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女神が降臨しました

「っ!?」



 突如としてブレたかと思ったルークスの姿は次の瞬間には俺の目の前に現れる。

 俺はそれを足を引いて半身になって躱す。



「今のを避けるとはやるねっ!!」



 すると、ルークスは嬉しそうな表情を浮かべながら俺へと剣を振るってくる。俺はそれをなんとか当たらないように躱す。

 こいつ……っ!?



「どうしたの? 剣は使わないのかい?」


「ふっ、剣を使う相手かどうかは我が闇夜の黒騎士が決める事だ」



 この緊迫した状況でも俺の厨二モードに入った俺の口は絶好調だ。

 でも、言葉と裏腹にスピードを上げてくるルークスに通常のままの俺には余裕がなくなってくる。


 くそ……摩気を纏うか?


 俺は普段、魔気を抑えている。

 というのも、魔気はよく漫画とかであった覇気や闘気、殺気と呼ばれるようなものに近くて、人間の近くで発動させると怯えや下手すれば気を失ったりする。


 俺は史上最強と呼ばれる魔王でこの魔気が圧倒的に凄い。

 魔気を発動すれば、その魔気の量によってただでさえチートな能力がさらに一段階……いや、何段階も跳ね上がる。

 それはもう人間の域を遥かに超えるだろうし、魔気を感じた人に怯えられるだろう。

 だから、セイクピア王国に来るにあたって、俺は魔気を抑えていたのだ。


 もっとも、魔王城にいる間に自分の力を試したくて、魔族相手に「稽古をつけてやろう」とか言って模擬戦したけど、魔気を使わなくても、戦闘未経験の俺でも充分に戦えた。

 それくらい元々のポテンシャルが強い身体だ。


 そうして、訓練と称して戦いの経験も積んだし、魔気がなくても圧倒的な身体能力や魔力はある為、普通に生活する分には問題ないだろうと思っていたけど、今はやばい。

 このルークスとかいう男は平常時の俺に匹敵するくらいの力はある。



「そう、ならこれはどう?」


「っ!?」



 俺が魔気を使うかどうか迷っていると、ルークスが言葉を放ち、それと同時にルークスの姿が残像のようになって俺を取り囲む。


「いくよ!!」


 そして次の瞬間、俺へと迫るルークスの姿を見たときはもう眼前に迫っていた。

 俺はその攻撃を身をよじって辛うじて躱した。


「――っ!?」

 

 避けたかと思った俺の頬から何かが伝うのが分かる。

 くそ、完璧には避けられなかったか。 

 これ以上は……。


「まさか避けるとはね! 君凄いよ!」


 これ以上の戦いになれば魔気を使わないといけないと思っていたところで、ルークスは剣を収める。


「ルークスさんよ! 今のは危なかったんじゃないか!?」


 戦いが終わったと同時にゼクスが走ってきてルークスに声をかける。

 ゼクスはなんだか目上に対しても言葉使いがあれだな。

 騎士ではなくて軍の方だからだろうか。


「大丈夫だよ。避けられそうにない反応だったら止めてたから」


ルークスは少年のような笑顔でゼクスに言葉を返す。


「まぁルークスさんなら出来るでしょうが……」


 青年にものを言えないおっさん、ちょっとシュールだ。



「まぁね。それに闇夜の黒騎士はまだ剣を抜いていないし、まだ余裕があったんでしょ?」


「愚問だな。まだ我が剣を抜くほどの脅威を味わっていない」



 そうだ、今の俺は闇夜の黒騎士。

 少々の脅威など終わってしまえば脅威ではない。



「でも、さすがにあれを避けるとはね。ビックリだよ」


「我が闇夜の黒騎士に剣は届かない。それは闇に光が届かない理由と同じだ」


「あはは! 良く分からないけど、そこまで言われると本気で戦いたくなっちゃうな」



 ルークスはそう言ってさっきの少年のような笑顔と違い、獰猛な笑みを浮かべる。

 こいつ、さっきのよりまだ速く動けるのか?

 人間離れしすぎだろ!?


「いやいや、ルークスさんよ、それ以上やったらここが壊れちまうよ。勘弁してくれ」


 ゼクスが慌てて止めに入る。

 こいつはこいつで見かけによらず、戦闘狂って訳じゃないのな。



「はは、ゼクス、冗談だって! それくらい弁えてるよ。それにもっと強い彼と戦ってみたいからね」


「ん? なんだ?」



 何か俺に向き直って言った後半部分聞こえなかったぞ。 



「何にもないよ! それよりショーマ君、その傷治そう」


「大丈夫だ。我が闇夜の黒騎士に――」



 『施しは不要だ』と続けようとしたところで、ルークスとゼクスが片膝をついてしゃがむ。


 なんだ?

 我が闇夜の黒騎士に忠誠でも誓うのか?


「っ??」


 そう思った瞬間、ルークスの攻撃によって切れた右頬に何か温かいものを感じた。

 そして、俺は背後に人の気配を感じ振り返る。



「……」


「我が国の騎士が申し訳ございませんでした」



 振り返った先にはドレス姿の銀髪のストレートで絵に描いたような可愛い女性が頭を下げていた。


 か、かわいいっっ!!


「いや、気にするな。我は闇夜の黒騎士。人々を守り、願いを叶えるのが我の務めだ」


 普通の状態なら動揺していたかもしれない状況だが、今は厨二モード、闇夜の黒騎士だ。動揺を見せずに俺は不敬罪に捉われかねないような言葉使いで返す。


「ありがとうございます。……ルークス、ゼクス、気を付けるのですよ」


「「はっ! セシリー様!!」」


 この子はセシリーっていうのか。

 それにしても可愛いな。


 でも、ルークスやゼクスが頭を下げているという事は……。


「頼みますよ。……挨拶が遅れました。私はセイクピア王国第一王女、セシリー=セイクピアと申します。以後お見知りおきを」


 セシリーはそう言って俺に向き直り礼をする。


「我は闇夜の黒騎士ショーマ。我は施しを受けた恩を忘れぬ。よって我はセシリー=セイクピアに忠誠を誓い、汝の剣となる騎士になる事を、我が闇夜の黒騎士ショーマの名において誓おう」


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