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魔剣があるという洞窟へ

「まぁ森自体には異常はなさそうだな」


「そうんだね、カレンちゃんの言う通り魔物の数も強さも異常ないしね。ミリア、大丈夫?」


「はい、大丈夫です!」



 さすが高ランク冒険者の集まりといったところか、三人は襲ってきた蝙蝠の魔物を剣や魔法で撃退しながらそんな言葉を交わす。

 さらにアースに至ってはミリアの地雷を回避するような言葉をかけながらだ。


 あいつの天然でこういう事をするあたりは、少し凄いと思ってしまう。


 ちなみに、この蝙蝠の魔物は森に多くいて結構な数が出てきているけど、これは普通だ。

 森中がこうやって蝙蝠の魔物だらけって訳ではなくて、一定の場所をなわばりとして、そこに入ってくる獲物を集団で襲うといった魔物だから、これくらいの数がいても異常ではない。


 そして、クロも襲ってくる蝙蝠の魔物にブレスを吐きながら応戦している。

 それにしても、生まれた時と比べるとだいぶ強くなってきた気がする。

 何かブレスの威力も上がっている気がするし。

 育ての親としては嬉しい限りだ。


「それはそうと、ティルフィングがあるって洞窟はどこなんだ?」


 俺も蝙蝠の魔物を撃退しながら会話に交じる。


 最初はクロに上空から道案内を頼もうかと思ったけど、アースが「大丈夫! 任せて!」って言うし、得体の知れない剣の調査だからクロと別行動して何かあったらまずいと思ってアースに任せてはみたものの、結構歩いたけど、まだ目的の洞窟には着いていなくて不安になったからだ。


 なぜ不安に思ったかというと、アースとミリアは依頼中に道に迷ったという前科持ちだからだ。


「たぶんもうすぐ着くと思うよ」


 俺の言葉にアースが言葉を返す。


「……たぶん?」


 俺はアースの発した言葉の単語に食いつく。

 たぶんって何だ!?


「いや、今回は道から真っ直ぐ森に入って行きあたった崖の下の洞窟がその場所だってギルド長さんが言ってたし、僕は真っ直ぐに進んでいるはずだから大丈夫なはずだよ!」


 そう言って満面の笑みで爽やかスマイルを発揮するアース。


 ……なんだろう、何も言葉が思い浮かばない。

 それに、目印もなくただまっすぐに歩くのって簡単に思えて実は難しいって聞いた事があったけど……。


「ん? アース、それならもう少し右手になるぞ?」


 不安に思っているとカレンが会話に加わる。



「えっ? 本当に?」


「あぁ、少しずつではあるが、左に逸れている。歩き出す前に前歩に見えていた少し高めの気が右手に見えるからな。それにこう見えて道には強くて自信はある」



 自信満々に言うカレンと、悩んだ様子のアース。

 どちらを信じるかというと俺は言うまでもなく、ほぼすべてにおいて完璧だと思うカレンを信じる訳だが……。


「そっか、ありがとう! じゃあカレンちゃんの言う方向へ行こう!」


 アースも自分よりもカレンの言葉を信じ、すぐさま方向転換を行う。

 あいつはプライドと言うか見栄と言うかそういったものがないのか……まぁでも素直なのは良い事か。

 間違った事に強情になられるのは一番疲れるしな。



「ほらショーマ君、行くよ!」


「はいはい」



 俺はさっきまで言ってた自信は何なのか、と思いながら心の中で溜息をついてアースの後へ続いた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ここみたいだね」


 カレンの言う通り方向転換すると、程なくして目的地だと思われる洞窟に着いた。

 やはりアースは道を間違っていたようだ。

 やっぱりあいつの言う事は安易に信じてはいけないな。


 それにしても、出発する前に目印とか確認しているカレンはさすがだな。

 戦闘能力とかだけじゃなく他の能力においてもカレンは完璧に近い気がする。



「それにしても普通の洞窟みたいだな。本当にこの中に魔剣ティルフィングがあるのだろうか?」


「どうだろうね? ショーマ君、グラムの時はどうだったの? 近くに行くまで何もなかったの?」



 グラムの時か、あの時は遺跡に入ったところからグラムの魔気を感じていたけど、ここはそれを感じないな。

 って事は、やっぱり魔剣ティルフィングってのはグラムとかとは違うのだろうか?


「いや、あの時は遺跡に入ったところから嫌な気配をカイトと感じていたな。でも、この洞窟には何も感じてない。みんなもそうだろ?」


人間には魔気は詳しく知られていないようなので、それを伏せて伝える。

すると、俺の言葉に三人も無言で頷く。

 そして、カレンとアースは少し話し合うと言った。

 

 それにしても、どういう事だろう?

 喋る魔剣とか言うから、グラムみたいに魔気を発しているかと思ったけど。



『いや、もしかしたら魔気を抑えているって事もあるぜ』


『グラム?』



 突如、グラムが話しかけてきた。



『俺は封印されてた遺跡から出たかったから、魔気を発していたが、もしかするとティルフィングって奴は抑えている可能性もある』


『……そういう事か』


『あぁ。でも、もっともそのティルフィングって奴が俺みたいな奴だとしたらの話だがな』


 

 確かに。

 アース以外が持つ聖剣を元に作ったと言われる、ラグナロクや月花、そしてグラムは遥か昔にフィクスという人物が作ったって事だし、それ以降にそう言った剣は作られなかった。

というか、作れなかったんだろう、それがそう簡単に作られるとは考え難い。

でも、Bランク冒険者も声を聞いたって言うし……。



『まぁいずれにしても警戒するしかないか』


『そうだな。まぁショーマの事は任せとけ! そのティルフィングって奴がなんかしてきても俺がなんとでもしてやらぁ!!』


『はいはい、よろしく頼むよ』




そうやってグラムとの話が終わると同時に、アースとカレンの打ち合わせも終わったようでアースが「それじゃ入ろうか」と言い、俺達は洞窟へと足を踏み入れた。


次回更新はゴールデンウィーク明けになりますm(__)m

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