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やっと長い半日が終わった

「それで何が聞きたいんだ?」


 ギルドの会議室に入った俺たち三人はテーブルを挟んで、俺一人、そして向かいにアースとミリアという感じで椅子に座っている。

 ミリアはどうやら俺の言葉遣いが怖いのか萎縮している。


 まるで、圧迫面接をしている面接官になっている気分だ。

 まだ、一言しか話してないのに。


「その前にミリアが怖がるから闇夜の黒騎士さんからショーマ君に戻ってくれるかな?」


「なん……で、それを……」


 俺にとっては心臓を抉るような言葉を爽やかなイケメンスマイルで言うアース。


「あぁ、ゴメンね。実は帰ってきてオークキングとゴブリン王の話を聞いた時に、闇夜の黒騎士さんはショーマ君って人物だってギルド長から聞いていたんだけど、ショーマ君が成りきってたから、みんなの前ではそうした方がいいかなと思って。でも、このままだとミリアが可哀そうだからごめんだけど、ショーマ君になってくれる?」


 ……なんともその優しさが痛い。

 そして、サクっと『ショーマ君に戻ってくれるかな?』と言ってくる残酷さ。


 分かった、こいつは勇者の再来と言われる通り、俺の天敵だ!


「……分かった」


 俺はそう言って仮面を外し、闇夜の黒騎士の代名詞というべき、黒のロングコートをそっと脱いだ。


 勇者アースよ、第一ラウンドは俺の負けだが、次は油断しないからな!


「うん、ありがとう!」


 屈託のない笑顔を見せるアース。

 こいつは本当に手強い。


「それで何が聞きたいんだ?」


「あれ? あまり口調変わらない」


 俺がショーマに戻ったからってそれほど口調が変わる訳ではないからな。

 むしろクレイに対してはショーマの方がキツイくらいだ。


「まぁこれが俺だ。それより魔剣の何が聞きたいんだ?」


 一瞬、呆気に取られた表情をしていたけど、アースは「えっと~」と言って話し出した。


「実は僕の剣はエクスカリバーなんだ」


「……はっ?」


 アースは重大な事をあっさりと口にした。

 俺はそれに呆気に取られる。


 アースがエクスカリバーの所持者?

 いやいや、そんな道に迷う人を……いや、人に話しかけられなくて餓死しそうになった奴も剣に選ばれるくらいだしあり得る……のか?


「その顔、信じてないね? じゃあ……」


 そう言ってアースは背負っていた剣を出してカイトがしたのと同じように自分の腕へと振り下ろした。


 すると、カイトの時と同じように刀身が腕に当たって跳ね返っている。


「ほらね? 特別な剣なんだよ。その辺の話はギルド長から聞いているでしょ?」


「……」


 やべぇ!! 焦った!!


 こいつの事だから『ほらね』とか言って俺に斬りかかってくるっていう普通の展開じゃないのがあり得るところだった!!

 あぶねぇ~!!


「信じてもらえたようだね」


 アースはそう言ってニコリとする。

 どうやら俺が動揺して焦って黙っているのを勘違いしたらしい。


「それでなんで魔剣の事を聞きたいんだ?」


「うーん、だってショーマ君の持っているのもグラムっていう魔剣なんでしょ? 今まで聞いた事がない魔剣が見つかったり、オークキングとゴブリン王が同時に出現したり、そのオークキングとゴブリン王が魔剣のようなもの持ってるっておかしくない?」


 ……確かに一理あるか。

 アースに気付かされるのは癪だけど、偶然にしては偶然が重なりすぎている。


「そうだな」


 俺はそう言ってアースにあって初めて真面目に話出し、討伐の時の話をした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「今日はありがとう!」


「あぁ、じゃあな」


 俺はオークキング討伐の時の事を話したけど、結果的に何も分かった事はなかった。

 ただ意外だったのはおバカコンビだと思っていた二人がこの話をしている時はおバカっぷりを発揮する事なく、普通に話が進んだ事だ。


 二人とも国に危険が迫っているのではないかと心配して、最近起こっている出来事について調べているらしい。

 何とも最初と違う印象だ。


 それにしても言われれば最近の出来事は偶然にしては重なっている。

 なにかあるのかもしれない。


 謎だ。


 謎といえば、ミリアは俺が仮面を取って、黒のロングコートを脱いだら妙にフレンドリーになった事もか。

 うーん、やっぱりこの二人は良く分からん。


「うん、またよろしくね」


「またって次はねぇよ!」


「そんな事言わないでよ」


「そうですよ! 私たちお友達でしょ?」


 いやいや、いつ友達になったんだ?


「そうだよ、僕たちは友達だ」


 そう言ってアースは無理やり俺の手をとり握手した。


 いやいや、強引すぎだし、友達ってそういうもんじゃないだろ!?

 それにそれを見て微笑むミリアもおかしいし!


「じゃあまたね」


 そう言って手を離し、一歩的に言葉を告げ、去っていく二人の背中を見て俺は呆然と立ち尽くす。


「……帰ろ」

 

 今日はいろいろありすぎて疲れた……。


 俺は半日で今までにない疲れを感じ、宿屋への帰路へ着くのだった。


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