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俺の決意

「よし、行くか!!」


 あれから二日、俺のSランク昇格をかけた試験は無事に承認されたという事で、今日街を出る。

 もちろん、付き添い兼試験官はカイトという形になった。

 そのカイトとは街の門で待ち合わせしている。


 俺はグラムを持ち、クロを頭に乗せ、意気揚々と宿屋を出て門へと足を運ぶ。


 この二日はネリーさんの言葉を思い出し、今までみたいに精力的に依頼を受けたり活動した。

 こうやって今までと変わらない行動をする事が、少しでもカレンを救うなら俺はそうしたい。

 それに、俺もいつまでも女々しく塞ぎこむような男になりたくないし。


 この試験を無事にやり遂げ、Sランクに昇格しカレンに俺はカレンがした事で腐った男になってないという姿を見せ、ちゃんとしたケジメをつけてセシリーに告白するのだ。

 今まではSランクになる事、セシリーに告白する時っていうのがぼんやりだったけど、今はもうはっきりと見えている。


 そして、俺がもっと積極的にSランクを目指して早くに、ケジメをつけていたらこういう事態にはならなかった。

 どこかで俺は逃げていた部分もあったのだと思う。


 でも、俺はもう迷わない。

 何も(結果を)恐れず、ただ俺は自分で決めた道を進むだけだ。


 なぜなら俺は史上最強の魔王なんだから。



 そんな事を思いながら歩いていると、街の門が見えてきた。

 今日、この門を出たら次にこの門をくぐる時はSランクの資格を持って帰ってこないとな。


「ショーマさん!!」


 門に近づいたところで後ろから声をかけられる。


「セシリーっ!?」


 声のする方を向くとそこにはシシリーの恰好をセシリーがいた。


 セシリーとはあの魔剣の依頼で帰って来てから会って以降、城の公務でいろいろ忙しいから、しばらく街には出られないと通信イヤリングで言っていたので、しばらく会う事はないだろうと思っていたし、びっくりしてしまった。


「良かった、間にあって……」


 セシリーは急いできたのだろう、肩で息をしている。

 それに、何かの用で急いできたからか俺がシシリーではなく、セシリーと言った事も気付いてない。


 ちょっと助かった。


「どうしたんだ? そんなに急いで。忙しいんじゃないのか?」


 俺がそう言うとセシリーは呼吸を整えて口を開く。


「すいませんでした!!」


 そう言ってセシリーは勢いよく頭を下げる。


「いやいや! そうしたんだ急に!? 俺はセシリーに謝ってもらう事なんか――」


「父が無茶を言ってすいません!」


 セシリーは頭を下げたまま、言葉を発する。

 そうか、俺のSランク昇格をかけた話がセシリーの耳に入ったのか。

 って事はきっとフィリスさんの耳にも入って、あの国王は怒られている事だろう。


「いやいやセシリー、大丈夫。むしろ、これだけ早くにSランクの昇格の検討をしてもらえたんだから感謝したいくらいだ。だから、顔を上げてくれ」



 最初は死地に送り込もうとするその根性にイラッときたけど、なんだか、国王がフィリスさんに怒られているであろう姿を想像したら溜飲が下がったしな。

 それに、本当にこんな早くSランク昇格を検討してくれるのはありがたいし。


 すると、セシリーは顔を上げる。


「大丈夫! それに、もしかしたらクロの父親がいるかもしれないしな。良い機会だ、探してみるよ」


「で、でも……いくらショーマさんでも、ドラゴンがたくさんいる竜の巣は危険です」


「大丈夫だって! 闇夜の黒騎士に不可能はない!!」



 そう言って、俺は親指を立てポーズを取る。


「……もう、こんな時にふざけないでください」


 言葉とは裏腹に、セシリーは表情を崩し微笑んでいる。

 どうやら、少しセシリーの気持ちを紛らかすことが出来たようだ。


「って事で、ちゃっちゃっと友好の宝玉ってのもらって帰ってくるから安心してくれ」


 俺はそう言うと、あんまり話し込むとまた心配かけるかもしれないと思い、手をひらひらさせながら歩き出す。

 セシリーは何か言いたげにこっちを見てたけど、立ち止まったらいけない。



「セシリー」


「あっ、はい」



 と思ったものの、俺は思う事があって立ち止まって振り返った。


「俺がSランクになったら少し話したい事があるから時間とってくれ」


 そう、俺はもうここで後には引けないようにしようと思ったのだ。



「えっ、はい、それはいいですけど……」


「よろしく! じゃあ行ってくる!」



 俺は動揺を隠すように急ぎ歩き出す。

 セシリーは何か不思議そうな顔をしていたけど、それを今、追及される訳にはいかない。

 そうして、俺はその場を急いで去る。


 次に会う時は必ずこの想いを伝える……そう思いながら。


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