凸凹ペア?
斯くして僕は割とあり得ない出会いを通じて二人の下級生と知り合う羽目になった。
悪い意味でインパクトはあったが、でも何だかあの二人は気にはなる。その理由までは良く分からないが。
さて、ここで選択肢だ。
《下級生の二人に会いに行く》
「って、他に選択肢無いじゃん」
いくらエ○ゲ風だからってねえ。
「で?何でお前まで付いてくるわけ?」
「真のヒロインだからです」
「今回サブだよ?」
「ぶう!良いじゃない別に!それにそもそも選択したりヒロイン確定したからって他のキャラが出てこなくなるのが今のシステムのつまらない点だって━━むぐぐ?」
「止さんか、それ以上は物語が崩壊する」
「むーっ!むーっ!」
「白昼堂々しかも校内で拉致監禁凌○ですか。あい変わらずの変態ですね、センパイは」
「鷹子ちゃん、もう少しオブラードに包んで言った方が━━」
「それって否定はしないって意味にならない!?」
ジト目の鷹子と苦笑気味の優季ちゃんと遭遇した!
何でも良いけどどっちもどっちで扱いが酷いよね!……いや、自業自得は認めるが。
「今日も二人セットか。ホント、仲いいね」
「変輩から優季を守るのがボクの役目ですから」
「その名称、頼むから定着させないで……」
地味に凹むから。
「これからお昼?」
「あ、はい。天気が良いので外で食べようかと」
優季ちゃんは可愛らしい巾着を愛美に掲げて見せた━━あれ、案外大きい?
隣の鷹子も似つかわしくない可愛い巾着を持っているが、そちらは一回り小さい。ちと意外だ。
「なら一緒に━━」
「さ、いい場所取られる前に行こう優季」
「うん、それじゃ、先輩さようなら」
「……」
行き場の無い手をそっと下ろした。
「あはは、真一振られちゃったねー。おっと!」
「逃げるな。……あれ?」
「そうそういつも頬っぺたをフニフニされてたまる━━」
ぎゅうう。
「━━か??」
「あら嬉しいですわ。わざわざ自分から私の元へ飛び込んで下さるなんて」
「ひぃ!こ、この声まさか……!?」
「沙更ちゃん?」
「はい、私です」
愛美の背中からひょこっと顔を出したのは、紛れもなく彼女だった。
「いやーっ!離して!」
「むっふっふ、離しませんわよ。ああ……お姉さまの温もり。すりすりさわさわ」
「ちょ、どこ触ってるの!?」
うわー、けっこう刺激が強いぞこれ。
「あー沙更ちゃん?悪いけど僕たちこれから昼ご飯なんだが。いや、それ以前に学校はどうしたの?」
「心配には及びません。これでも私無遅刻無欠席で通しておりますので」
パッ。
今回は素直に(?)愛美を解放してくれた。
「ぜーっぜーっ、そ、それじゃ真一」
例によって僕の背後に隠れ、そこからジリジリ下がって。
「後でね━━━━っ!」
ダッシュで愛美は逃げた。
「おーい、昼はいつもの場所でな!」
凄いスピードで遠ざかりながらも、愛美は手を振った。
「やれやれ。━━あれ?」
沙更ちゃんは動かなかった。と、いうか何故か僕を見ている。
「追いかけないのか?」
「別に。掴まえようと思えばいつでも捕まえられますのでご心配なく」
「さらりと怖いこと言うね」
「今日はついでに貴方に会いに来たものですから」
「それでも僕はついでなのか」
茶化すように言ったものの、正直僕は居心地が悪かった。ここは早目に会話を切り上げさせてもらうか。━━と思ったら。
「それではごきげんよう」
「はい?」
呆気に取られる僕を尻目に沙更ちゃんは去って行ってしまった。
「ほんっとーに何しに来たんだ!?」
愛美と二人して手のひらの上で転がされてる気がした。
「結局何だったんだ?」
「それをわたしに訊かれても、ねえ?」
訳が分からないまま、お昼の定位置であるおんぼろベンチで食事を取りながら首を捻る。いつも何を考えているか分からない彼女だが、今日は更に訳が分からなかった。
「おい、愛美。何か心当たりは無いのか」
「あんな凄い子わたしには飼い慣らせません」
「じゃペットの愛美さん。心当たりはございませんか?」
「やーめーてー。あれ?」
頭を抱えてぶんぶん振り回していた愛美が何かを見付けた。その視線を辿ると━━お、あそこに居る二人は。
「優季ちゃんと鷹子かな」
「だねー」
愛美が大きく手を降ると、鷹子が軽く手を振って返してきた。ついでに僕も手を振ったが、今度はアカンベーをされてしまった。おのれ鷹子め!かえって可愛いではないか。
「あはは、鷹子ちゃん可愛いねー。たぶん自覚してないと思うけど」
「人の心を読むな」
あ、優季ちゃんが笑いを堪えてる。彼女は木の根元で両足を伸ばしているのに対し、鷹子は女の子座りが意外に似合う。胡座でもかいて弁当をかっこむかと━━いや、何故かそっちの方が想像がつかないな。
「こうして見る分には美少女コンビに見えなくもないが」
「ほほー?真一さんはどちらがお好みで?」
「何かなそのジト目は」
「べっつに~~。ただ珍しいかなって」
何が、とは言わない。愛美なら知っているからだ。
「さ、早く食べてのんびりしようか」
あまり他人に踏み込むのは主義に反する。