マイペースでいこう
今日は少し短いです。
すいません。
「えっ? カイトさんとネリーさんが付き合ったんですか!?」
「そうみたいだ」
俺は今、朝一にセシリーと孤児院に光明草を届けに行った帰りに一緒に店で食事を摂っていて、そこで先日の起きた出来事を話している。
あの後、カイトはアースとミリアのアドバイスを熱心に聞き、その日の夜のネリーさんとの食事でアドバイス通り、まっすぐに想いを告げ、オッケーをもらったらしい。
そして、そして翌日には朝一というかまだ陽が明けるかどうかって時間に俺の元へと報告に来て、俺を一日の始まりからどん底に落としてくれた。
いや、親友の恋愛がうまくいったのは嬉しい。
でも、なにか置いて行かれた気分なのだ。
カイトはカイトで「俺で良かったらいつでも相談に乗るからな。ショーマがそうしてくれたように」と少し先輩面して言うし、アースとミリアも「ショーマ君もいつでも相談してくれていいからね?」「ショーマ君、男は押して押して押すのですよ!」と俺に言って来た。
いや、相談に乗るも何も、アドバイスって結局は要約すると『好きならいけ! 思いを伝えるんだ!』って感じだしな。
でも、まぁ俺みたいにあれこれ考えるよりそれが一番大事なのかもしれない。
俺も今ここでセシリーに想いを伝えた方が良いのか?
ってダメだダメだ、俺は俺で俺の意思で行動しないと。
「でも、ネリーさん羨ましいですね~」
「やっぱり、女の子って真っ直ぐに想いを伝えてもらえるのが嬉しいものなのか?」
って俺なにをセシリー本人に聞いてるんだ!?
「それはそうですよ。だって好きな人から真っ直ぐな思いを伝えられるなんて素敵だし憧れます」
そう言うセシリーの目は乙女だ。
やっぱり女の子ってそうなんだな。
でも俺、セシリーに向かってちゃんと面と向かってアースが言ったような歯が浮くセリフ言えるだろうか……。
「それに――」
「ん?」
そういって言葉を繋ぐセシリーの目は、さっきと違って憂いがある。
どうしたんだ?
「私、王女だから周りの人はいつも気を使ってくれるし良くしてくれます。でも、誰も私に向かって本音で話してくれない。いつも気を使ってくれたり、遠慮して思った事を言ってくれない。だから、そういうのに余計に憧れているのかもしれません」
そう言ってセシリーは視線を落とす。
そうか、王女っていう地位のせいでみんなセシリーに普通に接したりしないのか。
だから、国の中の事を、真実を教えてくれなかったから、こうやって努力して自分で外に出るようにしたんだもんな。
まぁ、当然と言えば当然だけどそう思うと、セシリーはある意味可哀そうな境遇なのかもしれない。
「あっ、でもショーマさんは、そんな私にも普通に接してくれるから嬉しいんですよ? 王女である私に普通に接してくれる人なんていなかったですから」
空気が悪くなったと思ったのか、セシリーは和ますように微笑んで言う。
セシリー……。
「そりゃそうだ、だって俺はシシリーの先輩だからな」
セシリーは俺の言葉に一瞬、キョトンとしたけど、次の瞬間には微笑んで「そうでした。今の私はシシリーでしたね。そういうあなたも今は闇夜の黒騎士さんですよ?」と言い、俺は「あっ……今のはショーマからの伝言だ」と言って二人で笑い合い食事をしながらひと時の楽しい時間を過ごした。
そして、俺はいつか必ず自分の言葉で自分の想いを真っ直ぐセシリーに伝えようと誓ったのだった。




