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信じる事、頼る事

本日、三話目!

 洞窟の中は薄暗く、明かりのない状態だったが、そこはさすがSランク冒険者。

 カレンが光魔法である『ライト』を使い、俺達の周りに光の球を作りだしてくれた。


 それに、セシリーも光魔法は得意だから、同じように『ライト』を使用し、前方の方まで見える。

 そのおかげもあって、俺達は前からくる魔物を倒しながら進んでいる。

 洞窟の中も思ったより道幅があって、俺達が横に三人並んで進んでも支障のない程の幅だ。


 思えば、カレンと出会ったくらいから魔物の討伐証明の回収もしていないけど仕方ない。

 というか、それどころじゃない。


 この先に、この異変を起こしている原因があるのなら、それを解決しなければならない。


「はぁ……はぁ……」


 順調には進んでいるけど、やはりセシリーの方は疲労が溜まっているようで足取りが重い。



「大丈夫か、シシリー」


「はい、大丈夫です、先輩」



 冗談ぽっく言ってセシリーは微笑むけど、その顔色は疲労の色が濃い。

 大丈夫だろうか……?


「ちょっと待て」


 すると、前を進むカレンが足を止める。


 その先を見ると、洞窟の先が少し開けていてその先に空間が広がっているように見える。

 これは……。



「いよいよ怪しいな」


「そうだな、この洞窟からあれほど次々魔物が出てくるといい、先が開けているといい、この先に何かありそうだ」



 カレンの言う通りだ。

 この先に何かあるのは間違いないだろう。



「セシリー大丈夫か?」


「はい……大丈夫です」



 セシリーは大丈夫というが、もう体力的には限界に近いだろう。

 ここは俺がしっかりとセシリーを守らないとな。


「よし、じゃあ行こう」


 俺とセシリーのやり取りを見たカレンは、俺達にそう言って前を向いて歩き出した。

 それを見た俺とセシリーも無言で頷き合い、カレンに続いて前へと進んだ。


「これは……」


 開けた場所へ出ると、そこには空間と呼べるような上にも横にも広い場所へと出た。

 その大きさを表すとしたら体育館といったところか。

 前にカイトとグラムを手に入れた遺跡でゴーレムと戦った場所に匹敵する。


 そして、少し中の様子を伺うとそこにはうようよと魔物がいて、中には魔物同士争っているのもいる。



「どうやらここが元みたいだな」


「そうだな」


「でも、なぜここに――」



 その時、奥の方で淡く光るものが見えた。


「あれが原因みたいだな」


 カレンも俺と同じものに気付いたようだ。


「あれはいったいなんでしょう?」


 少し息の整ったセシリーも話に入ってくる。

 光っているのは分かるけど、ここからじゃ何が光っているかも、詳しい場所も分からない。



「とりあえず行ってみるしかないな」


「だろうな、さすがの私でもここからじゃ良く分からない」



 そりゃそうだろ。

 逆にここから見えたらいろいろ万能で完璧すぎて怖すぎだ。



「ん? 何か言いたい事があるのか?」


「い、いや、別に」



 本当、察しまで良くて厄介な奴だ。

 こういう見た目も性格も能力も完璧な女性って、恋の方では近寄りがたくてなかなか彼氏が出来ないとか――。



「やっぱりなんか失礼な事考えてないか?」


「そ、そんな事ないって!」



 ヤバイヤバイ!

 いらない事考えちゃいかん!



「よし、ここは俺が――」


「私が道を開きます」


「セシリーッ!?」



 予想外の言葉に俺は思わず本名の方で呼んでしまう。



「私の魔法で一気に魔物を片付けます。それからショーマさんとカレンさんであの光を調べてください」


「そんな無茶な! セシリーはもう体力の限界じゃないか!!」


「だからです。このままでも私はまともに動けない。あの光だって何かの罠かもしれない。だったらお二人の力を温存しておく方が得策です」


「でも、そうしたらセシリーが危険だ!」


「はい。すべて未熟な自分が至らぬせいだという事も」


「セシリ―……」



 そうだ、セシリーは何も出来ない、知らない自分が嫌だから努力してこうやって冒険者になっているんだ。

 そして今、足手まといになっている自分がとても悔しいんだろう。


「だからショーマさんを頼りにしています」


 そう言ってセシリーは悲しげに笑う。

 足手まといと感じているセシリーは、何も出来ないと嘆いているだろう。

 でも、それは違う。



「分かった、セシリー頼む」


「……はいっ!」



 セシリーは予想外だったのか一瞬目を見開いたけど、次の瞬間には笑顔で返事をする。


 自分は足手まといだと思っているセシリー、でもセシリーはここまでも十分戦って来た。

 セシリーは頑張って努力してこの場に立っているんだ。

 なのに、それを守るべき相手としか見てない俺はダメだろう。

 それは、セシリーの今までの努力を無視する事になる。


 限度はあるけど、本人がやるって言うなら頼る事も大事だろう。


 それにセシリーのいう事は理にかなっている。

 得体の知れない事態が起きていて、得体の知れない光がある。

 ならば、ここはセシリーのいう通り、温存できる力は温存した方が得策だろう。


 ここはセシリーを信じ、そして頼る!


「じゃあセシリーの魔法で魔物を殲滅した後、俺とカレンであの光を調べる。行くぞ!」


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