お互いの真実━━優季…………………………あれ?
「━━ボクの本当の姿なんてこんなものなんです。皆さん、何だか巻き込んでしまってすみませんでした」
そう言って鷹子は深く頭を下げた。
━━そんなことは無い。と言うのは簡単だろうが、言えるはずがなかった。それに……。
「話してくれてありがとう、鷹子ちゃん。━━次はあたしの話を聞いてくれる?」
「うん」
「と、その前に」
やおら優季ちゃんは椅子を立ち、入り口の方へ。そして扉の鍵を閉めて戻ってきた。━━と、思ったら、ベッドの少し前で止まっ……て?
「ゆ、優季?何をして━━」
急に優季ちゃんはスカートに両手を突っ込んでごそごそし始めた。
「ちょっとみんなに見てもらいたい物があるの。別にストリップとかがしたい訳じゃないから」
まあそれなら━━って、そう言いつつも優季ちゃんてば自分の白タイツを下げ始めたよ!?
「いやいやそれは色々マズイでしょ!?」
「そんな事言って、先輩はすでにあたしの色々を見ているじゃないですか」
「その発言はさらにヤバイ!━━うおっ!」
愛美と鷹子が凄い目で僕を見た!
「事故!基本事故だから!」
「基本?……センパイ。優季に何を━━」
ああっ、せっかく大人しモードに成り掛けた鷹子がまたバーサーカーモードに!
「まあそれは半分冗談ですけど。━━でも、ちゃんと見ててくださいね?」
そしてさらに優季ちゃんは白タイツを膝まで下げたまま、次は自分のスカートをつまんでそろそろと上げだした。
「━━━━!?」
僕は本気で止めようと思った。━━でも、その前に。
見えてしまった。そして、この場の優季ちゃん以外の三人が固まった。
もはや完全に下着が見えている状態のはずだった。でも、そんなものは僕の目には入ってなかった。
見えたのは━━傷。一目で酷い怪我の痕と分かる、左の太ももの外側辺りにある傷痕。
その瞬間に僕は自分自身を殴り倒したかった。……というか、一瞬本当にやりかけて思い止まった。
そんな事をしてもらうために優季ちゃんは見せたんじゃ無いはずだから。
……それでも。僕は自分の馬鹿さ加減に吐き気がしそうだった。
鷹子が騒ぎを起こす度に『後から』駆けてきた優季ちゃん。ぱたぱたとした少し奇妙な走り方。『元』陸上部の先輩。━━鷹子以上に分かり易くヒントはあったはずだった。
「あの……先輩?そんな顔をしなくとも……先輩!?」
傷━━怪我━━血━━それから━━。
僕は無意識に立ち上がろうとしたのだろうか。視界がぐらりと傾いで体が支えられなくなる。咄嗟に駆け寄ろうとしたのか、優季ちゃんの顔が近づいたように見えた。
「ふぎゃ!」
「痛っ!」
イカン、倒れてしまったか?……でも何だか地面が柔らかい。ついでに顔も。
「くっ……」
しっかりしろ僕!あれは幻影のはずだ!
なんとかしっかり気を持って両手で体を起こすと、何故か目の前には薄いグリーンのストライプが。そして視線をちょっと伸ばした先には下ろされた白タイツが。
「……これはいけない」
僕はまず、白タイツに手を伸ばしちゃんと腰まで上げる。そして捲れたスカートも下ろしてササッとシワを取る。
最後に後ろへ回り込んで脇に手を入れ優季ちゃんを立たせ、軽くあちこちのホコリを叩いて完了だ。
「大丈夫か?優季ちゃん」
「……鼻が潰れるかと思いました。先輩は?」
「目の前にクッションがあったから無事だった」
「それ、あたしのお尻です」
「うむ、緑だけにまさしく安全地帯とは良く言ったものだ。わっはっ……」
「━━少しは」
「は?」
「K Y H!!」
「ごぶっ!」
今度は強烈なボディブローだった。




