表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

125/133

訪れる危機、手を差し伸べる者

「えっ……?」


 セシリーはなんて言った?


「信じられないのは分かります! でも、どこから出てきたのか急に魔物の大群が……しかも、セイクピア王国だけじゃなくて、ティーランド国とフレア帝国の方にも!!」


「なにっ!?」


「我が国は幸いにもアースさんとミリアさんがいたので、二人を中心に冒険者で対応してますが、ティーランド国とフレア帝国の方はSランク冒険者は……」


 そう言ってセシリーは声のトーンを落とす。

 Sランク冒険者は今、セイクピア王国に何かの用があって集結している。

 だから、この有事の際にセイクピア王国だけ戦力が整っているのが、セシリーは申し訳ないのだろう。


 さらに、今はカイトがここにいて、カレンは行方不明。

 どうにかしたくても出来ないような状態だ。


 くそっ!

 タイミングの悪い!!

 ……あっ、そう言えば…………。


「セシリー!! ルークスは!? ルークスかアースにどっちかの国の応援に行けないのか!?」


 そう、ルークスだ。

 あいつなら、大群の魔物だろうが遅れを取る事はないはずだ。

 そして、どちらかの国に向かってもらえば、カイトと分かれて、俺も本気を出して……。


「それがルークスは昨日から、自分の事を調べたくなったと言ってしばらく暇をもらうと言って……。ルークスの事を知っているだけに父も誰も止める事はできなくて……まさかこんな事になるとは……ショーマさん達は今どこにいますか!?」


 くそっ!!

 あいつはいつも肝心な時に!!


「俺達はまだ竜の巣だ……」


「そうですか……」


「おい、ショーマ」


 俺とセシリーの会話を聞いて何かが起こったと察知したのか、カイトがさっきまでと違い、真面目な表情で聞いてくる。


「カイト……魔物の大群がセイクピア王国……だけじゃなくて、ティーランド国とフレア帝国に押し寄せているらしい」


「なっ!?」


 俺の言葉を聞いて、カイトは驚く。



「ティーランド国は……状況はどうなっている!?」


 カイトは俺の話に動揺し、俺の肩を掴んで聞いてくる。

 やはり、自分の生まれ育った国の事、ネリーさんの事……それに、Sランク冒険者として、人々の危機をほっとけないのだろう。


「落ち着けカイト!! 焦ったら正常な判断できないだろ!?」


 そう言って俺はカイトの手を止める。


「――っ!? すまない……それでどうなっている?」


 カイトは少し落ち着きを取り戻したのか、さっきまでと違い話が通じる状態になった。


「あぁ、まずセイクピアの方はアースとミリアを中心に討伐隊を組んで対応しているらしい。でも、ルークスが昨日から暇もらったとか言って他の二国には今のところ援軍や戦力を送れていないらしい」


「そうか……」


 魔物の大群……それこそ、少し多くの魔物が出たと言っても、それくらいならSランク冒険者がいなくても対応できるし騒ぎにならないだろう。


 でも、王女であるセシリーが緊急に俺に連絡してくるくらいだ。

 まして、セイクピアもアースとミリアという最大戦力を投入しているくらいだ。

 ゴブリン王とオークキングの同時発生の時みたいに異常な感じなんのだろう。

 

 それが分かっているのか、カイトは悲痛な表情を浮かべている。

 

 俺一人なら、転移魔法を使ってセイクピアに帰る事は出来る。

 でも、セイクピアには戦力が残っていて、戦力が足りないのはティーランド国とフレア帝国だ。

 

 俺の空間魔法は、行った事ある場所か座標がないと使えない。


 くそ、何か手は……手はないのか!?


『我等ガ手ヲ貸ソウ』


 その時、脳内に声が響いた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「うぉぉおおお!! すげぇ!!!!」



 俺は今、竜王の背中に乗って空を飛んでいる。

 今は昼という事もあって、上には青空、下には草原が広がっている。

 そして、その景色は物凄い速さで一気に後方へと流れていき、俺とカイトが三日かけてきた道をあっという間に戻っていく。


 セシリーから連絡をもらった俺だが、戦力が足りないフレア帝国とティーランド国へ向かう手段が思いつかずに途方に暮れていた。

 

 すると、竜王が『我等ハ友好ヲ築イタ。困ッテイルナラ協力シヨウ』と言って、この危機に協力してくれる事になった。


 それを聞いた時は少し驚いて動揺したが、そこは素直に言葉に甘えて協力してもらう事にした。

 

 それで今は俺と竜王とクロは他のドラゴンを連れてフレア帝国の方面へ、カイトは深紅のドラゴンの長の背に乗り、青と緑のドラゴンの長と共にティーランド国へと向かった。


 こっちは種族の長は竜王のみだが、竜王は他のドラゴンと比べても別格に強いらしくて、本来なら自分だけでも十分だと言っていた。


 その言葉を聞いて、意外と自分の事を強いと言う奴なんだなと思ったけど、それは口に出さずに急いで竜の巣を発った。


 ちなみに、セシリーにはドラゴンの協力を得て、フレア帝国とティーランド国、それぞれの国に俺とカイトと分かれて向かうと伝えた。

 

 それを聞いたセシリーは驚いていたけど。


「とりあえず今はやる事をやらないとな」


『あぁ! 久しぶりに俺の出番みたいで嬉しいぜ!』


『……グラム、不謹慎だぞ』


『いいじゃねぇか! 俺は仕事する男だぜ!?』


 剣にって男とか女ってあるのか?

 ……まぁグラムの口からしたら男って言われても驚きもないけど。


「ったく……ん? あれは……?」


 前方を見ると、草原や山の緑が途切れ、黒く蠢くものが広がる光景が見えてきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ