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生みの親、育ての親

「これはでっかい……」


 クロの母親も真紅のドラゴンとかも大きいと思ったけど、真ん中にいる漆黒のドラゴンはそれを上回る。

 その姿には並々ならぬ迫力がある。


「おい、ショーマ、それでここからどうするんだ?」


「いや、どうするって言われても……」


 正直、ドラゴンと話せる訳でもないし。

 クロは何かを伝えようとして俺の周りを飛んでいるけど、ごめんだが俺は言葉が分からない。

 今まではなんとなく雰囲気で伝えたい事が分かったけど、こんなでっかいドラゴンに囲まれた中で何か伝えようとするものがどんなものなのか想像がつかない。


 ただ、こうやってすぐに攻撃してこないって事はいきなり殺されるって訳ではないんだろうけど、どうやって意思疎通を図るんだろうか。

 てか、昔に友好の宝玉をもらった人ってどうやって意思疎通を図ったんだ!?


 そうしているうちに、クロは真ん中の一番大きな漆黒のドラゴンのところへ行き、何やら話している。


 その様子を見守りながら、俺も何とか意思疎通を図る方法がないかと、考えてみる。

 ジャスチャー……いやいや、変な動きして変に伝わったら、取り返しがきかないし……あっ、もしかして英語がドラゴンに通じるとか――


『ニンゲンヨ』


「「っ!?」」


 なんて思っていると、俺の脳内に低い声が響く。

 その声はグラムとは違ったので、幻聴でも聞こえたかと思ったけど、驚いているのは俺だけじゃなく、カイトもだったので、どうやらカイトにもこの声は聞こえているようだ。


 って事はこの声はドラゴンの声なのか……?


『我ガ息子ヲ連レテ来タ事、感謝スル』


「「っ!?」」


 俺とカイトはまたしても驚く。


 我が息子だって!?

 まさかクロの父親なのか!?


 俺は驚きながらも真ん中の漆黒のドラゴンを見る。確かにクロと同じで色は黒い。

 でも……


「……本当にクロの父親なのですか?」


 クロの父親だったら、なぜ今までクロを探さなかったのか?

 親だったら子供を心配するもんだろう。

 クレイだって娘さんの事で、どれだけ悩んでいたか……クロの母親だってそうだ。

 あんな姿になってもクロを心配していたのに。


 でも、こいつは父親と言いながら、今までクロを心配してこなかった。

 そんなの許せるはずがない。


 俺の言葉が何かに触れたのか、漆黒のドラゴン以外が大きな咆哮を上げたけど、そんなのは関係ない。

 クロの育ての親として、引けない。


 俺はじっと漆黒のドラゴンを見据える。


『アァ、本当ダ。ソノ子ハ我ガ竜王ノ息子。鱗ノ色ガ、ソノ証拠ダ』


「「っ!?」」


 俺とカイトはまたしても驚く。

 なに!? クロが竜王の子だって!?


 って事は、あいつは竜王って事か!?

 ……確かに、その大きさと良い、迫力と良い、言葉を話せたり、他のドラゴンとは違うみたいだけど……まさか、クロの父が竜王だなんて……。


 予想外の展開に思考が追い付かず、何も言葉が出てこない。


『驚クノモ無理ナイ。シカシ、事実ダ』


「なら……なぜ、おまえはクロとその母親を見捨てた!? おまえのせいでクロと母親は――っ!!」


 俺はここに来た理由も何もかも忘れて叫ぶ。

 クロと母親が今までどんな思いでいたか……もちろん俺にも責任はある。

 でも、父親と言っておきながら今まで探したりもしなかった事に俺は腹が立った。


 最初は父親が見つかればいいと思っていたが、ここまで他人ごとのように冷静な竜王を許せない。

 俺の言葉に再度、竜王以外のドラゴンが威嚇するように咆哮を上げる。

 その声は大地を揺るがすほどだが、俺はそんな事を気にはしない。

 巻き込んだカイトには悪いが、ここはクロの育ての親として言わなければならない。


「グォォォォオオオオオ!!!!」


 ドラゴン達の咆哮を打ち消すように一段と大きな咆哮を竜王は上げる。

 すると、他のドラゴンはピタリと威嚇をやめる。


『ソノ辺モチャント説明シヨウ。トリアエズ場所ヲ移スゾ。乗レ』


 そういうと、竜王は俺達に背を向け翼を広げる。

 その光景に他のドラゴンは驚いたような感じを見せたが、何も言わずただ俺が変な真似をしないか見ているような感じでこちらを見ている。


 一瞬、そんな事お構いなしに後ろから襲いかかってやろうかと思ったが、そんな卑怯な事は出来ないし、俺の脳裏にセシリーが魔族の事を聞いた時に言った『話してみるまで分かりません』という言葉が過ぎり、とりあえず話は聞こうと思い、俺は言われた通り竜王の背に乗った。


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