これヤバくね?
ごそごそ……。
「そう言えば、今日は愛美先輩は一緒じゃないんですね」
「そりゃまあ四六時中引っ付いてる訳でもないからね」
ごそごそごそ……。
「そう言うそっちこそ、鷹子が居ないのは珍しくないか?休みの日でも一緒に行動してそうなんだが」
「あー、鷹子ちゃんは今日は用事があって来られませんでした。本当は誘いたかったんですが」
ごそごそごそごそ……。
ひそひそ……(デートかしら?)。
ひそひそひそ……(学生さんかな?微笑ましいわね)。
「……………………」
ごそごそごそごそ……ぴたり。
「先輩?」
「あのう、優季サン?さすがに肩身が狭いのですが、まだでしょうか?」
「(くすっ)お待たせしました。完了です」
試着室の中から声がして、ようやくカーテンが開かれた。
「ほ~~、これはこれは」
優季ちゃんは、さっきまでの格好から一転して薄いブルーのワンピースに着替えていた。そこへさらに麦わら帽子をちょこんと被り、ふわりと回って見せる。
袖のほとんど無い服から綺麗な二の腕が出ているのがなかなかドキリとさせられる。
「……可愛いな」
「ホントですか?」
どうして少し自信無さげなんだろう?
「なんか悔しいが、それ以外に言いようがないぞ」
すると優季ちゃんは自分の姿を見下ろし、鏡を覗きこみ、ようやく納得したのか。
「……ありがとうございます」
初めて見る笑顔だった。
(━━ああ、このコは━━)
僕はやっと気付いた。いつもニコニコ微笑んでいる印象があるのに、感じていた『ずれ』の正体に。彼女はいつも、本当に笑ってはいなかったんだ。
「ん?」
だとして。これでもたぶん全開の笑顔ではないとは思うが、それでも僕の前で笑ってくれた。
……これは、ちょっとヤバくないか?
「先輩?どうしました?あ、もしかしてあたしが意外に可愛いからって照れてますか?」
「意外でもないから困ってる」
「…………え?」
優季ちゃんのからかうような表情が思案顔に変わり、その次には見る間に赤くなっていった。
僕からの思わぬ反撃に、どう返せばいいのか言葉に詰まってしまったようだ。かといってこっちもいつものようにぽんぽんと軽口を叩く余裕が無い。
……待て待て何だこのラブコメみたいな展開は?━━と、思ってたら。
「あ━━っ、優季センパイ!」
「━━げ」
今この優季さん『げ』とか言ったよ!ってか今の誰?
慌てて振り向けば、そこには見知らぬ少女が一人。
「やっぱり優季センパイだ!わー、すんごいおひさです!」
ゲンナリした顔になってしまった優季ちゃんの手をぶんぶん振り回す。すげーパワフルな子だ。
「もしかしてデートですか?」
「あ、いや僕は━━」
「あははそんなわけないかー。『あの』優季センパイがこんなショボい男の人と付き合うとか無いですよねー」
「そうだけど、ド直球だなお前!」
「……亜子」
「はい!何ですか?」
「とりあえず着替えるからそこで待ってて」
「は~~い」
カーテンが引かれて優季ちゃんは再び試着室へ。━━え?その間僕はこの謎のアコとやらの相手しなきゃならんのか?
「で、そこのちんまいけど優季ちゃんよりちょっとは背が高くてツインテールでそこそこ可愛いけど如何にも歯に衣着せぬ物言いをしそうな彼女の後輩らしいアコとかいう娘っコ」
「わ~~メンドイから一気にキャラ紹介してしまおう的な見事な説明ですねショボい男さん」
「ちょい役に酷い言われようだ」
「いいんですか?そんな事を言って。わたし、優季センパイの事なら好きな食べ物から伸長及びスリーサイズまで良く知ってますよ?」
「何だと!?……って、その手には乗るか。「久し振り」とか言ってたのにサイズも何も無いだろう」
「今のサイズも判りますよ?」
「それを先に言え!」
「上からなな……」
「こらあ!!」
カーテンをばっ!と開いて優季ちゃんが━━なぬ?
「あ、ストライプ好きなのも変わってないんですね、優季センパイ」
「あ」
自分の姿を見て、僕を見て。
「フッ……心配ない。その柄なら前にも見━━」
『死にっさらせ!!』
スニーカーが顔面に飛んできた。
くどいようですが、この話は元々エ○ゲ用のシナリオです(笑)。
ラッキースケベ万歳!
……まあR指定にならないように気を付けます(; ̄ー ̄A。




