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どうしていいか分からなくなった

「「「っ!?」」」


 カレンの言葉に俺達の時間が止まり、沈黙が辺りを包む。

 そして、止まった時間の中で、俺は思考を動かす。


 分からない……カレンが膝枕してた理由も分からないが、今の言葉の意味も分からない……俺はこんなにも読解力のない奴だったのか?

 もはや、自分で使っている言葉も正しいか分からないくらい俺の頭の中は混乱している。



「……カレンちゃん、それってどういう……?」


「……」



 止まった時間を動かすようにアースが恐る恐る言葉を口にするが、カレンは言葉を口にして赤い顔を逸らしたまま無言だ。

 そして、また時間は止まり沈黙が俺達を包み込む。



「……これを私が口にしてはダメなのかも知れませんけど、カレンさん、もしかしてショーマ君の事を好きに……?」


「っ!?」



 すると、次はミリアが止まった時間を動かそうと言葉を口にする。

 そして、ミリアから出た言葉は俺の予想を超えるもので、俺はおもいっきり動揺する。


 カレンが俺を好きに!?

 ありえないだろ!?

 だって、カレンは俺とセシリーの事をからかって来るくらいだし!! 


「……ぅん」


「「「っ!?」」」


 俺が心の中でミリアが発した言葉を否定していると、カレンはまたも俺の予想の斜め上をいく事を言った。

 そして、その言葉に俺とアースとミリアはまたしても驚愕する。


 いやいや! あり得ないだろ!!

 俺何もしてないし、そんなきっかけなかったし!!

 それにカレンの奴『……ぅん』なんてキャラ崩壊してるじゃないか!?

 やっぱりまだティルフィングの奴が操ってて、俺達に隙を作ろうとしてるんじゃないのか!?


 そんな事を思っていると、アースとミリアは俺の方を向き、



『何をしたんだい?』


『あんた、何をしたの?』



 と、いうような視線を送ってくる。


 いやいや! 俺は何もしてない!!


 俺はその意味を込めて全力で顔を左右に振って無罪を主張する。

 すると、アースとミリアは再度カレンへと向き直った。


「カレンちゃん、まだ魔剣の影響が?」


「……いや、大丈夫だ」


「じゃあ、なんでカレンさんはショーマ君の事を?」


 アースがジャブを放ち、ミリアがストレートを放つ。

 見事なコンビネーションだ。

 って、そんな事言ってる場合じゃない!


 と、落ち着かない俺は自分でボケてツッコむという訳の分からない事をしながら、どうして良いのか分からず、カレンの様子を窺う。


 すると、口を閉じていたカレンが口を開いた。



「……私も分からないんだ」


「分からない?」



 カレンが呟いた言葉にアースが続きを促すように相槌を打つ。

 そして、俺は何も出来ないままそれを見守る。


「……あぁ。私もこんな気持ちは初めてなんだ。あの黒い靄に包まれ、意識を失ってから目を覚ました時、アースから私が魔剣に乗っ取られていたと聞いた。そして、魔剣に乗っ取っとられた私を救ってくれたのがショーマだと。それを聞いてアースとミリアが見回りに出た後、意識を失っているショーマを見ていると、愛おしくなったのだ。そして、せめてものお礼にと……分かっている! そんな事をしてはいけないっていうのも、ショーマには好きな相手がいるっていうのも!! でも、どうしようもなかったんだ! 気持ちが抑えられなかった! どうしてこんな気持ちになってのか分からない。でも思えば私は誰かに助けられたし守られるのが初めてで……」


 そう言うとカレンは再度顔を背ける。


「……」


 カレンの言葉を聞いて俺は動揺ではなく、逆に落ち着きを取り戻した。

 これはふざけていいところじゃない、真面目なところだと。


 もちろん、気持ちは落ち着いているが、考えとか気持ちが整理できている訳でもない。

 でも、一人の女性が自分の気持ちを包み隠さずに伝えてくれているのだ。

 慌てふためくというより、その真剣な気持ちが俺を落ち着かせる。


 すると、アースとミリアも同じように感じたのか問い詰めるのを止めた。



「カレンさん、分かりました。これから先は私たちがどうこういう問題ではありません」


「そうだね、あとは当人達の問題だからね」



 二人はそう言うと、俺に『難しい問題だけど答えは出さないとダメだよ』『ちゃんと自分の答えをハッキリさせなさいよ』と言った視線を送って、「さぁ、帰る準備しようか!」「うん!」と言ってその場を去って行った。


 クロもなぜか空気を呼んだのか、俺の頭から飛びアース達を追う。


 そして、残された俺はカレンに近づいた。



「カレン……」


「分かっている。でも、今はその言葉は言わないでくれ。頼む」



 カレンは憂いの表情で目を逸らしながらそう言うと振り返り、「さて、私たちも帰ろうか!」と言って歩き出した。


 俺はそれ以上何も言えずに、みんなに続いた。


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