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あの頃の自分

作者: 坂木哉斗

熱中症の注意報が出ている昼下がり。

出先から会社への帰り道の駅で電車を待っていると肉声の案内放送が聞こえてきた。


「間もなく3番線に あのころの自分が 通過します。危ないのでお下がりください」


いつもなら自動放送だが今日は肉声だ。

そして列車案内の表示も

<<【通過】あの頃の自分>>

となっているのだ


おかしい。


暑さにやられたのだろうか。


ふぁーーーーーん


長い警笛が彼方から聞こえてきた


「ん?」


たしかこの色、昔自分が住んでいた時の急行気動車。


馬鹿な。とっくの昔に廃車になっているはずだろ。


ふぁんっ


風圧とともに目の前を遮った


「あっ」


うそだろ


昔の風景がそこに広がる

電車ではなく、風景だ。


この都会に出てくる前の実家の風景。

田んぼがあって、蛍の光る川があって・・・

その向こうに学校か。

電車ではなく光景が視点が動いている

学校の向こうにいる男の子に見覚えがあった。


僕だ。

友達とたわいのない話をしているみたいだ。

「大人になったら何になりたい」

「そうだなぁ、野球の選手か漫画家かな」


そんなこと僕は言っていたのだろうか。


「ちょっ、ちょっとまってくれ」

あの頃の自分に対して僕は叫んでいた。


しかし、そこで「あの頃の自分」は消えていったのだった。


どうやら戻れなく

また乗ることも触れることもできないのだろう。

あの頃の自分というのは。


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