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闇夜の黒騎士はアフターサービスも万全です

「ネリーさん、この依頼お願いします」


 あの後、俺は依頼を順調にこなし続け、ランクもCランクまで上がった。

 クレイがギルド長だった事に驚いた俺だったけど、何度聞いてもギルド長と言うので俺は受け入れ難い現実を何とか受け入れた。


 その後、報酬の依頼を受け取ったけど、なんとあの龍の鱗は金貨一枚の価値がついた。

 最初ビックリしたけど、ドラゴンという存在を考えるとそれくらいの価値はあるのかもしれない。

 ともかく、俺はそのおかげでしばらく生活に困らないお金を手に入れた。


 と、言ってもセシリーと並ぶ為にダラダラと生活する訳にはいかない。

 俺はコツコツと依頼をこなしていたのだ。


 それに、クロの分の食費もいるからな。

 クロはドラゴンだけあって肉食で食費が高くつく。

 ちゃんと俺が稼がないといけない。


 それと、現在俺は週一で光明草を仕入れて、こっそりと孤児院に差し入れしている。

 と言うのも、クレイに聞いた話だけど、目を完治させるには光明草を半年間、毎日点眼しないといけないらしい。


 この事は一般的に知られているので、きっとマリアさんは何も知らない子供達に黙って一人なんとかしようとしたのかもしれないけど、乗りかかった船だ。

 依頼の途中で闇夜の黒騎士になったからには最後まで面倒をみる。


 それが闇夜の黒騎士だ。


 だから、俺は闇夜の黒騎士として、誰もいない早朝にこっそり孤児院に『闇夜の黒騎士より』と置手紙を添えて光明草を玄関に届けている。

 何もなしに置いておいたら変に思われても嫌だし、闇夜の黒騎士って書いておけば、いざ怪しいとなって騎士団とか国に話が行ってもルークスとかゼクス、セシリーが気づいてくれるだろう。


 ちなみに、魔王に転生した最初、そして魔王城から初めて外に出た時、初めてのギルド、依頼とテンションの上がる事が多く、厨二モードになる事が多かったけど、最近は少し落ち着き、孤児院に光明草を届ける時以外は冒険者ショーマとして過ごしている。

 近頃は闇夜の黒騎士ショーマより、ドラゴンテイマーショーマの方が有名かもしれない。

 特にクロは人気でよく声をかけられたりする。


 ここのところは闇夜の黒騎士の衣装も封印して、それなりに見える冒険者の格好とロングソードを持って依頼に出ている。

 だから、最近は悪目立ちはしていない。


 それに自分で言うのもなんだが、ここのところやっと自分を取り戻して、キャラが定着しつつある気がする。


 ちなみに、あの時の受付の女性の名前はネリーさんって言うみたいで、クレイが受付じゃない時、俺はネリーさんのところへ行くようにしている。

 実はあの時、少し二人でクレイの話で盛り上がって少し仲良くなったのだ。


 クレイの奴、追い込まれたり、人がいない時は人一倍働くけど、普段はサボりクセがあるらしい。

 だから俺は急ぎじゃない時は出来る限り、ネリーさん達が昼休みの時に行っている。


 ちなみに、魔王城へは転移魔法で時々帰っていらない事をしないように目を光らせている。

 まぁ俺の代わりに先代の魔王から仕えている執事のセバスがちゃんとしてくれているから安心だ。

 セバスは俺が魔王に転生した時にいろいろ教えてくれた魔族で執事は代々魔王と命の契約を行っている為、俺に忠実なのだ。



「はい、かしこまりました。でも、冒険者になって一ヶ月でCランクとか凄いですね」


「いえいえ、たまたまですよ」


「ふふふ、たまたまで一ヶ月でCランクになれたと言ったらみなさん怒られますよ?」



 そう言ってネリーさんは微笑む。

 これがまた何とも可愛らしい。


 俺はセシリーから浮気するつもりはないけど、ネリーさんはかなり可愛いと思う。

 日本だったら絶対モデルだな。


「じゃあ、努力の賜物って事で。それじゃ依頼達成の報告はクレイのいる時間にしますんで」


「はい。ありがとうございます」


 俺は依頼を受ける時はネリーさん、依頼達成の報告はクレイにしている。というのは、依頼達成の報告の時は報告書に目を通すのと、最近では討伐系の依頼を受けているから素材の買い取りがある。

 つまり、依頼達成の報告は仕事量が多いのだ。


 だから、俺はクレイを働かせるべく、朝一で依頼を受け、昼に報告を行うようにしている。

 もっともクレイには毎度ウザがられているけど。

 まぁ仕事だしやってもらわないとな。


 俺はネリーさんと親しく話していたのを妬んでいた冒険者の視線を背中で感じながらギルドを後にした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「美味しいかクロ?」


「キュウ!」



 俺は露店で肉の串焼きを買い、クロに与えながら道を歩く。

 クロはさすがドラゴンと言うべきか、宿屋で出される食事では物足りないのか、露店とかでいい匂いがすると俺の周りを飛び、「キュウキュウ!」と催促をする。


 俺は甘えさせてはダメだと思いながらも可愛さからついつい買って与えてしまい、自分に『まぁドラゴンだから仕方ないか』と言って自分を納得させている。

 こうやって結構な頻度で露店で買うからちょいちょいおまけしてくれたりもする。


「さて、今日も光明草を置いていくか」


 今日は光明草を届ける日なので、孤児院に寄ってから依頼をこなす予定だ。

 ちなみに闇夜の黒騎士としていくが、服装は違う。


 朝からあの服は目立つからな。


「ん? あれは……?」


 ちょうどクロに串を与え終わり、クロが頭でウトウト寝始めると孤児院が見えてきた。

 でも、その孤児院の前に白いローブを着てフードを被った人が立っている。


 俺は『誰だろう?』と思いながら警戒してその人物へと近づいていく。


 すると、向こうも俺の気配に気づいたのか、お互いの顔が確認できる距離くらいで俺の方へと振り返った。


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