けじめ
「……」
「……」
カレンと俺との間に沈黙が流れる。
しまった!
ノリで言ったけど、別に待ってた訳じゃないだろうし、むしろ、俺に会いたくないと思ってただろうに変な事言ってしまった!!
いや、でもあれ以外なんて言えば……あっ、『大丈夫か?』で良かったか!?
俺とカレンの間に沈黙が流れ、動きが止まっている中、竜王は近づく魔物を焼き払ってくれている。
『おいショーマ、しっかりしろよ! 最強が聞いて呆れるぜ!』
『んな事言ったってこれは最強とか関係ないだろ!?』
「……ショーマ」
「はひっ!?」
沈黙の中、俺をからかって来たグラムに言葉を返していると、カレンが俺の名前を呟いた。
それを聞いた俺は反射的に返事したけど、びっくり動揺で少し声が裏返ってしまった。なんて情けない……。
なんて思いながらもどうしていいか分からず身体はカチカチだ。
「……助けに来てくれたのか?」
すると、カレンの方は俺と違い真剣な眼差しで俺に向かって言葉を発する。
それを見た俺は、ここはちゃんとしないといけないところだろう思うと、身体の固さが取れ、平常心に戻る事ができた。
そうだ、ここは俺がしっかりとしないといけない場面だ。
「あぁそうだ、どっかのお転婆お嬢さんが勝手に一人で出て行って、こんな事になってるから無茶してないかと思ってな」
肩の力が抜けた俺はいつものような軽口で言葉を返す。
「…………ふっ」
「なんで笑うんだ!?」
少し長めの間の後、カレンが鼻で笑った。
俺なんか変な事言ったか!?
「いや、なんでもない。お転婆お嬢さんなんて初めて言われたからな」
「だって、一人でこの数の魔物とかいくらSランクでも無茶しすぎだろ!? 俺が来なかったら死んでたぞ!?」
「そうか、心配かけたな。でも心配いらない。さっきのは私の奥義を使おうとしてただけだ」
「奥義!?」
「あぁ、見とけ」
急に奥義とか言いだしたカレンの様子をみていると、目を閉じ力を抜いた状態から一気に目を開いた。
「行くぞっ!!」
そういうと同時にカレンの姿がブレた。
「はぁぁぁあああああ!!」
すると、俺の後方から声が聞こえ、振り返ると凄まじいスピードで動きながらラグナロクを振るうカレンの姿が目に入った。
「すげぇ……」
俺はそれに思わず声を漏らす。
虚をつかれたとはいえ、カレンの動きは俺の目でも完全に捉えられなかった。それこそ本気でなかったかもしれないが、俺が初めてルークスの動きに匹敵……いや、それを上回るスピードだ。
……女ってこわい。
「じゃなくて俺もこうしちゃいられない! 行くぞグラム!」
『おう! 行こうぜショーマ!!』
次々と魔物を倒していくカレンに負けじと、俺はグラムを構え駆け出した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「終わったか」
「そうみたいだな」
俺とカレンは周りに魔物が倒れている中で言葉を交わす。
あれから俺も負けじと、二刀流でグラムを振るい魔物を切り捨てて行った。
そこに後から来たクロとドラゴンも参戦し、魔物を殲滅する事が出来た。
「……すまなかった」
すると、カレンが俺に向かって謝ってきた。
これは一人で街を出て行った事か、それとも……。
「ったく、一人で無茶するなよな! ……俺も悪かったよ」
核心には触れないけど、俺も謝罪を口にする。
「いや、ショーマは悪くない。私が勝手に――」
「いや、やっぱり俺が悪い。俺がちゃんとした態度と行動を取らなかったから……カレン、気持ちは嬉しいけどやっぱ俺はセシリーが好きだ。だから、ごめん」
俺はそう言って頭を下げる。
今、カレンがどんな顔をしているか分からないけど、俺はやっぱり正直に言わないといけない。
「……顔を上げてくれ、ショーマ」
俺はカレンの言葉に従いゆっくり顔を上げる。
そこには真面目な顔をしたカレンの表情があったが、次の瞬間、それは崩れた。
「ふっ、ようやくティルフィングの影響が抜けたようだ。これほどとは……手強かった」
カレンはさっきとは一転、明るい表情でそう言ってくる。
「カレン……?」
「心配かけたなショーマ、どうやら精神の一部でティルフィングが残っていたようで、私の心を動かしショーマに近づき何かをしようとしていたみたいだ。でも、今の言葉で完全に諦めて消えたようだ」
そう言ってカレンは俺に背を向けた。
「カレン……」
「さぁ帰るぞ、ショーマ!!」
そう言ってカレンは走り出した。
「お、おい待てよカレン!!」
俺は少し呆気に取られながらもカレンを追いかけた。
気まずいとかではなく、これ以上この話に触れないほうがカレンの為にも良いと思いながら――……。
更新大変遅くなり、申し訳ありませんでしたm(__)m
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