遺跡と言えばこうくるか!?
「思ったより中は広いな」
「そうだな」
俺とカイトは言葉を交わしながら遺跡の中を歩く。
入口の階段こそ狭かったけど、地下に降りて通路に出るとそこは幅もあり広かった。
しかも、通路は自然に出来た洞窟って感じではなく、人為的に作られた感じだ。
しかし、通路自体は暗く、先が見通せないのでカイトが生活魔法であるライトで照らしながら進んでいる。
カイトはさすがSランク冒険者という感じでライトの効果を大きく出来るらしく、俺達の周りを明るく照らし、先に進むのに支障ない感じになっている。
俺もライトは使う事は出来るけど、ここはCランク冒険者らしく先輩についていこうと思う。
「魔物の気配は今の感じないが……なんか嫌な空気だな」
カイトの言う通り、今のところ魔物の気配は感じない。
でも、それは魔物の気配を感じるよりも俺にとっては最も慣れたものを感じるからだ。
「……気を付けていこうぜ、カイト」
俺の感じたものは魔気だ。
魔物と呼ばれているものにも魔気は存在しているけど、それは体内から溢れて人に感じさせるものではない。
強い魔物になると、対峙した時に魔気を感じる事があるけど、目の前にいる訳じゃないのに魔気を感じさせるものがこの遺跡にあるなんて……何があるんだ?
「あぁ、……と言いたいところだけど、ショーマは帰った方がいい。危険だ」
「何言ってんだよ。ここまで来たからには男は引けねぇって。それに何があっても、それこそ死んだって恨まねぇよ。こんな経験二度とできないかもしれないしな。それに万が一何かあってもSランク冒険者のカイトが守ってくれるんだろ?」
俺はそう言ってカイトに親指を立ててニカッとする。
「ふっ、ショーマも冒険好きの男って事か。分かった。Sランク冒険者の名にかけてショーマを守る」
「あぁ、頼りにしてるぜ、相棒」
Sランク冒険者のカイトの実力が分からない以上、危険なところに一人で行かせる訳にはいかない。
せっかく助けた人間(空腹だけど)をむざむざ死なせるのは嫌だしな。
それにしてもカイトの奴、「相棒か……いいな」なんて呟いているけど大丈夫だろうか?
まぁ危なくなったら俺がなんとかするしかないな。
俺は一抹の不安を抱きながらカイトの後ろについて通路を進んだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺とカイトは遺跡の中を地下へと階段を探しながら進む。
この遺跡は通路が途中で分かれたりして、迷路のようになっていてところどころに部屋がある。
と言っても、部屋の中に特に何かある訳でもない。
何かの避難所だったような造りにも思える。
また、魔物が出てきたりもしないので、かえってそれが不気味だ。
まぁでも、魔物も出ないので遺跡の中の散策は順調に進んだ。
「……この先に何かありそうだな」
カイトが見つめる先には扉があり、その扉の奥から気配がする。
この先から魔気を感じるし、何かがあるのは間違いないだろう。
「……ショーマ、大丈夫か?」
「当たり前だ。逆にテンション上がってきたところだ」
「ふっ、じゃ行くぞ」
そう言ってカイトは扉に手を当てゆっくりと開ける。
「これは……」
「マジか……」
ライトが部屋の中を照らし、中の様子が見えてくると部屋の大きさは体育館くらい、そして、その中央に巨大なものが佇んでいる。
「おいおい、まさかゴーレムかよ……」
部屋の中央にはよく漫画とかに出てくるゴーレムがいた。
「っ!?」
「ショーマ!!」
その瞬間ゴーレムの目が赤く光り、俺達の方へと拳を繰り出してきた。
部屋の中は真っ暗だけど、徐々にカイトのライトが部屋の中を照らしていく。
ゴーレムの動きは見た目に反して速いものだったけど、俺は左、カイトは右へ飛ぶ事でその拳をかわした。
「やるな、ショーマ!」
「当たり前だ! 伊達にドラゴンテイマーって呼ばれてねぇよ!」
一瞬、守るって言ってたくせに俺が避けれない人間だったどうするんだと思ったけど、ゴーレムが動く瞬間にカイトが声をかけてくれたし、その時の俺の反応を見て大丈夫と思っただろうという事にした。
それよりも、このゴーレムをどうするか……。
「ショーマ!?」
「うぉぉぉおおおおお!!」
とりあえず、何となくこのゴーレムはこのまま見逃してくれる気配がしないと思った俺はゴーレムへと飛び、斬りかかる。
「いっつ!?」
しかし、俺の剣はゴーレムを傷つける事なく、パキッと折れてしまう。
しまった!!
ゴーレムって物理攻撃無効が多いんだったぁぁあああ!!
「くっ!」
俺の攻撃によって俺に照準を定めたゴーレムが俺へと向き直り、拳を振りかざす。
それを見た俺は衝撃に耐える為に、折れた剣の柄を捨て身体の前で腕をクロスしてガードする。
その時、俺の身体は自分が思っている方向と違う方へと動き、衝撃も訪れなかった。
「大丈夫か、ショーマ」
何が起こったのかと思ったら、いつの間にかゴーレムの反対側にいたカイトが回り込んで俺を横から抱え、ゴーレムの攻撃から助けてくれた。
なんだろう、このシュチエーション……女性だったら『惚れてまうやろ~!』って感じだな。
「あぁ、すまない、助かった」
でも、俺は男なので惚れる事はなく感謝の言葉を口にした。
「まったく、無茶する奴だ」
「まぁそれは俺の性格だから仕方ない。それより……」
どうする?
物理攻撃は効かない。
まぁ俺が魔気を出して纏えば問題ないけど、ここにはカイトがいるし、何か疑われるかもしれない。
魔法で攻撃するにしても、あまりに強力な魔法を使うのはまずいだろうし……。
「ここは俺に任せろ」
俺が思案していると、カイトが刀をゆっくりと鞘から出した。
それを見ながら俺は考えた結果、うまく実力を隠しながら戦う術が思い浮かばなかったことに『ヤバかった~』と心で思いながら額に冷や汗を流す。
「ん? どうしたショーマ?」
「いや、カイトの戦い見て興奮してさ! あはは!!」
そう言って俺はごまかしながら後ずさりする。
「それは……」
カイトがゆっくりと抜くと、青白く光る刀身が現れた。




