洞窟の奥にあったもの
本日、四話目!
「やれやれ、見た目と違って気の強いお嬢様だ」
「カレンさんだってそうでしょ?」
「はは、そうだったな」
俺とセシリーのやりとりを見ていたカレンはセシリーにそうやって言葉をかけると、負けずにセシリーが言い返す。
もしかしたら、セシリーは同じ王女と皇女なのに、ここまで戦えるカレンに対抗心を燃やしたのかもしれないな、意外と負けず嫌いだし。
「ショーマさん?」
「あっ、はい!」
「何か言いたい事、あるんですか?」
「いや、ありません!」
やべぇ、セシリーの勘も研ぎ澄まされている!?
「なら、良いですけど……でも、今の私はシシリーですよ? そこは気をつけてください」
「……はい」
俺は返す言葉もなく、大人しく返事する。
なんかカレンがいらん事言ったのに巻き込まれた気がする。
「ふふ、話は終わったようだな」
おまえがいらん事言うから話が長引いたんだ!
「……行くぞ」
「何か言いたいようだな」
「別に」
言ったらいろいろややこしくなるだけだ。
「じゃあ、セ、いや、シシリー頼む」
「分かりました」
セシリーは返事すると、目を閉じ集中し魔力を集める。
ここまでじっくりと魔力を集めるって事はよほどの魔法なんだろう。
大丈夫だろうか?
「……ホーリー・レイン!!」
俺が心配していると、魔力を集め終えたセシリーは目を開き、魔法を放つ。
すると、セシリーの前方から無数の光の線が水平に洞窟の空間の中に飛んで行く。
その光景はまさに水平に降りそそぐ光の雨をいった感じだ。
そして、その名の通り光の雨と呼ぶべき魔法は空間の中の魔物に当たり、次々に魔物の絶叫が洞窟内に木霊する。
それからしばらくして、その光の雨が消える頃には魔物の声も聞こえなくなった。
「シシリー大丈夫か!?」
「はぁ……はぁ……大丈夫です……」
元々体力を消耗しているところへ、あの威力の魔法を使ったんだ、セシリーの体力は限界なのだろう。
魔法を放った後、セシリーはその場へ座り込んでしまった。
「そうか。ありがとう、シシリー。おかげで魔物は全滅だ、後は俺とカレンに任せて休んでくれ」
俺はセシリーに感謝の言葉を口にして休むように言う。
本当は心配だけどあんまり心配し過ぎるとせっかくのセシリー頑張りを否定する事になるしな。
ここはセシリーの頑張ってくれた結果に感謝するのが冒険者の先輩としては正しいだろう。
「はい……ちょっと休ませてもらいます。あとはお願いします」
セシリーは俺の言葉に自分も役に立てたと思えたのか、清々しい感じで微笑むと後は任せると言ってきた。
よし、セシリーがここまでやってくれたんだ、後は頑張らないとな。
でも、セシリーをこのままここに置いて行く訳には行かない。
魔物の発生源はここみたいだけど、逆に外から洞窟に戻ってくるという可能性もある。
となると、せめてこの先の空間内任であの光る場所から少し離れたところで休んでてもらうのが良いだろうけど……どうやってセシリーを運ぶんだ!?
おんぶ!? お姫様抱っこ!?
俺の脳裏に以前、セシリーを城まで運んだ時の記憶が蘇り、あの時の感触も蘇って動揺して思考がまとまらない。
どうする……どうするんだ俺!?
「ここは外から魔物が戻ってくると危険だ。この先のあの光から離れたところで休むといい」
俺が勝手に動揺し、あたふたしていると、カレンがセシリーに声をかけセシリーを抱きかかえた。
所謂、お姫様抱っこだ。
あっ、そうだ、カレンがいたんだった。
「そ、そんな悪いですよ!!」
「気にするな。頑張ってくれたんだ。それともショーマにしてもらう方がいいか?」
カレンはニヤリとしながらセシリーと俺を見てくる。
こいつ……やっぱクセ者だ!
「い、いや、それは……お願いします……」
カレンの言葉にセシリーは顔を赤くしながら俯いて頷く。
「……さぁ、早く行くぞ!」
これ以上のカレンの暴走を阻止すべく、俺は先を促した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「これは初めて見るな」
セシリーを安全な場所に下ろした後、俺とカレンは例の淡い光の場所へとやってきた。
カレンがセシリーを運んでいる際、その運ぶ姿が様になっていて、一瞬セシリーをカレンに奪われるのでは? というあらぬ発想に至ってしまったが、その考えを振り切り、平常心に戻って目の前の事に集中している。
そして、淡い光の場所に来てみるとやはりというか、魔法陣がある。
「……」
「どうした、ショーマ?」
「いや、なんでもない。ここから本当に魔物が出るのかなと思って」
俺は内心と違う言葉を口にする。
実はこの魔法陣に似たもの見た事がある。
それは魔王城にいる時、魔物を召喚する為に、魔族が使っているのを見たのだ。
少し模様が違うけどまさか本当に魔族が……?
「なんだ!?」
すると、突然魔法陣が眩く光り出した。
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