波乱の飲み会が終わった
「あはは! ショーマさん面白いぃ~」
セシリーとカレンのところに来てから、俺達は他愛のない話をしながら盛り上がり、途中でクレイやカイト、アース達の乱入もあったけど、それほど長い時間は絡まれず、今は落ち着くところに落ち着いたのか、おっさんグループとアースとミリア、カイトとネリーさんと言った感じで、固まって入るけど、話は別々に盛り上がっている。
そんな感じで高級店に似つかわしくないどんちゃん騒ぎは進み、お酒もどんどんと進んだ。
そして案の定、セシリーは酔っぱらってしまっている。
ちなみに俺は今何か面白い事をした訳でも言った訳でもない。
ただ、普通に話していただけだ。
セシリーはどうやらだいぶ酔っているみたいだな。
「セシリー大丈夫か? だいぶ酔っているみたいだけど」
「大丈夫ですよぉ~? まだまだ飲めますっ!!」
なんだろう、セシリーはもう手遅れな気がするのは……。
何か口調がいつもと違うし……。
「でも、飲み過ぎるとよくないぞ?」
「それは仕方ないだろう、ショーマがなかなか来ないからセシリーが寂しがって酒を煽ってたんだぞ?」
「なっ!?」
「そうですよ? ショーマさんが……って何を言ってるんですか、カレンさん!!」
突然のカレンの攻撃に動揺しているとセシリーがノリツッコミなのか、それとも本心が少し出たのか分からない言葉が出て、俺はさらに動揺する。
カレンはしてやったりみたいな顔をしているし、セシリーは怒っているのか酔っているのか分からないけど、顔を赤くしてカレンに問い詰めている。
いや、寂しがってくれてたなら、それはそれで俺は嬉しいけど……。
「ほら、そこまで怒るって事はセシリーもやっぱりそう思ってたんだろ?」
「違います! カレンは何を言ってるんですかぁ!?」
ヤバイ、これ以上騒ぎが大きくなると他のメンバーが絡んでくる。
「おいカレン、やめとけよ。ここはそんな騒ぐ場所じゃないだろ?」
「そうだな。でも、そうやって、いつも躱しているからセシリーがこうやって寂しがると思うが?」
こいつ……反省した風に見せて攻撃をしかけてきやがった。
しかも、俺としても告白はSランクになってからと決めて、セシリーといい雰囲気になっても気持ちを伝えていないから否定できないところだ。
くっ……アース級にやっかいな奴だ。
「えっ、なになにこの流れ? ショーマ君、この場で言っちゃう訳? それは良くないよ?」
「うわっ! ルークス!?」
俺がカレンの言葉に動揺してセシリーがカレンに抗議を続けている間に、後ろから気配を消して近づいてきたルークスが耳打ちしてくる。
また厄介な奴が!?
「そんな訳ある訳ないだろ! 酔っている時にしねぇよ!」
「じゃあ酔ってない時にすると」
くっ……ルークスの奴、言葉尻をあげ足にとってからかってきやがる。
「おい、ショーマ!! ついにか!?」
なぜ聞こえたか分からないけど、カイトまで話に加わってきた。
今はセシリーの気がカレンに行ってるから気付いていないけど、これはヤバイ!
早い事、収拾させないと!
「カイト、落ち着け! この場でそんな事――」
「おいショーマ! ついにか!?」
カイトを止めようとしているとクレイまで話に入ってくる。
しかも、カイトと同じ言葉で。
「まさか、やっぱりそうなのか……?」
さらにはゼクスまで、何か妙に落ち着きながらこの話に交じる。
こんな時だけ、冷静になって考えるな!
「ショーマ君、決心したのはいいけど、この場でっていうのは頂けないかな?」
「アース君の言う通りです! 女の子って言うのは――」
そして、アースとミリアまで加わり、ミリアに至っては説教まで始めようとする。
あ~~!!!! もう~~!!!
「みんな落ち着けーーっ!!」
ムーン・ライトの店内に俺の声が響いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「今日は楽しかったですねぇ!」
「……そうだな」
隣を歩くセシリーの言葉に俺は複雑な感情で言葉を返す。
楽しかったのは楽しかったけど、俺からすればいろいろヒヤヒヤする場面もあったからだ。
あの後、飲み会は時間も遅かった為、マスターとセバスが俺に助け舟を出すような感じで「そろそろお時間ですので……」と言って、カオスになりかけたところに幕を下ろしてくれた。
そうしてネリーさんがカイトを止め、ルークスがクレイとゼクスを、カレンはやり過ぎて悪いと思ったのか、アースとミリアを制し、会計を終わらせ、そのままのグループメンバーで現地解散となった。
なので、俺は今セシリーと二人城へと向かっている。
幸い、夜も遅いという事で人がいないというのが救いか。
でも、こうやって酔ったセシリーと二人夜道を歩くっていうのは前の事を思い出すな。
「私ショーマさんと出会ってから楽しい事ばかりです。以前は、こうやっていろんな人と気軽に話したりお酒飲んだりするなんて考えられませんでした。感謝してます」
そう言ってセシリーは頭を下げてくる。
「いやいや、俺は何もしてないよ。」
「ふふ、ショーマさんならそう言うと思ってました。でも、私本当にショーマさんと出会ってから今まで見た事ない景色を見せてもらってます。これからもよろしくお願いしますね?」
そう言ってセシリーは顔を覗き込んでくる。
うっ、その可愛さ反則だろ。
「あぁ、これからもビシバシといくからな!」
「はいっ!」
俺は照れ隠しで話を逸らした。
そうして、セシリーと他愛のない話をしながら、城へと向かって歩き『早くSランクになって想いを伝えよう』と思うのだった。
飲み会的閑話は少し長くなりましたが、これで終わりです。
次話より、ストーリーが再開します。




