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聖剣と聖剣を元に生まれた剣

「遥か遠い昔、神より一本の聖なる剣を与えられた。名はエクスカリバー。エクスカリバーは当時魔物や魔族に支配された世界で人間の希望の剣だった。そして人間はその剣に選ばれた勇者アルスによって、資源豊かなユーハイム大陸を手に入れ、魔族は資源の乏しい大陸へと追いやり、魔大陸と呼ばれるようになった」


 そんな事が昔にあったのか。

 まぁ人間と魔族の関係からすれば想像できる話だな。



「でも、それと今回の俺の剣とどういう関係があるんだ?」


「それを今から話すところだ。最後まで聞け」



 いやいや、今の俺悪くないでしょ。

 前置きが長いし。



「ユーハイム大陸を手に入れ、魔族を魔大陸へと追いやった後、人間は平和に暮らし、豊かになった。そして、ある時に天才と呼ばれる者が生まれた。彼はあらゆる魔法、剣術、錬金術、そして鍛冶についても天才だった。そして、彼は聖剣と呼ばれるようになったエクスカリバーを元にして数々の剣を生み出した」


「まさか……」


「そう、その一つが俺の持つ月花だ」



 そう言ってカイトが俺の話に入ってくる。


「そうだ。彼がこの世界に残した剣は二本。一本はティーランド国が所有している月花。そして、もう一本は西にあるフレア帝国が持つラグナロク」


 まさか月花も同じ人が作ったものだったなんて……それにもう一本あるのか。

 それにしても……。



「一番大きな国であるセイクピア王国は何も持ってないのか?」


「セイクピア王国は元になった聖剣エクスカリバーを所持しておる」


「そっか。でも、なんで三ヶ国に分けてもっているんだ? セイクピア王国が全部持っていてもおかしくないと思うけど?」



 だって一番大きな国だしな。



「まぁ一番大きなセイクピア王国が三本の剣を所持しても良いかもしれないが、昔に人間の間で大きな戦争があった。その時に三ヶ国が剣を分散して持つ事にしたって事だ。どの剣も人間を切れないってのは同じだしな。それで分散して持つことで人間同士で争うのではなく、共通の敵の為に協力するってな」


 そうか。

 誰が作ったか分からないけど、作った剣も人間を切れない。

 つまり、魔族や魔物に対してのみ有効だから、三ヶ国で分けて所持して争うのは人間同士ではない、魔族だっての共通認識にしてるって事か。


 俺にとってはちょっと厄介な話だな。



「でも、それと俺がどういう関係があるんだ? それになんで月花はカイトが持っているんだ?」


「それは――」


「それはショーマが経験したように、月花が俺に話しかけてきたからだ」


「えっ!?」



 クレイの言葉を遮ってカイトが言葉を発する。

 月花も話すのか!?



「あれはSランク冒険者になった時だ。俺は天皇様に呼ばれ、城へと行った時に玉座に飾られている月花に話かけられ、月花の所有者と言われた。その事を天皇様に話すと、剣は所有者を選ぶと伝えられていたと仰り、俺は月花の所有者となった」



 まさかグラム以外にも話す剣があったとは……。

 でも、その剣って二本しか残ってないって言ってたけど……。



「でも、月花がカイトを選んだからと言って、国の争いを止める為に分けて持たせているのにいいのか? それに今の話を聞く限り俺のこの剣は……どうなってるんだ?」


「まぁ月花をカイトが持つ事に問題はない。各国とも剣が所有者を選んだ時はそうするようになっている。その理由については……Sランクになってからだな。それより、問題はおまえの剣だ。話しかけてきたと言ってたけど名前とか何か言ってなかったか?」


 クレイは鋭い目で俺を見てくる。

 名前か……月花とかが名前が分かっている以上、名前くらいは言わないとダメか。



「……グラム。確かグラムとか言ってたと思う」


「……グラムか」



 クレイはそう呟いて考えるけど、どうやらクレイの知識の中には該当しないようだ。



「とにかく、所持者を選ぶ剣というのは今までに月花とラグナロク以外に確認されていない。だから、この件については国にも相談しよう。と、言ってもまぁ剣が所有者を選んだ以上、おまえの所持にはなるだろうがな」


「そうなのか? まぁそうだと嬉しいけど。でも、このグラムを作ったのはラグナロクと月花を作った人物と一緒なのか?」


「分からない。記録にも残ってないし伝承だしな。それにラグナロクと月花を作った人物……フィクスもその後どうなったのかという伝承もないしな」


「そうか」



 グラムが言ってた事が本当だとして、月花とラグナロクを作った者が一緒だとすると、フィクスって奴は神を殺そうとして、天罰が下った事になる。

 でも、なんで……?


「まぁこの話はここまでだ。とりあえず依頼の報酬を用意するから待っていてくれ」


 そう言ってクレイは立ち上がり、部屋を出る。


 何かいろいろ気になる事が出来たけど、こうして俺とカイトのSランクの依頼の報告は終わった。


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