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95.危険回避のためには

 

「外、外かぁ……うーん。まずはシンジ様に許可を取るべきかなぁ?」

「だよね。外は絶対安全とは言いきれないし」

「でも、アリスは行きたいって」

「ニアの言う通り……!ここは1歩踏み出すべきじゃない?」


 アリスの「外に出たい」という言葉に、バルドたちは顔を突き合わせて緊急会議を行う。

 屋敷内でなら戦闘能力の高いグランたちがいるため安全だが、屋敷を出ればその限りでは無い。

 王都とはいえ、その全てが綺麗な場所、人なわけではない。

 人攫いや素行の悪い冒険者、それこそ手を血で染めた犯罪者なんかもいるだろう。

 それだけに、今回のアリスの発言には及び腰になってしまう。


「ニア、リフレットの言いたいことはよく分かる。僕もできればアリスの意見を尊重したいと思う。でも流石にシンジ様の許可なく外に出るのはまずいと思うんだ……」

「うん、バルドくんの言う通りだよ。やっぱり外は危ないから、今日シンジ様に聞いてみて行ってもいいかどうかの許可を貰うべきだよ」


 どうにも男という生き物は理性で生きるようで、バルドとラスティは慎重論を──つまり反対だと言う。


「ううん、私は行くべきだと主張する」

「そうそう、思い立ったたが……なんとやらだよ!」

「吉日、ね……」


 逆に女は感情に生きるようなので、ニアとリフレットはアリスの発言に賛成なようだ。

 確かにアリスの気持ちを汲んでやりたいという女性陣の主張はバルドもわかる。

 だが、それでも安全じゃないならば様子をみて大人達の判断を仰ぐべきではないのか、と思うのだ。


「でもさ、もしアリスに何かあったら僕たちじゃ責任取れないだろ?」

「うっ、たしかに……」


 バルドの正論にリフレットがたじろぐ。なんだかんだと言っても、バルドたちの立場は奴隷であるし、ましてやアリスは主人の娘なのだ。

 もしアリスの身に何かあればバルドたちの命だけでは死んでも償いきれないだろう。

 それを分かっているからこそ、バルドは慎重論を提案する。


「外に連れていくのには僕も賛成したい。でも、それは明日でも構わないだろう?なにも明日からアリスと遊べなくなるわけじゃないんだ」

「でも、明日は特訓」

「あっ……つ、次!次の安息日があるだろ?」

「アリスちゃんが次まで待てるかっていう話も忘れちゃダメだよバルド」


 バルドは自分の言葉で自分の首を絞めるハメになる。

 ニアに言葉の穴を突かれ、リフレットに追い詰められたバルドは自分の劣勢を悟りながらラスティを見る。


 すると、そこには楽しそうにアリスと戯れるラスティの姿があった。


「ラスティィィィ!」


 裏切ったな、と鋭い視線を向けるもラスティは我関せずといった態度を貫いてアリスと遊んでやっている。


「ふっふっふー、反対はバルドだけだよ!」

「おとなしく、大人を説得する?」


 どこかぼんやりとした様子で詰め寄るニアの一言に、バルドは突破口を見つけたような気がした。

 そう、アリスを外に連れ出すにあたっての問題は、安全面だ。

 しかし、バルドたちが家にいる誰かを説得してついてきてもらえば、安全になるのではないだろうか。

 グランやステルはもちろん、ライアンなんかも保護者としても実力の面でも問題はないだろう。

 ライアンは一見大雑把な性格をしているように見えて、実はかなり広い視野をもって物事を見ているということをバルドは知っている。


 それなら、とバルドはたった今思いついた案をニアとリフレットに提案してみる。


「それだ、ニア!」

「なにが?」

「大人を連れていけば問題ないじゃないか!」


 ニアはすぐにバルドの話を理解したようだが、リフレットの顔には未だに疑問ばかりが張り付いている。

 そこでバルドは簡潔に説明してやり、2人と誰に来てもらうか話し合う。


「グランさんは門番の仕事が忙しいだろうし、ステルさんは……どこにいるんだろう?」

「師匠は気配消すの上手だからねぇ……」


 上手いかどうかの領域ではないような気がするも、そこには深く触れずにバルドは話を進める。


「うーん、ステルさんはどこにいるか分からないし、ライアン先生はどうかな?」

「ほえー、ライアンさんってちょっといい加減な感じの人じゃない?」

「ちょっと、意外」


 バルドがライアンはどうかと問えば、2人は驚いた顔をする。

 その反応は普段のライアンの様子を知っていれば誰しもしてしまうであろう反応だ。

 ガサツな態度に怠惰な言動。

 ただ、それは表面上のライアンに過ぎないのだ。実際には1人1人のことをしっかりと見ており、案外とマメな性格だ。


「まぁバルドがいいって言うなら信じるけど?」

「うん、バルド嘘つかない」


 2人の言葉に、思ったよりも高い自分への信頼が垣間見えて嬉しく思いながら、バルドは意見をまとめる。


「よし、それじゃあライアン先生をまずは探そう。きっと先生なら了承してくれると思う」

「うん、そだねー」

「説得、頑張る」


 意気込む2人を見てバルドも説得のための言葉を考え始める。


(……まぁ、ライアン先生ならなんだかんだで引き受けてくれそうなんだけど)


 ちなみにラスティは話に入らず、ずっとアリスと遊んでいたのだが、バルドは敢えてそのことは考えないことにしたのだった。

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