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記憶のかけら

 なんだここは……?

 見るからに一面真っ白な空間で白いローブを着た老人と青年が向かい合っている。


「君は元の世界で死んだ」


 すると、白いローブの老人は青年に向かって声をかける。



「そっか、まぁあのスピードのトラックに轢かれたらそうなるか」


「残念ながらそうだ」


「それで俺はこれからどうなるんだ? 天国に行けるのか? それとも地獄か?」



 会話をしている青年の顔がだんだんとはっきりしてくる。

 あれは……。



「影山翔真、そなたは自分の命を顧みず、幼い子供の命を助けた。その行いは誰にでもできる事ではない。そんなそなたには、もう一度生きるチャンスを与えたいと思う」


「ん? 生き返らせてくれるのか?」


「いや、それは出来ない」


「じゃあ転生とか?」



 そうだ、俺は子供がトラックに轢かれそうになったところを助けて代わりに轢かれて死んだんだった。

 それで、見たまんま神様っぽい人に会ったんだっけ。


 それにしても神様に向かってこの言葉遣いは俺らしいというかなんというか……。

 でも、なんでこの辺の記憶がなかったんだ?



「簡単に言えばそうだ」


「マジでか!? まさかラノベのような展開が来るとは!! それでチート的なものとかも?」


「あぁ、そのつもりだ」


「おぉ!! すげぇ!」


「すまないが時間がない。能力はもちろんの事、記憶の継承も時間が許せる限り行う。その代わりに優しい心を持つそなたに一つ頼みたい事がある」


「えっ? 頼みたい事」


「あぁ、世界の危機を救ってほしい」


「えぇ!? 世界の危機って!?」



 なんかそう言えばこんなやり取りもした気がする……でも、なんで……。

 くそ! また景色と声が霞んでいく!?


「それは――……」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「はぁ……はぁ……さっきのは夢……?」


 俺は霞んでいく景色に近づこうとしたら次の瞬間、視界が切り替わった。

 どうやら俺はどこかに寝かされていて起き上がったみたいだ。

 目に映る景色は煌びやかな装飾のある部屋で宿屋ではないのは分かる。


 それより、俺は確か……そうだ! セシリー、セシリーは!?


 洞窟の中で、魔法陣から出てくる魔物にピンチになったところで気を失ったと思い出した俺は状況を把握しようと辺りを見回す。


「ん……あっ、ショーマさん大丈夫ですか!?」


 俺の寝ているベッドの横の椅子に座っていたセシリーが身を乗り出して来たところで、目が合った。


「あ、あぁ、大丈夫。セシリーこそ大丈夫なのか? それにここはいったい……?」


「私は大丈夫です。ここはセイクピアの城で、ショーマさんは一週間寝たきりだったんですよ?」


「マジで!?」



 そんなに長い事、気を失っていたのか!?



「悪い、そんな長い事寝てたとは……」


「いえ、大丈夫です。それより身体は大丈夫ですか?私を庇った為に……」



 そう言えば雷魔法を喰らったな。

 でも、手に力を入れたりしてみる限り異常はないし、もう体の方は大丈夫そうだ。


「あぁ、大丈夫そうだ。それよりあの後、どうなったんだ? 魔法陣は?」


「そうですか、目を覚まさないので心配していましたが……大丈夫そうで良かったです。ショーマさんが気を失った後、カイトさん、アースさん、カレンさんが私を守りながら魔法陣から出てくる魔物を倒して行きました。そして、その間にミリアちゃんが魔法陣を機能しないように破壊してくれました。それで、私はカレンさんに、ショーマさんはカイトさんに運ばれて洞窟から出て帰ってきた訳です」



 そうか、カイトにはまた礼を言わないとな。

 でも、運んでくれたのがカイトで良かった。

 アースには絶対借りを作りたくないし。


「そうか、もう一つの魔法陣は? あの後出なかったのか? それと怪しい人影みたいなのは?」


 俺の下に現れた魔法陣。あの時は消えたけど、また出たりしなかったんだろうか?

 それにあの人影みたいなのは……。


「もう一つの魔法陣? 人影?」


 セシリーは俺の言葉に首を傾げる。

 そうか、セシリーは気づいてなかったか。


「いや、なんでもない。たぶん俺の見間違いだ。忘れてくれ」


 セシリーにあまり余計な心配かけたくないしな。

 あとでこっそりカレンにでも聞いてみよう。

 セシリーはあんまり納得していないみたいだけど、俺は話を変えて気を失っている間の事を聞いた。


 それにしても、あの人影、魔法陣はいったい……?

 それに、俺が転生する時に神と会話した内容、世界の危機とはいったい?

 なぜ神は時間がないと言っていたのか……?


 何か普通ではいられなくなるような気がしながら、俺はセシリーと話を続けた。


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