不安な旅が始まった
お待たせしました!
「よし、じゃあ行こうか!」
「うん!」
明けて翌朝、ついにこの日がやってきてしまった。
昨日の夜はあの後、マスターの行為によって酔いつぶれるまではいかなったクレイを自宅まで送り届けた。
その際、玄関を開けると奥さんと娘が出てきてえらく感謝された。どうやらクレイは家族に飲みに行く許可を得る為に、娘を救ってくれた相手と飲みに行くと言ったようだ。
そのせいで娘に至っては『将来お嫁さんにしてくれますか?』とまで言われてしまった。
好かれるのは嬉しい事だけどなんだろう、俺は幼女属性でもあるのだろうか?
まぁいろいろあったけど、無事にクレイを送り届けて宿に帰った俺はゆっくりと休んで今日を迎えている。
ちなみに体質なのか、魔王としての能力なのかは分からないけど、二日酔いにはなっていない。
そうして、いつもと同じように起きたはずなのに、いつもより重い気分で宿屋を出て来たらさっそくこの様子だ。
目の前ではやけに張り切っているアースとミリアがいる。
二人のテンションが高ければ高いほど俺は不安だ。
そして、カイトはネリーさんにもらったという手作りの弁当を持ってニヤけている。
本当に不安だ。
「これだけ凄いメンバーで行くのは楽しみですね!」
何も知らないセシリーは「それにゼクスとかルークスもいないし羽を伸ばせます!」と上機嫌だ。
前回はゼクスが違った意味の護衛でついてきたけど、今回はミリアがいるのでそれもない。
もしかしたらこの前は行き先も分からなかったから、ゼクスを見守りにつけたけど、今回は行き先も分かっていてメンバーもこれだから、フィリスさんが気を利かせくれているって感じで、手のひらで踊らされているって可能性もあるけど。
まぁ、この前の世界樹に起きた異変でアンデッド化したドラゴンが出たというのを含め、セシリーとゼクスが報告した事で今はいろいろ忙しいようだし、それもあるのかもしれない。
やはり、ドラゴンのアンデッド化は前例がないようで、国民に不安を煽らない為に極秘で調査する事になったみたいで、その調査に軍からも人手を出したりとかでルークスもゼクスもいろいろ忙しいようだ。
それをセシリーから聞いて少し「ざまぁみろ」って思っていたりする。
ルークスにはいろいろやられているからな。
「俺は不安でしかないけどな」
俺は横目でカイトを見て言う。
あいつ、フォローどころか心ここにあらずだな。
はぁ~……あっ、うっかり本音言ってしまった。
「大丈夫ですよ。カイトさんはネリーさんの手作り弁当が嬉しかったんですよ。Sランク冒険者ですし、きっと仕事になれば大丈夫ですよ。それに幸せいっぱいできっと普段以上の力を出すよ思いますよ?」
そう言ってセシリーはニコリと笑う。
「確かに……」
あいつはタガが外れると無茶苦茶だからな。
依頼に関しては問題ないだろう。
俺の方の助けになるかどうかは別にして。
「それにしても、今回の依頼は討伐の依頼ですよね。頑張らないと」
今回の依頼はここから馬車で二日ほど離れた場所にある森で、魔物が増えているという事でその魔物を減らすというのが依頼内容だ。
この森はフレア帝国と繋がる森で、交易を行う商人達が通る事もあり、このまま放置してはいけないとセイクピア王国がギルドに依頼を出したそうだ。
まぁそう言った事もあり、今回の件はすんなりと話が進んだのかもしれない。
「そうだな。でも無茶はするなよ!」
「はい、先輩!」
そう言って微笑むセシリーを見て少し癒されたけど、振り返った先のアースとミリア、そしてカイトの様子に、また不安になりながら出発するのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「じゃあここで野営をしよう!」
「おー!」
街を出てからの道中は特に問題なく進んだ。
それに道中ではセシリーもみんなと打ち解け仲良くなっている。
ミリアとは最初はミリアさんと呼んでいたけど、今ではシシリーちゃん、ミリアちゃんと呼び合っている。
そこまでの仲になっているのに、自国の王女って気づかないのはどうかと思うけど、セシリーも同年代の友達が出来たみたいで嬉しそうにしているので、よしとしておこう。
それで話は変わってなぜ野営かというと、この道は交易にも使われている為、宿泊できるところの小さな町があったのだが、アースは「僕たちは少しでも早くみんなの安全を確保したいからいけるところまで行くよ!」と素通りし、野営をする事になったのだ。
そして今、目の前ではバカップルがイチャつきながら気合を入れている。
カイトはというと、昼にネリーさんの弁当を食べて気合を入れたのか、今は寡黙に野営の準備をしている。
これが仕事人と言われる所以だろうか?
「野営ってワクワクしますね」
セシリーが隣にやってきて言う。
この前の旅で野営をした時、「野営は初めてです」って言ってはしゃいでたな。
俺はゼクスに見張られて、なんとも言えないストレスを感じたけど。
それにしても、このあからさまなアースの作戦にセシリーが疑問に思っていないのが救いだ。
まぁセシリーは真面目だから、みんなの安全を確保したいとか思っているからだろうけど。
「そうだな、俺達も準備するか」
そう言って、俺とセシリーも野営の準備に加わった。
今日と明日はランキングに入れるかどうか試すために連日、複数話投稿します!
この為に今日まで亀更新になってすいませんでしたm(__)m




