オークの集落
「キュウキュウ!」
「クロ!!」
俺がオークを切り捨てながら進んでいると、クロが俺の元へと帰ってきた。
「リリとララを見つけたのか!?」
「キュウ!」
クロは俺の言葉を聞くと、俺の周りをくるくると回る。
「これは……」
前に戦闘狼の依頼の時にクロが襲われている人がいるって教えてくれたのと同じ……もしかしてリリとララが危険な状態なのか!?
「クロ!」
「キュウ!!」
俺がクロの名前を呼ぶとそれだけで察したのかクロは上空へと舞い上がり、飛んでいく。
それを見た俺はそれに続いて走った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ここが……」
時々現れるオークを切り捨てながらクロについていくと、オークの集落にたどり着いた。
その規模は俺が思っていたよりも大きい。
木で作った家屋も見られ、その数から百匹以上はいると思われる。
そして、その集落の中ではオークが行き交っている。
「この中にリリとララが……」
クロはこの集落の上空で留まっている。
その様子から、この先の集落にリリとララがいるのは間違いないだろう。
でも、クロが俺を呼びに来ている間にどこかに連れて行かれたのか、クロは上空を旋回しながら探している。
もちろん、俺のところからでもリリとララを見つけられない。
リリとララがこの集落にいなければ誰もいないし、遠慮なく俺の得意の闇魔法を使って、一気に殲滅できたけどそれも出来ない。
かと言って、居場所が分からないままいきなり突っ込めばもしかすると、リリとララが巻き添えをくらうかもしれない。
でも、こうやってじっとしていても……くそ、どうしたらいい?
「クロ!?」
その時、クロが急降下を始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ララ、リリがいるから大丈夫だからね」
「うん」
私とリリは、いつも私に光明草を持って来てくれる闇夜の黒騎士さんとシシリーお姉ちゃんにお礼をする為に、夜中に孤児院を抜け出した。
一度、先生に言ったら危ないからダメって言われたけど、魔物だって寝るはずだし、リリと話して夜に抜け出そうって決めた。
そして、朝までに戻って来て、闇夜の黒騎士さんが来る前に帰って来て、待ち伏せして驚かそうとしていた。
孤児院を抜け出した後、街を門番の人の隙をついて抜け出そうと思っていたけど、運がいい事に門番の人はいなかった。
そして、私とリリは街を抜け出した。
そこから私とリリは、果物がたくさん取れると聞いていた山へと向かったけど、失敗したのは山までの距離だった。
近いと思っていたけど、歩いても歩いても山は近づかなくて、気づけば朝になっていた。
それでも、ここまで来たら果物は持って帰りたい、マリア先生には怒られるだろうけど、果物を採って、毎日お手伝いする代わりに、マリア先生に頼んでぼうけんしゃぎるどってところに頼んで届けてもらおうとした。
そして、山に入ったら変な化け物が出てきて『殺される』って思ったら、私とリリは捕まってしまった。
「ブモォ」
「ブモォッ!」
そして、私とリリは化け物たちの家に運ばれて、上に少しだけ穴の開いた箱に入れられて閉じ込められていた。
それからしばらくは化け物の声が来てなかったけど、戻って来て私たちは箱に閉じ込められたままどこかに運ばれている。
隣ではリリは私を励ましてくれているけど、声がいつもと少し違う。
私は目が見えなかったから声とか匂いとかそう言った感覚が強い。
たぶんリリはこわいんだと思う。
もちろん私だってこわい。
でも、リリが頑張ってるなら私も泣いちゃだめ。
「きゃっ」
すると、突然箱ごと投げられ私とリリは箱から飛び出した。
「ブモォ」
「ブモモォォ!」
「ブモッ!」
突然の事で驚いたけど、周りに聞こえる声に顔を上げると私とリリを囲むように化け物がいる。
しかも、その中の一匹は周りの化け物に比べてだいぶ大きいのがいる。
「ブモォォォオオオオオ!」
その大きな化け物が、大きな声を上げながら両手を広げて覆いかぶさってくる。
やだ、こわい!
誰か――
「助けてっ!!」
「キュウ!!」
私が叫んだ瞬間にまた違う鳴き声が聞こえる。
この鳴き声は……。
「ブモォッ!?」
「ブモブモォッ!?」
そして、次の瞬間には暗くなって何も見えなくなった。
なに? どうなってるの?
「我、闇夜の黒騎士の加護を受ける者に手を出すとは許さん!」