戦いの決着と人影
「くっ!」
このままでは俺の攻撃が先に当たるより前にケルベロスが攻撃してくるかもしれない。
でも、今のチャンスを逃せば次は通用しないかもしれない。
そう思った俺は、そのままケルベロスへと駆ける。
「っ!?」
しかし、真ん中の顔が半分こっちに向いたところで、予想外の事に驚く。
あろうことか、真ん中の顔は危険を察知して警戒していたのか、雷魔法を放つ態勢に入っており、口を開けながらこっちを向こうとしていたのだ。
くそ、間に合わない!!
「ホーリー・ランス!!」
その時、詠唱が聞こえたかと思うと、光の矢が真ん中の顔を捉える。
ダメージこそそれほどなさそうだけど、魔法が当たった事により、動きを止めた。
「セシリー!?」
魔法が放たれてきた方を見ると、セシリーが膝に手をつきながら肩で息をしながら立っている。
「ショーマさん、今です!!」
体力は限界のはずなのに、立つのだってしんどいはずなのに、それなのに魔法を放って……くっ、セシリーがここまでして作ってくれたチャンス、そしてカレンが囮になって作ってくれたチャンス……。
「ここで決めなくちゃ男じゃねぇぇぇえええええ!!!!」
俺はそのままケロべロスへ肉薄すると、グラムを振り抜いた。
そして、俺は振り返る。
「グォォ……」
すると、グラムの斬撃によって袈裟懸けに切り裂かれたケルベロスの身体は、うめき声と一緒にゆっくりと崩れ落ちた。
「やったな」
不意に肩を叩かれ振り向くと、そこにはカレンがいた。
「あぁ、まぁな。それにしても無茶しやがって」
「はは! Sランク冒険者にそんな口を利くってのはやはりドラゴンテイマーは別格だな」
「うるせぇよ、俺の周りにはSランク冒険者が二人いるから慣れたんだ」
「何? そうか、あの二人とも知り合いなんだな」
「そうだ、それにこの森に一緒に来ているからな」
「そうか、ならば会ったら挨拶しないとな」
「ったく、真面目な奴だな。でも、それより今は魔法陣をなんとかしないとな」
「そうだな、私が調べてみよう。その間に彼女の傍にいてやれ」
「だ、誰が彼女だ!?」
「ん? 別にそういった意味で言った訳じゃないが?」
そう言ってカレンはニヤリとする。
くっ、こいつは女なのに本当に食えん奴だ。
「じゃあちゃんと調べろよ!」
俺はそう言ってセシリーの方へ向き直る。
すると、視界の端にカレンも魔法陣の方へと向かって行く姿が見えた。
そして、俺はセシリーの方へと歩き出す。
「ん?」
すると、何か音が聞こえた気がして俺はそっちを向く。
「っ!?」
俺の視界に入ったのは、さっき崩れ落ちたケルベロスの真ん中の顔が、セシリーの方へと向いており、最後のあがきとばかりに口から雷魔法を放とうとしているところだった。
「セシリー危ない!!」
それに気付いた俺はセシリーを庇うべく、飛び込んでその間に入る。
「ぐあっ!!!!」
「ショーマさん!?」
飛び込んだ結果、間一髪のところで、俺は間に合いセシリーとケロべロスの間に入る事が出来た。
でも、そのかわり雷魔法を直撃し、電気が走る衝撃が身体を襲う。
「まだ、くたばってなかったのか!!」
異変に気付いたカレンは、こちらに引き返してケルベロスにとどめをさしているのか、声と音が聞こえる。
そして、俺の視界にはこちらへ向かってゆっくり歩いてくるセシリーの姿を捉えた。
良かった……セシリーは無事みたいだ。
「えっ!?」
「まさか!?」
安心したのも束の間、セシリーとカレンの驚いた声が聞こえる。
そして、雷魔法の衝撃で動きにくい身体に無理矢理命令を出し、セシリーの視線の先を見ると魔法陣が光り出していた。
まさか、また魔物が!?
「ぐぁぁぁあああああ!!!!」
次の瞬間、俺の身体を紫の光が覆い、全身に痛みが走る。
その痛みは、体の中をえぐられるような感じで耐え難いものだ。
「ショーマさん!?」
「ショーマ!?」
セシリーとカレンが俺の異変に気づき、俺の名前を呼ぶ。
いったいなにが……。
痛みに耐えながら何とか目を開け辺りを見ると、俺の下に魔法陣が出現していた。
その魔法陣を見つけるとすぐに魔法陣は消え、身体を襲う痛みは消えた。
しかし、身体には全然力が入らず、意識が遠のこうとしている。
なぜ、こんなところに魔法陣が……?
俺は遠のこうとする意識と戦いながら、何が起きているのか辺りを見渡す。
「……人……影……?」
すると、歪む視界の中に何やら人影のようなものを見つけた。
あれは……?
「来るぞ!!」
その時、カレンが叫んだ。すると次の瞬間、ケルベロスのような強そうな魔物はいないが、魔法陣から多くの魔物が出てきた。
そんな中、俺の目の前ではセシリーが辛そうにしながらも、俺の傍に立ちを庇うように応戦しようしていて、クロも傍で俺を守るように飛んでいる。
くそ、こんな時に俺の身体は……。
俺は身体に命令を出すけど、全然いう事を聞いてくれない。
それどころか逆に俺の意識を奪おうとしてくる。
「ファイヤー・ウォール!!」
「ショーマ君!!」
「ショーマ!!」
その時、聞きなれた声が聞こえ、炎の壁が魔法陣を囲い、声の聞こえた方を向くと、ミリアとアースとカイトの姿があった。
あいつら……ここに気付いたのか……。
そして、その姿に安心した俺は意識を失った。




