな火種━━むしろさらにダイナマイトを放り込んでしまった。
いや待て!あの亜子とやらの後輩も優季ちゃんは男子なぞ眼中無しとか言っていたではないか。まあ、まぢで眼中無しとかだったら……ちと凹むかも。いやでもこれでも多少は仲良しになってはいるとは思うがどーよ?
何となくそーっと優季ちゃんの様子を伺うと。━━げ。
「あの~~優季ちゃん?表情が消えてますよ?」
これはこれでレアなお顔……って、いやいや。ひょっとして、僕やらかした?
「…………先輩」
「は、ハイ!」
「あたしと先輩にはまず、やらなくてはならない事があると思うんです」
「ハイ、それは何でしょうか優季ちゃん」
すると優季ちゃんはすっくと椅子から立ち、思わず僕もつられて立った。
「━━鷹子ちゃん」
「ボ、ボク……に何か?」
鷹子サン無表情な優季ちゃんにちょっとビビり気味。まあ気持ちは分かるが。
そして優季ちゃんは。
「本当に色々とごめんなさい」
深々と頭を下げた。
「え?急にどうしたの優季━━」
「ちゃんと話を聞いてあげなくてごめんなさい。面倒な事を押し付けちゃってごめんなさい。自分の事を隠しててごめんなさい」
「優季……」
ここでようやく優季ちゃんは頭を上げた。
「━━泣かせるような事になって、ごめんなさい」
それこそ自分が泣きそうな顔で優季ちゃんは言った。
……そうか、そうだよな。
「僕も悪かった。ゴメンな鷹子」
「センパイ……」
「薄々鷹子が無理してるのに感付いていたのにほっといてた」
「それは……ボク自身も悪いところがあるから仕方がないです」
「鷹子ちゃん。あたしはそれを含めてでもこうなる前に何とかしなきゃならなかったと思う。━━これでもひとつ年上なのにね」
「あ……それなんだけど、ボクはこれからなんて呼んだらいいのかな」
「『優季』でいいよ。もちろん敬語も無しで」
「━━うん。ボクもそうしてしまったらもう、優季と距離が離れてしまう気がするからその方がいい。これからも優季と友達でいたいから」
なるほど。話の流れで年上だと気づいていただろうに、それでも口調を変えなかったのは鷹子なりの気遣いなのか。
「あたしも鷹子ちゃんとこれからも友達でいたい。ううん、もっと仲良くなってもっと鷹子ちゃんを知ってもっと自分を知ってもらいたい」
鷹子は優季ちゃんの手を取り両手で包み込む。
「ボクもそうしたい。もっと優季と仲良くなってもっと好きになりたいよ」
「……ありがとう、鷹子ちゃん。これからもよろしくね」
「うん。こちらこそよろしく、優季」
これで二人はやっと本当の友達━━いや、親友になれたかな。
…………あれ?何か忘れてないか?
「……それで鷹子ちゃん」
「何?優季」
「その友達の鷹子ちゃんに折り入って相談があるのだけれど」
「相談?いいけど……」
「そこの変輩からワタクシ告白なるものをされてしまったようなのですけど」
「はい?」
あ・それだ。
「あたしを好きだとかなんとか言っちゃってくれてというか二人して可愛いとかなんとか言っちゃってくれたりしまして」
「ど……どうしたの優季?」
「こんな美人の鷹子ちゃんを差し置いてあたしにコクるとかあり得ないでしょうにでもでも実際にこんな事をされた場合はどう対処すべきか教えて下さいましですお願いします!」
こ……これは!
━━ゆいちゃんはこんらんしている!
「と、とにかく落ち着いて。どうしたの優季?今までだって告白されたりした事なんかもあったでしょう?」
「いや……そうなんだけど。そもそもが全然知らない相手だったりどうでもいい人ばかりだったから本気にしてなかったし……」
それなら僕は少なくともどうでもいい連中には含まれてはいない……のか?
「なら……ええと、センパイに返事をする……とか?」
「返事!?」
優季ちゃんはビキッと音がしそうなほど一瞬固まり。ギクシャクというかそーっとそーっと振り返り、ようやく僕の方を向いた。
それから優季ちゃんは真っ赤な顔で僕を見たり右を見たり左を見たりして散々視線を泳がせて。
そして、ようやく彼女が絞り出した言葉は━━。
「…………ごめんなさい」
僕の告白はほんの5分ほどで玉砕してしまった。
しんいちよ。せんたくしもないのにばっどえんどとはなさけない。
━━いや続きますけどねσ( ̄∇ ̄;)?




