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俺が行くしかない!

 いろいろなものを振り切り、街を出た俺はポケットから笛を取り出して吹く。


 これは魔道具で、金貨一枚で買ったものだけど、この笛はテイムしている魔物を認識させるとどんな距離にいても魔物に聞こえて居場所を知らせる事が出来るというものだ。

 クロと任務するにあたって万が一はぐれた時の事を考え購入した。


 俺はそれを吹き、今日は闇夜の黒騎士としての依頼だったからバレないようにと、宿屋で待っているように言ったけど、状況が変わった。

 クロにも協力して空から捜索してもらう。


「さて、俺も待っている訳には行かない」


 セシリーの話ではマリアさんが朝起きたらいなくなっていたって言っていた。

 孤児院ではマリアさんが一番遅く寝るだろうし、夜に出たって事はないだろう。


 だとしたら、おそらくは深夜から早朝。

 子供の足だし出た時間によっては、まだ間に合うかもしれない。


 こういう時に空間魔法が使えたら良かっただけど、あれは行った事のある場所か座標が必要だ。

 魔王城には人間の国の座標はあったけど、その他の地理の座標まではないし使用できない。

 ちなみに、この空間魔法は失われた魔法であり、膨大な魔力が必要で俺しか使用できない。


 使えたら助かるけど、使えないものをねだっても仕方ない。


『とにかく急ぐしかねぇぞ!』


『分かってる!』


 周りに人がいなくなったから、話しかけてきたグラムに言葉を返して俺は山へと走った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「くそ、間に合わなかったか……」


 残念ながら山へと向かう途中にリリとララは発見できなかった。

 一瞬違う山……ウルク山へ向かったのではとも思ったけど、ウルク山は現在、光明草の件で、光明草の乱獲を防ぐのと、数を増やすためにギルドの職員が入山を厳しく見張っているので、もしリリとララが入ろうとして近づいたら保護されているはずだ。


 もしそうなら、時間的に街へと返され、きっとセシリーから通信イヤリングで何かの報告があるはず。

 それもないし、さっき出た連絡は「一人で無茶しないでください!」と言う連絡だった。


 聞くと、セシリーは俺の協力も得て、なんとか抜け出したかったみたいだけど、まさかセシリーを連れて行くなんて事は出来ないしな。

 それを聞いてからスイッチを切ってるけど、もし見つかっていたら先にそう言ってるだろう。


 時間差でリリとララが返されるって可能性も低い。


「キュウ!」


 その時、上空から聞きなれた鳴き声が聞こえた。

 クロだ。


 俺が本気で走ったにも関わらずにこの短時間で追いつくとは……さすがドラゴンの子供だ。


「クロ、早かったな」


「キュウキュウ!」


 クロは俺のほっぺに顔を擦り付ける。

 やっぱりクロは可愛いな。

 でも、今はそうれどころじゃない。


「クロ、リリとララがこの山に入った。この山は今ゴブリンとオークが多くて危険だ。二人を探してくれ」


「キュウ!」



 クロは俺の言った事に返事するようにして上空へと飛び立つ。


『ショーマ、俺達も行こうぜ』


『分かってる』


 こうして俺は一匹と一剣(?)と共に山に入った。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



『ヒャッハー! これだけ魔物を切ると気持ちいいな、ショーマ!』


「おいグラム! 目的を忘れるなよ!」


『分かってるって! でも、ここまで魔物が多いとはな!』


 山に入ってしばらくすると、オークが姿を見せるようになり、奥に進むにつれその数は多くなっている。

 俺はそのオークを切り捨てながら先を進んでいる。


 ちなみに空を飛んで先に進んでいるはずのクロからもまだ何の合図もない。


 今のところゴブリンが出てきてないところを見ると、どうやら、この山の麓らへんはオークたちの縄張りのようだ。


 だから、リリとララがこの山に来たとしたら、きっとオークたちに見つかっただろう。

 俺の前世の知識が通じるならオークは人間の女性を攫って子孫を増やすとかするはず。

 ならば、まだ殺されていない可能性もある。


 それならば……。


 俺は通信イヤリングのスイッチを入れ、セシリーに連絡を入れる。



「ショーマさん!? スイッチを切るなんて!! いや、それよりも今どこなんですか!?」


「セシリー聞いてくれ! 山の麓はオークの縄張りだ! もしかしたらリリとララはオークに攫われた可能性がある! だから、俺は今からオークの集落へ向かう! だから、カイトにはゴブリン王を頼むって伝えてくれ!!」


「オークの集落に一人で!? そんなの危険です! 聞いてますショーマさん!? ちょっとショーマさ――」


 俺は要件を伝えると、セシリーの声を遮るようにスイッチを切る。

 今は時間がない。


 でも、さっきのセシリーは王女セシリーではなく、どっちかというとシシリーだったな。

 帰ったら説教させるかもしれない……いや、でも今はそんな事考えてる暇はない。


 俺は脳裏に浮かぶ光景を振り切るように、頭を左右に振ってから走り出した。


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