混沌を極める飲み会
「あはは、ショーマ君楽しいね!!」
飲み会が始まって一時間程。最初からペースが速かった事もあり、みんな良い感じ……というか、良い感じを少し通り過ぎたくらいに酔っぱらってきた。
おっさんグーループはクレイとゼクスが言い合ったり、時には昔を懐かしむように静かに語ったりと喜怒哀楽の激しい感じで、それをまとめるようにルークスが二人の間に入っている。
おっさん二人の間に入るとはあいつは本当いったい何者だろうか?
俺はというと、最初はセシリーと話していたけど、途中でカレンがおちょくって来たりして席が入り乱れてセシリーとは離れてしまった。
そして、今はなぜかミリアとアースの間に座っている。
「……いや、俺はおまえとミリアに挟まれて辛いって思っている」
「またまたそんな冗談を言って!! やっぱショーマ君は面白いね! ね、ミリア?」
「アース君の言う通りです! ショーマさんは酔っても面白いですね!」
「酔ってないわ!!」
そう、俺は飲んでも飲んでも、魔王としての体質なのかただ単に酒に強いのかはわからないが、みんなほど酔わないでいた。
そんな中、俺は今アースとミリアの間で二人の世界に入ったかと思えば、こうやって不意に俺に絡んでくる二人を相手している。
どうせなら二人で飲めよと思うが、俺が席を立とうとすると止められる。
なんなんだこいつらは……。
「はは! ショーマ君、そんなに僕らを笑わせようと頑張らなくて良いよ! ね、ミリア?」
「そうだよ! ショーマ君が一番笑わせないといけないのはセシリーちゃんでしょ? ね、アース君?」
そう言ってアースとミリアは「「ねぇ~!」」と声を合わせていちゃついている。
こいつらは本当に……。
「ショーマァァァアアア!!」
すると、突然俺を呼ぶ大きな声が聞こえる。
「ショーマ君、お呼びだよ。 行ってあげなよ」
その叫び声を聞いて、アースが俺に声の主の元へ行って来いと言う。
俺は心の中で『今までここに引き留めていたのは誰だ!』と叫びながらも、ここでいらない事を言えば離れるタイミングを失ってしまうと思い、文句の代わりに大きなため息を一つついて、席を立った。
すると、後ろで
「ショーマ君、僕たちといたかったみたいだね。可哀そうに。ね、ミリア」
「そうだね、アース君」
と言ってるバカップルがいたが、全力で否定しておこう。
俺はもっと早く席を移動したかった!!
「どうしたんだ、カイト」
アースとミリアの間の席を立った俺はその声の主、カイトの隣へと座った。
もちろん俺と反対側にはネリーさんがいる。
「ショーマ聞いてくれ!!」
カイトは俺の肩を掴む。
「だから、聞くつもりで来たんだろ。どうしたんだ?」
俺は肩を掴むカイトの手をどけながら言う。
これは酔っているのか、それとも混乱しているのか。
「こ、こん、こん」
「こん、こん? キツネか?」
この世界にキツネがいるかどうかは分からないけど。
いや、そもそもキツネじゃないだろうし。
「キツネじゃない!! 今度、ネリーの両親に会いに行くんだ!! 俺はどうすればいい!?」
「……はぁ?」
予想外の言葉に俺はそばにネリーさんがいるのに素の反応をしてしまう。
「あっ、そうだよな、まずいつ会いに行くかというところから説明しないと――」
「いやいや、ちょっと待てカイト」
問題はそこじゃないだろ。
ネリーさんも笑ってるぞ。
「何から説明すればいい!?」
いや、だからそういう問題じゃないだろ、
カイトの奴、テンパってるのと酔ってるのとでめちゃくちゃになってるな。
「いや、説明はいい。俺は本気になったカイトが何をしても、もう驚かないと決めていた。例え、ネリーさんの両親に挨拶に行くという話になっててもだ」
アースとミリアの生徒になったカイトが何をしようが俺はもう驚かない。
例えネリーさんの両親に挨拶に行くと言われてもだ。
……ちょっと予想外だったし実は驚いたけど。。
いや、それだけじゃない。
キスしようが、それ以上しようが、結婚しようが俺は羨ましくは思っても、もう驚きはしない。
なぜなら、カイトはそれだけのポテンシャルを秘めているからだ。
あのアースとミリアの話を聞き続け、それを行動に移す能力……カイトはもう俺の手の届かない存在だ。
だから、俺がとやかく言う事はない。
そんな俺がカイトにいう事はただ一つ。
「カイト、おまえは冒険者としても男としてもSランクだ。ネリーさんの両親だろうが、ドラゴンが相手だろうがおまえなら大丈夫だ! 自分を信じろ!! ありのままの自分で戦うんだ!!」
「ショーマ……うぉおおお!! 俺はやる! 必ず勝ってくる!!」
「あぁ!! やってこい!!」
そう言って俺は抱きついてきたカイトと抱擁を交わす。
熱い友情だ。
……って俺も酔ってるのだろうか?
すると、カイトは「ショーマ! 酒持ってくるぞ!! ネリーも持ってくるから待っててくれ!!」と言って自ら酒を取りに行こうとして、せバスになだめられカウンターで待っている。
あいつ、酔うと本当訳が分からんな。
「ショーマさん、ありがとうございます」
そんな事を思っているとネリーさんが声をかけてきた。




