免許皆伝
あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!
「どういう事か説明してもらおうか」
ギルドでカイトにかけた声が少しドスの利いた声だったのに顔は笑顔だったので、カイトは少し狼狽えながら「お、おう。分かった」と言った。
その言葉を聞いた俺は笑顔のまま、カイトに「じゃあ移動しようか」と言っていつも相談の時に使う店に来た。
そして、今俺とカイトは対面に座りながら向かい合っている。
店員が「また、男二人……」みたいな顔で俺達を見たが(俺にはそう見えた)そんなのは気にしてられない。
今はカイトの話を聞くのが大事だ。
「説明って何を……?」
「とぼけるな! ネリーさんと一緒にいた事だよ!!」
なんでカイトがネリーさんと一緒にギルドへ来るんだ!?
噂に聞く同伴出勤って奴か!?
それならそれでいつの間に!?
俺の剣幕にカイトは少し引きながらも「そ、それか、分かった」と言った。
「俺がネリーさんと付き合ったのは知ってるよな?」
「あぁ」
「それでしばらくして、ショーマにいろいろ相談しようとしただけど、街から消えててな。その理由はアースから聞いたんだが……まぁそれはいいか。それで、ショーマがいなかったからアースに相談したんだ。そしたらミリアにいろいろアドバイスをもらって『一度食事に行ってからどれだけ空いているんですか? 男がそれでどうするんですか? 一度で満足しちゃいけません! 定期的に会わないと! 昼休みの休憩でも夜でも二人の時間を作りなさい!』話をされてな。それ以外にもいろいろ先の事も言われたんだが……」
そう言ってカイトは遠い目をする。
あぁ、あの勢いでアドバイスをもらったのか。
俺がいなかったって事は、鈍感なアースが気づくまでカイトは一人言われ続けた訳だ。
お疲れ様。
「それで?」
「あぁ、それでってとにかく二人の時間を作ろうと思って俺はネリーに言って昼か夜にご飯を一緒に食べようって言ったんだ」
そうか。
こいつはミリアのアドバイス通りに真っ直ぐに進み、そして前に進んでいると……。
ん? 今なんて?
「カイト、おまえ今ネリーって言わなかったか?」
「ん? あぁ、ミリアが付き合っているならさん付けはおかしいって言うから」
「……手を繋いだりとかは?」
「あ、あぁ、それもミリアがしないといけないって言うからしてる。まだ、少し照れるが……」
……。
「カイト」
「ど、どうした、ショーマ?」
「免許皆伝だ」
俺はそう言ってお金を置き、席を立つ。
……カイトよ、俺はおまえに教えられる事はもうない。
後ろから「おいショーマどうした!? それに免許皆伝ってなんだ!?」って聞こえたきたけど、俺は振り返る事なく店を出た。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「なんでカイトの奴はそうやって先々前に……」
決して妬んでいる訳ではない。
むしろ、カイトの成功に嬉しい気持ちはある。
でも、自分の事に当てはめると焦るのだ。
ぶつぶつ言って歩く俺は危ない奴だろう。
でも、今の俺は抑えられない……抑えられないのだ。
「やぁショーマ君!!」
そして、そんな状況なのに今一番関わりたくない奴に出くわしてしまう俺はなんだろう。
当然の如く、アースの横の指定席にはミリアがいてペコリと頭を下げている。
天罰か?
まぁ魔王だから天罰ってのもあり得るけど。
俺は華麗なスルーを決め、その場を立ち去る……
「ちょっと待ってよ!」
事は出来ずにアースに腕を掴まれる。
「なんだよ? 俺は忙しんだ!」
「そんな事ないでしょ? 依頼も受けてないし」
「それでもやる事があるんだ!」
「でも、今の君をほっとく事はできないよ。あれだけブツブツ言ってるのを見ていたらね。危ないし君の気持ちが落ち着くまではね。何があったんだい?」
俺は不審者扱いか!
そうやって気に掛けるなら逆にほっといてくれ!
「……さては、恋の悩みだね?」
俺がめんどくさいと思っていると、アースはニヤリとして呟く。
「そうだよ、だからほっといてくれ」
この時の俺はどうかしていたのだろう。
めんどくさくて自暴自棄になっていたのかもしれない。
でも、ミリアの前でそれは認めてはいけなかった。
「恋の悩みですか!? じゃあ私の出番ですね!! 行きますよ!!」
そう言ってミリアはすごい力で俺の手を引っ張り、俺は来た道を引きづられながら戻ることになった。
次回更新ですが、年始は忙しい為、少し日にちが空くかと思います。
できるだけ早く更新したいと思いますのでよろしくお願いしますm(__)m




