出どころは?
次辺りでそろそろ……?
鷹子がおかしい。
いや、真面目な性格の彼女をおちょくる僕が(笑)普段は悪いのだが……。
昼休み。僕と愛美、優季ちゃんと鷹子との四人でこうしてお昼を食べるのも珍しくなくなった気がする(そもそも僕に昼に誘うような友人は居ないし)。
そんな中。
じ~~~~っ。
鷹子が僕をなんだか複雑な表情で見つめていた。━━かと思えば今度は優季ちゃんをじ~~っと見て不意に顔を赤らめたり考え込んだりと忙しい。
「……鷹子ちゃんがおかしいです」
「え?ボク?」
とうとう優季ちゃんから同様の台詞が出てしまった。
「あはは、そうだね~~。さっきから一人百面相していてわたしも面白いなと思ってた」
「鷹子。愛美に言われるようではヤバイと思うぞ?」
「真一がひどいのはいつも通りだねー」
「ほっとけ!」
「先輩たちの漫才はともかく、本当にどうしたの?鷹子ちゃん」
優季ちゃんは食べる手を止めて(もちろんあの親父さんの手作り弁当。旨そうである)聞く姿勢になった。
「え?あ、いやそのね、なんと言うかええと」
鷹子、しどろもどろ。けっこう面白いがこれじゃ話が進まないな。
「ぶっちゃけ僕と優季ちゃんばかりを気にしてるようなんだが……どうかしたのか?」
「ぎくり」
「わー、『ぎくり』とかホントに言葉にする人━━むぐむぐ!」
横から混ぜっ返してくる愛美の口に玉子焼きをぶちこんで黙らせる。
「やかましいからそれでも食ってろ」
「って、それあたしの玉子焼きですよ先輩!」
「もぐもぐ……。わ、優季ちゃんのお弁当すごく美味しい!」
「だろ?━━あ、コラ!一番でかい唐揚げを持っていくな!交換レートがおかしいだろ!」
「お父さんの玉子焼きですからこれでも足りないです」
「くっ、なんと説得力のある台詞だ」
「あの!」
優季ちゃんとバトルを繰り広げていたら、鷹子が大声で割り込んできた。
「二人とも、ちゃんと鷹子ちゃんの話を聞こうよ~~」
「「はい」」
まさか愛美に諭される日が来ようとは。
「あのあのあの、優季とセンパイって……つ、つ、付き合っているんですか!?」
「「はい?」」
鷹子の放った爆弾に、優季ちゃんと思わず再度ハモった。
「……優季ちゃん」
「はい」
「優季ちゃんって、僕と付き合っているのかい?」
「いえ……それをあたしに聞かれても。先輩こそあたしと付き合っているんですか」
「いやいやそれを僕に聞かれてもねぇ」
「ですよねー」
「「あははははっ」」
「これで付き合っていないとか……」
「逆に不思議だよね~~。ね、鷹子ちゃん」
「いや待て鷹子。どこからそんな話が出てきた!?」
多少は仲良しにはなった……気はするが。
「その、この前の帰りに優季ちゃんがちょっとした用事で遅れていて、ボクが校門で待っていたらなんだか妙な女の子が陰から覗いていて。可愛い制服の、こう、髪を両側で縛ってて、なぜかサングラスを掛けて━━」
「━━ん?」
何か嫌な予感が。
「それで声を掛けたら『ジャマしないでください。ストーキングの最中ですから』とか言い出して」
「なんぢゃそりゃ」
「思わず『誰の?』って聞いたら優季ちゃんの名前が出てきて。それでもう少し話を聞いたら優季ちゃんの後輩だって言っていました。亜子さんって優季ちゃんの知り合いなの?」
……何やってんだあの突貫娘は。
「あ~~ごめんね鷹子ちゃん。一応は知り合い……という事にしといてね」
「?……よく分からないけど分かった。それでそうしたら『最近私の優季センパイに男の影が見え隠れするから気になって』なんて言うから」
「……あんにゃろ」
「え、優季?今なんて?」
「あ、ううん。何でもないよ、鷹子ちゃん」
ひそひそ……(こらこら優季ちゃんてば、猫被るのを忘れてますよ?)。
ひそひそ……(何ですか猫って!……そりゃ被ってますけど)。
「???」
「とにかく!その子の言う事は気にしなくていいから。ね、鷹子ちゃん」
「そうだぞ、単に付き合わされただけ━━ぐえ!」
「変輩。話をややこしくしないでください」
※ネクタイで首を絞めるのは危険ですから止めましょう。
「はあ……これで本当に……」
「付き合ってはいないから面白いよね~~」
鷹子と愛美が見上げた空は、今日も快晴だった。




