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森は不穏な空気だけど、変わらない奴もいた。

本日三話目です!

「さて、もうすぐ目的地だね」


 俺達は朝早くに起きて野営地を出発した。

 宿場町で泊まらずに行けるところまで行って野営した事で、予定よりも早くに目的地に近づいている。


 このままだと昼過ぎには着きそうだ。



「ところでショーマ君」


「ん? なんだ?」


 今は目的地である森が近くなってきたという事もあって、男三人は馬車の外に出て護衛しながら進んでいる。

 どういった感じで進んでいるかというと、御者はアースで俺とカイトが馬車の周りを見張っている。


 ちなみにクロは馬車の中だ。

 セシリーもミリアもクロの事を気に入って可愛がっているので、道中では俺と過ごす時間の方が少ない。


 そんな中でアースが俺に声をかけてきた。



「昨日の夜はどうだった?」


「どうだったって何も?」


「いや、昨日イイ感じだったじゃないか」



 いつの間にか離れたところにいたカイトが近づいて声をかけてきた。



「そうだよ、夜空の下で二人っきりなんて最高のシュチエーションじゃないか」


「そうだ、あの雰囲気で何もないって信じられないな」


「……ちょうどいい機会だ! 反省しやがれ!!」


「うわっ! やめろ!! ショーマァァァアアアア!!」



 俺は近づいて来ていたカイトの頭を抱え込み、拳でグリグリとする。


 昨日の夜、セシリーに気付いてからは油断していた気持ちを締めなおした。

 すると、少し離れたところに三人の気配がした。


 こいつらに見られているのは分かったけど、別にやましい事もないし何かするつもりもなかったから、セシリーとの時間を大切にして大人の対応をしたけど、もう我慢ならん。


 隠すどころか、堂々と覗いていた宣言しやがって!



「おまえらが隠れて覗いていたのは知っているんだ!! それを知ってて大人の対応をしてやってたのに堂々と覗いてたのを白状しやがって!」


「あっ、しまっ、いや、違う! あれは気になって様子を見て――」


「それを覗きって言うんだぁぁぁあああああ!!!」



 俺は言い訳するカイトを逃がさずに、グリグリし続ける。

 それに、カイトは俺の手助けに参加するって言ってたくせに、逆に回ってアース達と一緒になって覗くとは何事だ!

 そこはアース達を止める場面だろうに!



「あはは! カイト君を抑えるなんて凄いね! ショーマ君って何者?」


「俺は俺だ!! アース、後で覚えてろよぉぉおおお!!」



 アースの言う事を勢いで誤魔化し、御者であるアースにはお仕置きできないと思った俺は、とりあえずカイトにこの怒りをぶつける事にした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「さてと、気を取り直していくか」


 俺達は昼過ぎに無事目的地に着いた。

 あの後、カイトにはこってりとお仕置きをしたから、いまだに少し頭を痛そうにしている。


 森に着いて馬から降りたアースにもお仕置きしようとしたけど、ちょうどその時にミリアとセシリーが下りてきて、何かを感じ取ったのかアースに近づく俺をミリアが物凄く据わった目で睨んできたからやめた。


 あの目はヤバイ。


 もしかすると、天使のような悪魔の二つ名の実力を発動させてしまうのではないかと思った俺は、とりあえずアースのお仕置きは今度にするとして、気を取り直して森へと向き直った。

 魔王の俺が引き下がるのはどうかと思ったけど、ミリアといい、セシリーといい、フィリスさんといい、世の中の女性は力以外の何かで圧倒するものを持っている。


 それに屈する訳にはいかないけど、今はそれをしている場合じゃない。


「ショーマさん、何かあたったのですか?」


 セシリーはカイトを見て聞いてくる。

 どうやら、道中のやりとりは馬車の音に掻き消されて、窓も締めて会った事もあり、中には聞こえてなかったようだ。


「気にする程の事じゃない。それより――」


 そう言って俺は前方に広がる森を見る。

 目の前に広がる森は木々が茂っているせいもあるかもしれないけど、薄暗くどことなく不穏な空気を感じる。

 魔王の俺が言うのもあれだけど。



「これは結構厄介かもね」


「そうだな、何か嫌な気配だ」



 俺の言葉にアースとカイトも同じことを感じたのか呟く。



「アース君、こわい……」


「大丈夫、ミリアの事は僕が守るから」


「アース君……」


「はいはい、いちゃついてないで行くぞ!」



 俺は今にも二人きりの世界に入りそうな二人の空気をぶった切った。

 そして、俺達は森へと足を踏み入れたのだった。


ランキング入りって遠い……(>_<)

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