どうしてこうなった……?
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「どうして……どうしてこうなった……? そしてこれはどうしたらいい……?」
今の俺の左腕にはセシリーが腕を組んで歩いている。
頭の上ではクロが寝ているけど、それどころじゃない。
俺の腕から感じてはいけない弾力を感じ、俺の脳を支配しようとしている。
俺はそれを防ごうと、腕をなんとかしようとするけど、すればするほどそのホールドは強くなり、俺へのダメージが大きなる。
「ショーマさぁん! そんなに逃げようとしないでくださいよぉ~?」
今もなんとかしようとしたけど、それを察知されて逆にホールドが強くなってしまった。
酔っていてもこういうところはしっかりと意識がるとは……。
そもそもなぜセシリーが酔っているかと言うと、時は遡る。
―――――
「あっ、そうだ! ショーマさん、お祝いしましょう!」
リリとララと別れてしばらく街を歩いていると、セシリーがお酒を出している店の前でそんな事を言い出した。
確かにこの世界では俺もセシリーももうお酒を飲んでいい年頃だ。
でも、初めて飲むお酒に不安があった俺は酔うというのがどういうのか分からないし、躊躇していたけどセシリーが「大丈夫です、私もお城で飲んだりしますから。さぁ行きましょう!」と強引に店へと連れて行かれたのだ。
そこで、俺とセシリーはお酒を注文し、周りがやっているみたいに「乾杯!」と言ってエールというのを初めて飲んだ。
エールは苦味と炭酸が効いていて初めて飲んだけど、美味しいと思った。
おそらくこれは日本でいうビールだと思うけど、どうやら俺は飲める口らしい。
セシリーはというと、周りに合わせてエールを頼んだけど、口に合わないらしくて、一口でやめていつも飲んでいるという果実酒に変えて飲んでいた。
そう、ここまでは普通だったんだが……。
「ショーマさぁん、聞いてますぅ!?」
「あっ、はい!」
飲み始めて一時間も立つとセシリーは酔っぱらってしまった。
今思えば、セシリーは城では飲んだ事あると言っていたけど、そもそも城とかではそんなに酔うまで飲まないだろう。
それにセシリーは王女だし、周りの目もあるし、気を張っているのもあるだろうし、そもそもメイドたちが酔わないようにセシリーの様子を見てお酒の調節もするはずだ。
それが、この庶民の店ではセシリーも気を抜いているし、周りの目もない。
それに、王女という肩書もないし、止める人もいない。
そして、お酒って言うのは安い酒ほど悪酔いしやすいって聞いた事あるし、それを思うと城で飲んでいるのと、庶民の店で飲む酒が一緒の訳ない。
言うならば今思えば必然的にこうなる展開だったのだろう。
それに途中で気付いて止めようとしたけど、「なんで止めるんですかぁ!?」「そんなに私と飲むの……嫌ですか……?」「通信イヤリングのスイッチ切ったんですから付き合ってください!」と怒ったり、泣き落としされたり、いたいとこつかれたりで酔ったセシリーを止める事が出来ずにそのまま飲み続けた。
そして、酔っ払いセシリーが出来上がってしまったのだ。
ちなみに、俺は高スペックの身体のおかげか、セシリーに勧められるがままセシリー以上に飲んだのだが、ほろ酔い程度だと思われるくらいですんでいる。
そして、なんとか「そうだ! よそでも飲んでみよう!」と言って店を抜け出したのだが、外に出ると、「逃がしませんからねぇ~?」と言われ腕を組まれたのだ。
――――――
そして、俺は店を探すふりをして城の方へ送ろうと思い城へと向かっている。
城の中にどうやって入ろうかと思うけど、おそらく夜に抜け出したって事でセシリーの事をどっかで見ている護衛もいるかもしれないし、城に行けばなんなりと対応してくれるだろう。
とりあえず、そういう事で城に向かっている。
これで誤魔化せるかと思ったけど、今のセシリーはお酒より、俺が逃げないかと言う方に気が向いているのと、この前に無茶した事に対しての説教の方に気が向いていて城に向かっていると気付かない。
そして、街の中と違い、時間的な事もあり人通りも少なくて今は俺とセシリーしかいない。
「いや、そんな強くしなくても逃げないから」
「い~え、ダメです! 通信イヤリングも切っちゃう人ですしぃ~」
「あれは……ゴメン」
「謝ってもダメです! だいたいどれだけ心配したと思ってるんですかぁ?」
「心配してくれたんだ?」
「茶化さないでください!」
「セ、セシリー!?」
セシリーは腕を引っ張ったかと思うと、その反動を利用して胸に抱き着いて来た。
「いったいどれだけ心配してと思ってるんですかぁ? オークキング相手に……それもオークの集落に人で向かうなんて……しかも、通信イヤリングも切るしぃ。ショーマさぁんは私の為にって言ってくれましたけど、だったら私の気持ちも考えてください!」
「いや、だから気持ちを考えて二人を助けに――」
「それはそうですけど違いますぅ!」
「えっ……違うって?」
「だからぁ、私がショーマさぁんの事を心配するって事ですよ!」
「えっ!?それってどういう……?」
「そんな事言わせないでくださぁい!」
そう言ってセシリーは俺の胸に顔を埋める。
えっ……? この展開ってもしかするともしかするやつでは……?
いやいや、早まるな俺!
でも、もしそうだったらセシリーがせっかくこうやって言ってくれたのに……よし、ここは男見せて玉砕 覚悟でもいくしかない!
「セ、セシリー!!」
「すぅ~、すぅ~」
俺が意を決してセシリーの名前を呼ぶと、寝息が聞こえてきた。
どうやらセシリーは寝てしまったようだ。
「なんだ寝ちゃったか……まぁでも、酔っている時にってのはあれだしな、これはこれで良かったか」
俺はセシリーの寝顔を見る。
こんな可愛い子と、こうやって二人きりの時間を過ごせただけでも、俺にとっては幸せな時間だな。
前世では考えられなかったことだ。
「さて、明日からもSランク目指して頑張るか!」
俺はそう言ってセシリーを送っていく事にした。
「でも、どうやって城まで運ぼう……」
俺はしばらく間、その場でおんぶしていくか、お姫様抱っこしていくかで迷って動けなかった。
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