いろいろありがたいけど商人は怖い
昨日はいろいろ忙しくて更新できませんでした。
すいませんでした。
「今回は助かった、ありがとう」
「えっ? あぁ、まぁ俺も依頼を受けてたしな。困った時はお互い様だ」
セシリーにケガを治してもらったライドが、俺に礼を言ってきた。
セシリーに嫌われたと思って、心ここにあらずだったけど、俺はそれをこの男には悟られないようにしようと一瞬で切り替え、さっきのビルの時と同じように対応する。
「それにしてもあんた強いんだな。剣もさることながら魔法まで使えるなんて。どこで習ったんだ?」
「まぁそれなりにな。小さい頃から剣は特訓してたし、たまたま住んでいる村によった冒険者に魔法を教わったんだよ。そしたら使えたって訳。そこから我流でてなんとかさ。小さい時からしてた剣も続けてるってだけだ」
この世界では魔力はみんな持っているけど、それを魔法として放てるかどうかは、魔力を感じて魔法として成り立たせるセンスの問題らしい。
だから、剣と魔法の両方を使えてもおかしくはない。
ただ、魔法を使えるセンスのある人ってのは意外と少なくて、魔法が使える人は魔法を極めようとする人が多い。
魔法使いは貴重なのだ。
もちろん、魔法だけじゃなくて剣や武器を持つ人もいるけど、両方実践で使えるっていうような人はごく少数らしい。
だから、俺は昔から剣を使ってて、魔法が使えることが分かったから魔法も使っているという設定にした。
「そうか、才能があってうらやましいな」
「いや、努力の成果だって」
実際は転生チートですけど。
「そうだな、悪かった」
「いや、気にするな」
「それであの子だけど……」
ライドはそう言ってセシリーの方を向く。
ここできたか!
俺は嫌われていようとセシリーは渡さないぞ!
「……シシリーがどうした?」
俺はさっきまでより、一段声のトーンを落として聞き返す。
「えっ? な、なに怒っているんだ!?」
「いや、別に怒ってないけど? それでどうした?」
一応、まだ怒ってはいないからな。
不機嫌だけど。
「いや、あの子も若いのに凄いなと思っただけだ」
「……本当か?」
「本当だって!」
う~ん、怪しいけどこれ以上言っても仕方なしな。
「ライド良かったわね!」
「ラフィ!?」
ライドの後ろから女冒険者がやってくる。
「もう! 戦闘狼にやられた時はびっくりしたわよ!」
「いきなりで動揺して……すまない……」
「全く……次からは気を付けてよね? 心配したんだから」
「えっ……? ラフィ俺を心配してくれたのか?」
「当たり前でしょ! 仲間なんだから!! さっ、あの子に礼を言いに行くわよ! あっ、君もありがとうね!!」
そう言って、ラフィはセシリーの方へと歩いて行く。
女冒険者ってサバサバしてるんだな。
まぁ人にもよるかもしれないけど。
それにしても……。
俺の目の前には、さっきの俺の姿と同じように頭を垂れるライドの姿があった。
この様子だと、本当にセシリーの心配はしないでよさそうだな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「いや~今回は助かりましたわ!」
「いや、こっちこそギルドの依頼を受けてたんで」
俺はギルドの依頼の報告の為、戦闘狼の討伐証明である尻尾と素材を取る為に解体していた。
その解体にライドが手伝ってくれて、他の二人が周囲の見守りをしてくれていた。
なぜ、俺の手伝いをしてくれて先を急がないのかというと、商人が荷物のチェックをしているからだ。
リーダー格のビルが商人に言って許可をもらったらしい。
ちなみに、俺は討伐証明部位だけ持って帰るつもりだったけど、商人の馬車にその他の素材を積んでくれるようでこうやって解体を手伝ってくれた。
もっとも、素材の買い取りの三割は報酬として払う事になっているから、さすが商人という事だろう。
転んでもタダでは起きない。
そして、俺達は解体を終え商人も荷物のチェックを終えたので出発する事になった。
ちなみに、セシリーは解体はまだちょっと無理かもという事なので、クロと一緒に遊んでいた。
「それでも、あんさんらが来なかったら危なかったですわ! 噂で戦闘狼が出るって聞いてましたけど、まさかと思って護衛料ケチったのがいけなかったですわ! いや~危なかった!!」
そう言って商人は「ははは」と笑う。
いや、死にかけたんだから笑い事じゃないだろうに。
それに雇った冒険者の前で、護衛料ケチったっていうなよ。
みんな苦い顔してるじゃないか。
「いや~、でもまさかドラゴンテイマーなんて方に会えるとは光栄ですわ! ……どこでドラゴンを?」
「いや、たまたまですよ」
誰が商人の顔になった奴に教えるか。
「そうでっか~残念やけど、まぁ仕方ありまへんな。貴重でっしゃろさかいに。……あっ、そうそう、これお礼とお近づきのしるしにどうぞ」
そう言って商人は、イヤリングを二つ差し出してきた。
俺にイヤリング?
「あっ、別にあんさんに似合うからプレゼントって訳ちゃいまっせ? わて、そっちの趣味はありまへんし。これは通信イヤリングって魔道具でこれつけてるともう片方をつけた人と距離が離れてても通信できるんですわ! 貴重な魔道具でっせ!」
マジか!?
ケータイみたいなもんが!?
これは欲しい!!
けど……。
「……そんな貴重なものをなんで俺に?」
「だから、お礼とお近づきのしるしですわ! 命と商品を助けてくれたのと、これからドラゴンテイマーとして有名になるであろう方と親しくなる……先行投資みたいなもんですわ! ……それにあんさん、あのお嬢さんにあげたらいつでも連絡取れまっせ?」
そう言って商人はニヤリとする。
なんでそれを!?
俺の表情を読み取ったのか、「商人は人の気持ち読むのとくいでっさかいに。あと情報も」と言ってさらにニヤッとする。
ライドか誰かから話を聞いてカマでもかけられたのか?
それか聞き耳たててたか。
やられた……。
それにしてもさすが商人、あくどい。
でも、先行投資ってここまで堂々と言われると、逆にすっきりするな。
まぁここまできたらもらっとくか。
「……じゃぁ遠慮なくもらっとくよ」
「毎度あり!! わてはさすらいの旅商人ヨーテル、以後お知り見おきを、ショーマ様」
そう言ってヨーテルは頭を下げる。
いつの間に俺の名前を……荷物ばっか見てたと思ったら油断も隙も無い。
「ほな、わてらは一足先に行きますわ! あんさんは邪魔ものなしでゆっくり帰って来てくださいな! 戦闘狼の素材はギルドに届けておきまっさかいに! ちゃんと報酬の三割はもらっときますけど。あっ、これにサインを」
そう言ってヨーテルはいつ用意したのか契約書を差し出してきた。
本当、油断ならない……。
驚き半分、呆れ半分になりながらとりあえず俺はそれにサインをした。