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ギルドに呼び出された

「さて、今日も早く依頼すませてゆっくりしようか、クロ」


「キュー!!」


『それがいいな、そして早くショーマの魔気をよこせ!』


「グラムには言ってない!! ……いや~グラムじゃなくて肉はキロで買おうな、クロ」


「キュウ?」



 俺は通りゆく人が変なものを見る目で見てくるのをごまかすように演技をする。

 

 俺が魔剣グラムを手に入れてから二週間。

 未だにまだこの脳内での会話と言う奴になれなくて、時々不意に声に出したりしてしまう。

 そういう時はクロと話しているフリをしてごまかしているけど、当然クロは何が何か分からないので今みたいに首をかしげている。


 クロ、ごめん……。


 ちなみに、カイトに「月花ってよくしゃべるのか?」って聞いた時があり、「ん? 俺は最初の時だけだが……グラムは喋るのか?」という一幕があり、俺は「いやいや! 俺のはあれ以来喋らないからカイトのはどうかな~ってオモッタダケダヨ?」と必死に誤魔化す場面があった。


 それと、グラムにフィクスについて聞いてみたけど、グラムが作られてすぐに神に挑み天罰が下った為、詳しくは分からないようだ。

 ただ、普通の人間とは違う強さであったらしい。


 フィクス……本当に謎だ。


 それはそうと、こうやってグラムを所持しているけど、クレイが国に報告したところ、一度国で管理という話も出たらしいけど、誰かの口添えでそのまま俺が持つことになったそうだ。

 本当、いろいろあった二週間だ。



『だから、ちゃんと頭の中で話せって言っているだろ?』


『うるさい! そんな簡単に超能力者になれるか!』



 急に超能力者になれと言っても無理な話だ。

 それに、魔剣グラムを手に入れてから、グラムの言うように俺の身体には何の変調もない。

ただ定期的グラムに魔気を供給しているだけだ。

 特に何も変化はない。


 俺にとってはそれは全然苦にならないし、グラムが言ってた通り、俺から受けた魔気は剣の性能として上昇している。

 だから、依頼をこなしていく上でも役に立ってくれているし、俺にとっては嬉しいくらいだ。


 でも、グラム曰く、グラムと契約し続けるには並の量の魔気では無理らしく、俺から受けている魔気は普通では考えられない量らしい。

 まぁでも俺には問題ないし、初めて史上最強の魔王としての魔気が役に立ったと思っている。

なんたって魔剣という格好いい武器が手に入ったしな。


 それにしても普通に生活したいと思った俺だけど、まさかドラゴンテイマーになって、喋る魔剣を手に入れるとは……世の中何が起きるか分からないもんだ。


『超能力者? 超能力者ってなんだ?』


『あ~もういいから! それより行くぞ!』



 俺はそう言ってグラムとの会話を切ると、ギルドへと向かう足を速める。



「ん?」



 すると前からネリーさんが走ってくる。


 なんだ? どうしたんだ?

 今日はネリーさん仕事休みなのかな?

 弱ったな~どうしよう、クレイの時間まで時間ずらすか?



「ショーマさーん!!」


「俺!?」



 驚いている間にネリーさんは俺の元にやって来た。



「ど、どうしたんですか?」


「詳しい話はギルドでします! お願いします! 一緒に来てください!!」



 そう言ってネリーさんは俺の手を引いて走り出す。


 いや、手を繋ぐなんてそんな……。


 俺はセシリーという心に誓った人がいながらも、ちょっと嬉しいと思ってしまいながらそのまま手を引かれるままにギルドへと走った。


 ちなみに、ギルドへ向かう途中にすれ違った冒険者たちからは物凄い視線を送られた。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「それで、そんな急いで俺を呼ぶってどういう事なんだ、クレイ、ルークス?」


 ネリーさんに手を引かれてギルドに着くと、ネリーさんから「会議室でギルド長とルークス様がお待ちです! そちらで詳しい話を聞いてください!」と言われ、俺はギルドへ着くなり会議室へとやってきた。


 そして、俺を待っていたのがクレイとルークスって訳だ。



「忙しいところすまない」



 そう言ってルークスは俺に頭を下げる。

 

 いつもの様子と違い、真面目な態度だ。

 仕事モードかクレイがいるから余所行きの顔なのかは知らないけど、俺にとっては何か物凄く違和感がある。



「すまないな、ショーマ殿」



 対するクレイもルークスの前だからか、いつもと違って余所行きの顔になっているし、『ショーマ殿』なんて言われたの初めてだ。

 気持ち悪くて、全身に鳥肌が立つ。



「二人ともやめてくれよ。気持ち悪いからいつもの調子でやってくれ」


「そうかい? じゃあお言葉に甘えていつもの調子でやらせてもらうよ」



 意外な事に俺の言葉で先にいつもの調子に戻ったのはルークスだった。

 その姿にクレイは驚いた様子を見せているけど、俺にとってのルークスのイメージは最初と違い、こっちの方が普通だ。


 最初は固い奴かと思ったけど、何回か接している内にこっちのほうがルークスっぽいと感じるようになった。

 そしてこいつはキャラも含めていろいろ掴めない奴だ。



「そんなすぐに仮面外すなよ」


「いや~ショーマ君相手に今さらでしょ?」


「それでもクレイはいるだろうが」



 俺はあまりにもマイペースなルークスにため息をつく。



「まぁ僕は本来こういう役目より……っとそれより今回呼び出した理由を話さないとね、ギルド長?」



 そう言ってるルークスはクレイに視線を送る。

 クレイはルークスの変わりように驚いていたのと、咄嗟に話をふられてのに少し動揺して、「そ、そうだな」と素のクレイに戻った。


 さっそく化けの皮が剥がれたな。

 ……いや、意味が違うか。


 まぁクレイも建前上、畏まってただけだろうしな、

 それにルークスはそんな事気にするタイプじゃないだろうし。



「それでなんで俺を呼びだしたんだ? それもギルド長と国の騎士団、軍のトップさんが揃って」



 俺の言葉にルークスとクレイは二人顔を見合わせ頷き、そしてクレイが俺の方へと向き直って口を開いた。


「ショーマ……いや、闇夜の黒騎士の力を貸して欲しい」







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